【朗読】山本周五郎「つばくろ」 朗読・あべよしみ

【朗読】山本周五郎「つばくろ」 朗読・あべよしみ



講談社文庫『繫あね—美しい女たちの物語—』より朗読させていただきました。

初出・・・『講談倶楽部』1950年(昭和25年)8月 

紀平高雄は、友人の吉良から突然聞かされた話に衝撃を受ける。妻のおいちが、不貞を働いているというのだ・・・。

【主な登場人物】
紀平高雄・・・役所勤め。弱気な性格で知られている。
吉良節太郎・・・紀平高雄の友人。
おいち・・・高雄の妻。
大助・・・高雄の長男。
紀平雄之丞・・・高雄の父。
伊世・・・高雄の母。
久尾幸助・・・鉄砲足軽。おいちの父。おいちが15歳の時に亡くなる。
森三之助・・・おいちが少女のころ出入りしていた森相右衛門家の三男。
正満文之進・・・高雄の役所の支配。
松助・・・紀平家にもっとも古くからいる老僕。
勝江・・・高雄の母の実家の遠縁。紀平家へ手伝いにくる。
宮田慎吾・・・吉良の役所の同僚。
雪乃・・・宮田慎吾の妹。

山本 周五郎
(やまもと しゅうごろう、1903年6月22日 – 1967年2月14日)は、日本の小説家。
本名:清水 三十六(しみず さとむ)。山梨県生れ。
横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。
1926年「須磨寺附近」が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。
『日本婦道記』が1943年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。
以後、「柳橋物語」「寝ぼけ署長」「栄花物語」「樅ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「五瓣の椿」「青べか物語」「虚空遍歴」「季節のない街」「さぶ」「ながい坂」など
庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説など大衆小説で知られ、特に晩年多くの傑作を書いて高く評価された。

ボイストレーナー・朗読家の あべよしみです。

こちらでは時代小説を中心に投稿してゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

♥チャンネル登録していただけたら、非常に喜びます(^。^)

●stand.fmでは「いちのすけ朗読の屋根裏」というチャンネルで、発声練習・滑舌練習に関するフリートークや短い朗読やライブ配信もしています。
よろしくお願いします→https://stand.fm/channels/60919d7526f6f56b24a637b0

●Twitter https://twitter.com/abe_yoshimi_2
●Facebook https://www.facebook.com/yoshimi.abe.96
(フェイスブックの友達申請は、チャンネルの視聴者様である旨、コメントをつけていただきますようお願いします。)
●ブログ「ただ今、ここで」 https://ameblo.jp/tsuyoshi7227/

#朗読
#山本周五郎
#文豪
#短編
#小説
#時代小説

山本集合老 作 つば 1吉永の話があまりに突然でありあまりに 思いがけなかったので紀平高尾にはそれが すぐには実感として受け取れなかっ た話したものかどうかちょっと迷ったんだ けれど とにかく他のこととは違うから ね吉永せ太郎は勤めてタパな調子で行っ たなんでも梅の先出す頃からのこと らしい7日起きぐらいに会っていたと言う んだがそんな煙りを感じたことはなかった のか ねまるで気がつかなかっ ただって7日起きぐらいに外出していたん だぜ がかけに行くということは聞いていた確か 大正寺の観音とか言っていたように思う がそれが不自然には見えなかったんだ ね吉永はこう言ってからふと頭を振り口の 中で独り言のように呟い たいかにも気 らしいそれは彼が高尾に対して漏らす則で あっ た高の弱気に対して全量さに対して感動し た場合にもまたとめるような時にもそう 短足することで彼は自分の気持ちを表現し た高尾は目を伏せたまま遠慮するように 聞い たそれで相手も見たのか ね見たよ森門のさなんだ知っているだろ森 三之助と言うと確か江戸へ行っ た行かなかったんだな江戸はげに俺がこの 目で見ているんだ からそこで吉永はちょっと口をつん だこちらの話すことが高をどんなに 痛めつけるかどんな苦しみを与えるかは 初めから分かっていた しかし今度のことは下手に至ったり妥協し たりしてはいけないどんなに残酷であって も傷口の真ん中を切開し腐った部分を綺麗 に書き出してしまわなければなら ないこの場合は無常になることが彼に 対する友情なの だこう思いながら吉長は事務的な口ぶりで 言っ たいみてののものはまだ何も知らない他に も気づいているものはない だろう今のうちに肩をつつけるんだな狭い 土地のことだからこのまま行くと必ず誰か の目につくそうならないうちに始末を つつけるんだ俺で役に立つことがあったら 何でもする よ吉長の家を出てしばらく歩くうちに高尾

は体に不快な岩を感じ た発熱でもしたようで頭がぼんやりし膝 から下がひどく重かっ た吉長がその目で見 たぼんやりした頭の中で絶えずそういう声 が聞こえ た自分でない誰か他のものがつぶやいて いるようによそよそしい調子で繰り返し 同じ声が聞こえるのであっ た吉長が自分で突き止め たどうにか始末しなければならないだが どうしたらいいの か意識はしびれたように少しも動かなかっ たまるで白地にでもなったように集中して ものを考えることができず思うことが橋 からバラバラに崩れのない断片ばかりが 休みなしに空回りをするだけだっ た家帰って妻の顔をどう見たらいいだろう か平成でいることができるだろうか彼は それを暗示 ただが思ったより心は穏やかで夕も平成の 通り大輔と一緒に取っ た妻の様子にも変わったところは見えなっ たかって明るく元気な風でさえあっ た大輔は半月ほど前から自分で食べるよう になったがまださが十分に使えないので顔 dirを召つぶだらけにし口へ入れるより こぼす方が多かっ た下手に手を出すと怒るのでうまく騙し だまし海造をしてやるのだが顔についたの を取った こぼしたのを拾ったりする妻の様子は若い 母親の満足と喜びに溢れているように思え た寝る前に話そう高尾はそう思っ たあっさり言い出せるような気持ちだった がいざその時になると言い出すことができ なかっ た役所から持ってきた仕事を机の上に広げ 筆を持ったが そのまま机に持たれてぼんやりと時を 過ごし た自分では気がつかなかったがその時 すでに彼の苦しみが始まっていたので あるそれは効きめの緩慢な毒が血管を 伝わって徐々に組織を犯すようにじりじり とごわずかずつ時間の経過につれて広がり 蝕み深く傷つけていっ た3日ばかりの間に彼は痩せて顔色が悪く なり食事の量も少なくひどい不眠の跡の ように目が濁ってき たおかげでもお悪いのではございません かおいが心配そうに尋ねた俺 か高尾は妻の方へ振り向いたそれは長から 話を聞いて5日目の朝のことで彼は ちょうど途上の支度を終わったところだっ

た振り向いて妻を見た時彼の胸のどこかに 鋭い痛みが起こっ たおいは青みを帯びた綺麗な目でこちらを 見上げてい た誤しそこそこの小柄な体つきであるが 全体の金星がよく取れているので 立位の姿は形よくすらっとして 見える決の細かい肌はいつも鮮やかに血の 色が刺していて濡れたように滑らかなうこ バ色の唇とともにまるで育ち盛りの少女の ようなあけないほど柔軟で匂やかな生め かしさを持ってい た散りほどの汚れもないこの綺麗な が少しの濁りもないこの柔らかな肌 が高尾は言いよのない激しい感情に襲われ 俺かと反問しかけたままで顔を背け たその時突き上げてきた感情は生まれて 初めて経験するものだっ た苦しいとも悲しいとも寂しいとも経でき ない分では全く区別のつかないしかし非常 に激しいものであっ た玄関へ出るとおいは大輔を抱いて送りに 出 た高の気持ちが分からなかったのだろうか 式台へ膝をついてこちらを見ながら言っ た私今日は大正寺へ産経に参りたいのです けれどよろしございましょう かいや今日は行け ない高尾は向こうを見たままで答え た今日は早く帰ってくる話があるからどこ へも出ないでいてもらい たいはいというおいの声は消えるように 弱かっ た高尾はこった片付きで妻の方は見ずに 玄関を出たその後ろへ大輔の下らず声が 追ってき た たたまおちびよよ よよ 2大正寺という妻の言葉が反射的に彼の 決心を促したよう だ城へ上がるとすぐに支配へ届けをし昼の 弁当を使わずに下上し た決心はしもの心は重く塞がれ刺すような 胸の痛みは少しも軽くならなかっ た帰る途中で何度も立ち止まり白く乾いた 誇りだった道の表を眺めながら彼はふと無 意識に頭を振ったり思いまうようにため息 をついたりし たおいは家に行っ た食事はいらないお前大輔と済ませたら 今へ来て くれ高尾は着替えをしながらこう言っ た妻の顔を見ることができなかっ た返事を聞くのも絶えがたいようであっ

た今へ入った彼は机に向かって座り開けて ある窓から外を眺め た落ち着かなければいけないと思っ たそこは東北に向いた横で 亡くなった父の植ただけカバが5六本ある 他は袖がきの居が枝を伸ばしたのや矢だけ のやなどが手入れをしないので勝手に生え 広がって いるだけ神場は寒い土地の木でこんな ところでは根づいと言われたのだが植えた 時から見ると倍以上にも 育ち今も若枝にみみとそうな双が出揃って 順調の日光をキラキラと移してい た おい おいち高尾はそっと口の中でつぶやいて そうして机に肘をついて目をつっ た彼女は貧しい鉄砲足軽の1人娘だっ た父親はと言って体操公人物だった らしい妻が長いこといやんで随分貧窮して いたところへ幸介がまた率earで倒れ た母親が長い間寝ていたのでおいは白祭の 頃から水字や洗濯をし傍近所の使いあきや こもりなどもして家計を助けてい た父の倒れたのは13歳の秋であったが その自分には糸針を持ってたみにくいもを しまたしばしばよそから頼まれて吐物や 張物などの手伝いに行っ た両親の世話をしながらのことでどんなに か苦労だろうと思われるのにそんな風は 少しも人に見せなかっ た明るい顔付きでハキハキしてでいかにも 素直であっ た背丈は小さいが気量はかなりいいし木端 が効くので誰にも可愛がられ た幸介が倒れてから間もなく周りの人々が おいに円THを持ってき始め たおいはまだ13であったが1人娘だから 形式だけでも向こを取って一応相続の届け を出すのが常識で あるそういう話の出るのは当然なのだがじ さのおいがそのことだけは固く拒ん だ私は一生二親の面倒を見て暮らし ますたえ形だけでも親子3人の生活を変え たくないという気持ち らしい父親の幸介もそれに同意と見えて かなりいい談にももはかばかしい返事をし なかっ た久の加盟などと言っても所詮は高のしれ た小足のことだし変なものを向こにして 行先おいに苦労させるのも可いそうだ から卒中でよく下の回らない幸介はそんな 風に言ってどの話をも断っ たその頃は世の中が一般に乱人機といった 具合で品farの差もひどく人形風俗も

荒れてい た貧しい多数の人たちが飢えているのに 富裕なものはその目の前で贅沢ざまをして 恥じ ない武家でも飛んだ町人から自賛金付きの 嫁や向こを入れてそれがさほど稀なことで はなくなってい た男女館の風気などもとか乱れがちで色々 と嫌な噂が多かっ た幸介が無子用しの話に乗らなかったのは こういう清そから押して来てくれる人間に 信頼が持てなかったらしいので あるおいが15歳の春に幸介が死にほんの みつほどして後を負うように母もなくなっ たその少し前からおいは縫い物や解きもを 死に紀平の家へしばしば来 た高尾は知らなかったが母の伊が非常な 気に入りますだった らしい父の高城も無論同意の上だったろう がおいが孤児になるとすぐ母の実家の青野 へ彼女を預けそこで18まで教育した上青 のお親にして高尾の嫁に迎え た木へ来てから2年ばかりはおいは悲し そうな浮かない様子であっ たこの結婚が気に入らないのかとも思え た母は色々心配したようであるが高尾は ほとんど無関心であっ た1年半ほどして 父の高城が亡くなりその翌年の夏に母も 激しいリビで死ん だその時のおいの嘆き用は異常であっ たこんなにも母を慕っていたのかと高が目 を見張るほど嘆き悲しん だ後で思うとその時おいは見守っていたの でそんなことも影響したのかもしれない そしてそれを煙のようにおいは初めて高に 心を寄せてき た性質も次第に明るくなり家事の取り回し もキビキビするようになっ た大輔を産んでからおいはさらに美しく なっていっ たそれは硬い木の実の殻が破れて新鮮な家 が現れたという感じで ある肌は脂肪がが乗っていよいよつややか にしっとりと柔らかい弾力を帯びてき た自信と落ち着きを加えた瞳は時に驚く ほど生めかしい動き方を する生命と若さの溢れるような水々しい妻 の姿に高尾は初めて女の美しさを見つけた ような気がし たそのお前がおい そのお前が俺の知らないところ で高尾は目をつったままそっとこう つぶやいて苦しさに耐えないかのように あえ

だ廊下を妻の来るのが聞こえたその足音は いつもの妻のものではなかっ た弱々しくためらいがちなつま先で歩く ようにさえ超え た高尾は妻が座るまで黙っていたそれから 目を開いて抱けかばの枝を見上げ薄く霞を かけたような空の青を眺め たお前に聞きたいことが ある彼は妻に背を向けたままで言っ た私も聞きにくいしお前も答えにくい だろうと思うが とにかく正直に返事をしてもらい たいおいははいと言っ た低くかれた声ではあるがすでに覚悟を 決めたという響きがあっ た高尾はくじけそうになる自分に鞭を 当てる気持ちで思い切って妻の方へ 向き直っ たしかしその時廊下をバタバタと大輔が 走ってき たたまかかんちばよちばが落ちかけたのよ ちばの落 よ回らない下で叫びながら走ってきて母親 の肩をつかみ興奮して赤くなった顔で父を 見てせいぜい息を切らしていっ た本当よたたまやっちゃいちばが落ちかけ たのよ 早くよ姉か かんよしよしわかっ た高尾は子供に笑いかけて頷い た父様は今御用があるから母さんと先に 行っておいで後からすぐに行く よおいは飛び立つように立ったまるでとわ れたものが解放されたように大を抱き上げ てに出ていっ た高は窓の方へ向き直り机へ片手を 投げ出しながらため息をつい た不思議なことに彼自身も救われたような 気持ちだっ たそれは不決断であり未練であるかもしれ ない単に時間を伸ばしたにすぎないので あるが彼はほっとしてもう少し待って みようと思っ た 人間は皆それぞれの過去を持っているただ 現在の事実だけで責任を問うわけにはいか ない男女関係は特に微妙なの だもう少し様子を見ていようこう考えたの であっ たおいはまもなく戻ってきた大輔を抱いた まま廊下からおずおずと言った 脇玄関の中へつばが巣をかけましたの払わ なければいけませんでしょう かそのままでいい だろう高尾はこう言いながら振り返って

子供を見 たそうか落ちというのは雄のことだったの か大3の言ことは分からない ねあの千葉目抱いたんのだね たたまうん大三のだそしてこれからは ずっと毎年やってくる よ大たんの高田だねそうだ大3のつばめ 高田 だ夫の軽い口ぶりを聞いておいは声をあげ て笑い出し大輔に激しくほりをしながら そしてむせるように笑いながら去っていっ た 3もちろんそれでことが解決したわけでは ない彼の胸にできた傷は絶えず痛み時を 切って鋭い苦痛に襲わ れる夜の眠りは浅し無意識にため息をつい たりうめき声をあげたりし たふとすると凶暴に妻を責める空想に ふけっていることもあり何もかも投げ出し て山へでも逃げたいと思うこともあっ たこれらは生まれて初めての経験であって その苦痛の激しさと深さは例えようのない ものであっ ただがこの苦しさには慣れていけるだろう 彼はそう思っ た人間は大抵悪い条件にも能できるもの だ ことでは彼は自信が ある自分が苦しむだけで住むならそれで誰 も傷つかずに住むなら必ず耐えいて受ける と思っ た残る問題はおの気持ち だ相手は森三之助だと いう彼らがどうして知り合いどこまで 深入りしているの か相手はとにかく おいはどう思っているのかそれだけはどう してもはっきりさせなければならない だろうだがそうだろう か2人に会う機会を与えないでこのままの 状態で時間が解決してくれるのを待っても 良くはない かつばめが脇玄関に巣をかけた日から高尾 はこのように思いまい苦しい悩ましい時を 置く だがそれからちょうど4日目に突然 思いがけない出来事が起こっ たその日は下場の後で役所の支配に招かれ ていた正光文野心というその支配は四十さ になるが結婚して14年目に初めて男の子 を設け たまるで大正首を拾ったような気持ちで ねは相て構わずそう言って喜んだその出生 祝に招かれたのであるが老hebも3人 ほど来て主演は思いの他長くなっ

た高尾は上役の人たちの後から辞去したの で正家の門を出たのは4つに近かった正光 の家は三条丸にあるそこから下北丸の自宅 まで帰るには道とバートを抜けるのと2つ あるマトバの脇を抜けるのは裏道だがその 方が 早い下僕は先に帰らせたので高尾は自分で ちを持ってその裏道を木につい たま後は2万ツばかりの広さで今では石や 材木の置き場に使われて いる周囲には古いの木や歌や奈良などが柵 のようにミを接し枝を差しかわしその 向こうに荒れた草原が広がってい たそこは武屋敷の西の外角にあたる道幅も 6件ほどあってぐるっとマトバを反 ROUNDすることができ た月のさえた晩であった片側の子の枝が道 の中まで鮮やかに影を落としてい たあまり月が明るいので高尾はちを消そう と思って立ち止まったその時後ろに尋常で ないものの気を感じ反射的に振り返るなり あっと言って持っていたちちを投げながら 彼は横へ飛んだ後ろから裸でつけてきた らしい覆面をした男の体と頭上へ 刀の先行とが振り返る高の目いっぱいに かぶさったので ある何をする待て横飛びに道の一方へよけ 自分の顔を月の方へ向けて彼は叫んだ 人違いするな紀平高尾 だ男は小の影にいたその2件ばり左で 放り出されたちが燃えて いる相手は誰とも討はつかないが覆面して いるのと裸になった旅の白さが激しい殺を 漂白するように見え た人違いではないのだ ななおい誰 だ高尾は危険を感じて刀を抜いたその時 相手はつのように切り込んでき た少しも声を上げない息を詰めてほとんど 捨て身の動作でシニに切り込み切り込み そして切り込んだあそうか高尾は小の中へ 飛び込みながら思わず心にそう叫んだそう だその人間の他に自分を狙うものはない彼 だこう思い当たると高尾は突然激しい怒り に襲われ たわかった森さんの助だな彼がそう叫ぶと 相手の体が戦慄するように見えた高尾は 自分の声に自分で投資をそられさっと 明るい路上へ飛び出し た 卑怯者そんなにおいが欲しいならやって みろそうむざむざと切られはしない ぞ相手はうめき声をあげた絶対絶命と思っ たらしいやはり声は出さなかったがまるで 上したように突っ込んでき

た切ってやろう高尾はそう思っただが次の せなに相手が激しくのめって伝灯し たどこか骨を打つような音が聞こえ刀が手 から飛んだすぐ羽を切る風だったがどうし たのかそのままガクっと地面にふし苦し そうに足を縮めてあえ だその惨めな姿を見た時高尾の怒りは水を 浴びたように冷め た逃げろ今なら逃げられる ぞ高尾は刀を持ったまま走り出し た 4紀平高尾の弱気は知らないものはなかっ た吉永雪太郎とはごく幼い頃から誰よりも 親しく付き合い互いに深く信頼し合ってい たがその吉永でさえ彼の弱気にはしばしば 勘を立て た近頃では諦めた様子でそんなことがあっ ても相変わらず喜平らしいなこう言って 苦笑する程度だが以前はよく起って意見を したものであっ たまと後から家へ帰った時彼ははもう すっかり落ち着いていたむしろ異常な興奮 の後のしらしらと悲しいような気持ちで あっ たけれども着替えをした時脱いだものを 畳んでいたおいがあと低く叫ぶのを聞き 何気なく振り返っておいの手にある袴を見 たせに再び怒りが込み上げてきた袴の腰下 が横に一尺ばかり切れていたので ある高尾はやや乱暴に着物も取って広げて みた着物もその部分が切れてい たなんというやつ だ高尾は激しい怒りのために息が詰まり そうだっ たおいも震えていたおよそ事情を察したの だろう広げた袴の上へ手をついて神戸を 垂れたまま震えていた 俺は闇討ちをかけられた誰が闇討ちを 仕掛けたかお前には分かっているはずだ おい彼はこう言ってそこへ座っ たお前は今夜のことも知っていたのでは ない かおいはうれたまま頭を振っ た正直に言え正光から帰る途中にやると お前は森から聞いていたのではないの か高尾の声は激しかっ たおいはその声に打ち出せられるかのよう にううっと声を上げて前へのめっ た前のめりに倒れると片方の腕がぐらっと 力なく投げ出されてそのまま動かなくなっ たおいち おいち彼はすり寄って呼んだ妻の顔は 血の気を失ってこり固く歯を食いしってい た悶絶したのであっ た高尾は茶碗に水を組んできて妻を抱き

起こして食いしった歯の間から口の中へ 注ぎ入れてやっ た息を吹き返したおいはようやく身を 起こしたものの正しく座ることができない と見 両手を畳みについてそれでも不安定に半身 をグラグラさせてい た今夜は聞かなければなら ないどうして彼と知り合ったのだ2人は どんな関係になっているんだ正直に言って くれおいは荒く息をついていただが悶絶 するほどの苦しみを経て 覚悟は決まったのだろう低くかれたうつろ な声で途切れ途切れに言い始め たあの方に松林の雨を差し上げましたそれ から米屋のおまじ も何を言い出すのかと思ったがそれがおい の告白の最初の言葉であっ たあの方はご3なんでその上他のご兄弟と はお母様が違うの ですあの方は皆さんとは別に育て られ下男たちと同じ長屋に1人で寝起きし ていらっしゃいまし たあの方はいつも1人で寂しそうに悲し そうに窓から外を眺めておいででし た 森さの助がソエ門の小福の子だということ はおいは森家の家から聞い たその頃13になっていたおいは前に記し たような事情で森家もしばしば頼まれもで 行くうち三之助の不幸な身の上を知ったの で あるおは彼が哀れでたまらなかっ た彼は小遣いなどはもらえないで自分に 当てれたその長屋の人まで何かの映しもを していたりぼんやりと窓から外を眺めたり してい たあの方がどんなに寂しく悲しい気持ちで いらっしゃるか私にはよくわかりまし た私も貧しく苦しい辛い暮らしをしてい ました からあの方がどんなに不幸でいらっしゃる か私には自分のことのように分かりました の不幸を経験したものでなければ不幸の 本当の味は分からないおいは彼の上に自分 の哀れさを見 た慰めてやらずにはいられなくなっ たそしてある日おいは乏しい銭にで松屋の 雨を買って彼にやっ たあの方は初めての時はそんなものはいら ないと言って怒ったように脇へ向いて しまいまし たあの方はからかわれたと思ったそうです のあの方が19私が13の時でございまし た3度まで彼は受け取らなかった3度目に

はおいは泣いて帰った そして4度目に初めて三之助はおいの 贈り物を取っ たこれではアコだねでももらうよ ありがとう彼はそう言って泣くような 笑い顔をしたそしてこっちの気持ちが 分かったのだろうそれからはいつもおいの 持っていくものを喜んで受け取っ たこちらの恐が境遇なので無論そいつもと いうわけにはいかなかっただがおいは身を 詰めるようにして小さい知恵を絞って できるだけ彼を慰めることに務めた浄化で 名高い米屋のまじなどもいく度か持って いっって彼を喜ばせ たうまかったよ話には聞いていたが食べる のは初めてだやっぱり評判だけのことは あるね ありがとう初めてそのまじを食べた時の 三之助の嬉しそうな顔はおいには長く 忘れることができなかっ た高尾の母の取りなしで青の絵引き取られ てからおいはもう三之助を尋ねることは できなかっ た新しい生活を身につつけることで いっぱいだったし時の立つうちにに自然と 忘れていったそうしておいは開けの嫁に なったので ある今年の1月の 下旬おいは大輔の虫封じに大正寺へ産経を したその帰りに三之助に呼び止められ彼に 強いられるままに足の伊亭という亭に 上がっ た三之助はく 青白い顔になりしりに咳をしていた彼は 初めから興奮して落ち着かない様子だった が座って間もなく思い詰めたような表情で 意外なことを言い出し た私は今では逃亡者なん です彼はまず高口を切っ た前の年のくれに彼は向この話が決まった 先方は江戸屋敷のもので5国3人ぶち くらいの価値だというそれもいいが話の まとめ方が乱暴で投げやりで下僕たちまで が厄介払いだなどと陰口を聞いてい たそして正月になるとすぐ若干の金遅れ ほとんど木のみ木のままで江戸屋敷のこれ これれというものを尋ねていくようにと 命令するようにたのであっ た三之助は江戸へは行かなかった行くと 見せて上下に潜んでい た27歳まで大しぶ生活をしてきた彼は その時初めて怒ったのであるその怒りが そのまま大一への死に変わっ た彼はおいにあって自分の不幸を訴え たかったおいなら分かってくれるだろう

そしてあの頃のように温かく慰めて今後の 相談相手にもなってくれる だろうこう思って密かに機械を待ち ようやくその日に巡り合えたと いう彼の話をおいは泣きながら聞いた そしてやはり江戸へ行くようにと進めたの で あるこのままではけないもう1度会って ください三之助はそうせがんだおいは拒む ことができなかっ た日を決めてまた会いそしてまた次の日を 約束させられ た私に愛情を見せてくれたのはあなた1人 だ私に持ってきてくれたあの歌詞がどう いう銭で買われたものか私はよく知ってい た私がどんなに嬉しかったかあなたに 分かるだろう か持ってきてくれる歌詞よりもそうして くれるあなたの気持ちが私にとってどんな に嬉しかった かこの広い世の中に私には父も母もない 兄弟も友達もない私にはあなただけだ あなたは私のたった1人の人 だ彼の言葉は会う度に激しくなるばかり だっ たもうあなたなしには生きてはいけない 生きて行きたくもないどうか私のところへ 来て ください紀平さんは身分も良し裕福で あんな可愛い子供まである紀平さんにとっ てはあなたが全部ではないしかし私には あなたが全部 だあなたに別れるくらいなら私は死ぬこと を 選ぶ私のとへ来て くださいあなたにはこの気持ちが分かる はずだどうか私をこれ以上不幸にしないで くださいおいには彼を突き放すことができ なかった 現在の道たりた生活が彼に対して罪である かのように思え たあの方がどんなにお可哀そうか私には よくわかりますの私も小さい時から苦労し てまいりまし た世の中の冷たさ人々の無常 さ苦しい辛い日々言いよのない貧しさおい はそういう中で育ちましたあの方を慰めて あげあの方の支えになってあげられるもの は私の他にはございません他には1人もい ないのでござい ますおいはこう言って多元をキリキリと 噛んで声を殺して泣きいっ た高尾は目をつっていた怒りは消えたが 怒りよりも絶えがたい悲しさ絶望と言って も良いほどの悲しさが彼の全身を浸し呼吸

を圧迫し た分かっ たそれでよくわかっ た高尾はやがて口を切っ た言いたいことが喉へ突き上げてくるお様 声をあげて叫びたいわめき怒なって胸に あるものを残らず吐き出したかっ たしかし彼にはできなかった懸命に自分を 抑えできるだけ平成な声で静かに続け た私にも言いたいことはあるだがそれは 言わなくともお前には分かっている だろうだからここでは1番大事なことだけ を話 彼は眉をしかめちょっとどってだがやはり 穏やかに言葉を継い だ私が苦しんだようにお前もそして森も 苦しん だろう私だけが苦しんだとは思わない3人 ともお互いに苦しんできた おいこの苦しみを法を 考えよう今1番大事なのはそれだと 思うこの苦しみを無駄にしてはいけない これをどう切り抜けるかお互いが傷つかぬ ようにできることならお互いが幸せになる ようにそれをよく考えてみようお前そう 思わないか おいあなたの思うようになすってください まし越しながらきれぎれにおいが言っ た私にはもう何を考える力もございません あなたがこうしろとおっしゃる通りに いたしますどうぞどのようにでも思いの ままになすってください まし 5それから数日しておいは猿ヶの当場へ 立っていっ た衰弱した体の療養という届けを出し友に は松助という老木を1人つけてあっ た友をさせる以上は秘密にはできないので 松助には事情を荒ま打ち明けたするとはめ はどうしても友は嫌だと言って だ彼は父の代からもう34年も紀平に務め ている一徹で頑固で人付き合いは悪いが 正直ないつもむっと膨れているような老人 だっ たさ様な不定に加担するようなことはお 断り申します私には務まりませ ん不定に加担するなどという強い表現はに も彼らしかった高尾は彼に頭を下げた生殺 の複雑さと周囲のものに不信を持たせない ためには開けに最も古くから言って親族や 地球にも信用されている松助に友をして もらうより他にないもしこの内場が漏れ たら紀平の家がどうなるかわからないのだ からこう言って頼んだ 長気をすると恥が多いと申しますこんなお

役を努めようとは夢にも思いませんでし た松助は悔しそうに涙をこぼし た猿ヶは城下から東北へ十ほど行ったリパ の領内にある山の中の当時場で5種類の いで湯が湧くのでなく随分遠くから病気の 客が来るしかし多量のことだからこの班の けで行くものはごく稀である雑多な客がず 出入りすること家中のものに見つかる危険 の少ないことそういう点で高尾はそこを 選んだのであっ たお1が立ってから3日ほどして高尾は その報告をしに吉長へ行った 両用で当時にあったそうだね聞いた よ雪太郎は機嫌よくそう言ったそして 慰めるつもりだろうすぐに酒の支度をさせ て逆月をかわしながら高尾の話を聞い た初めは機嫌が良かったけれども聞いて いるうちに吉永は難しい顔になりしまには 怒ったように高を睨んだ では森も一緒に猿がへ行ったの か彼には今おいが必要なんだでは紀平には 必要ではないというの か今度のことは誰が悪いのでも ない高尾は目を伏せて低い声で言っ たただふな巡り合わせだったんだ 誰にも責任はないし誰を不幸にもしたく ない俺の考えたことはそれだけ だ吉長は速歩を向いたいかにも不服そうで あるそして速歩を向いたままどういう風に 解決するつもりかと聞い た2人は猿に1年いて もらう高尾はこう答えたその間にに生活の 手が見つかる だろう見つからない場合にも1年経ったら 俺はおいが病死したという届けを する2人は2人の生活を始め俺は俺で できるなら新しい生活を始めようと 思うやりきれないなそういう話 は吉永はっすように言った そこまで行くともう弱気とか全量などと いう沙汰ではない ねむしろ不だし人間を侮辱するものだ森が 男ならそういう恩恵には耐えられなくなる ぜ吉長なら他に手段があるか ね森とは血闘するかおっぱいかだ妻は綺麗 に許すか利別するかだそれがお互いを尊重 することなん だ俺には自分にできることしかでき ない高尾は自分に言うように言っ た俺は人の苦しむのを見るより自分で 苦しむ方がいいこれがもし人間を侮辱する ことになるなら俺は喜んでその責めを負う よ 日が立っていった月に1度ずつ猿がから 松助が来る表向きは両用の経過を知らせる

という意味でその時2人に変わったことが あれば聞きこちらからは大罪雑費を渡すの で あるだが2人には変わったことはないと 見え松助は何も言わず高尾もそれには触れ なかった 松助は来ると1夜止まってまたむっとした 顔で戻っていっ た大輔はお1の立っていった日からプツっ と母を呼ばなくなっ た亡くなった母の実家の青野では実際の 内場はもちろん知らなかったが高尾が富重 だろうというので青野の桃園にあたるもの を手伝いに起こしたカエという名で26歳 になり1度結婚したが不になって戻ったの だと いうそれにしては少しも暗い影のない開放 的なひどく明るい性質で1日中どこかしら で笑い声の聞こえないことはないという風 だっ た大さんさあおばさんに飲んなさい馬堂々 しましょうほら走るわよ よ四つばになって大輔を背中に乗せて バタバタ 騒ぐ来る早々からそんな具合で大輔も立ち まちなついていっ た 6時は立っていったが高尾の小心は少しも 軽くならなかっ たおいが自分にとっていかに大事なもので あったかということを彼はますます強く ますます深く感ずるばかりだっ た嫉妬もあるかもしれない確かに森と位を 1つにした想像は呼吸を止められ胸を 押しつぶされるような苦しさだっ た心理的であるよりもはるかに直接な肉体 的な苦であったけれどもそれにも増して おいがどんなにに大事な存在であったかと いうこと彼女が自分を去ってからそれが 分かったことそしてそれほど大事であった おいを自分が名ざりにしてきたこと などこういう思いがいつも頭を離れず 取り返しがい罪のように彼を苦しめ たもっと愛さなければいけなかったもっと 愛情とりがなければ行けなかっ た彼は時々そのように1人呟い たそうすればあの男にあってもあんなに 気持ちを動かされはしなかったかもしれ ないおいの心を俺の愛といりでいっぱいに していたとし たら悪いのは俺だ俺はめくで馬鹿だっ た しばしば彼は夜半に起きて暗い庭のうを 歩き回ったり腰かけによって何を思うとも なくじっと動かずに長い時間を過ごしたり

し た雨のない暑い夏が過ぎていっ たある日の午後大輔の部屋を除くとかと 一緒に昼寝をしていたかは上半身を大輔の 方へ向け下半身を仰向けにしていた裾が 乱れて水色の二のの絡まった太ももがあわ に見え たたましいくらい成熟したこりこりと 張り切った豊かな桃であったけれども肌の 色は驚くほど黒かっ た高尾はすぐに目をそらしてそこを去っ た今見たものは少しも彼をそらなかったが その印象は新しい苦痛を与え たいくらか野蛮なカの 太もももっと美しかっ た白くて滑らかでしっとりと柔らかで そして吸いつくような弾力があっ たしか彼はそれを目で見たことはなかった 漢字として記憶には残っている がおいは自分の妻であったいつも自分の そばにいたいつでもその声を聞くことが できたしその姿は手の届くところにあっ たそうだおいはそのように自分の近くにい たんだこの手はを抱きこの肌はおいの肌に 触れたん だだが果たして本当に彼女を抱き本当に肌 と肌を触れたろう かそうではなかった自分はおいを本当には 見もせず抱きもせず肌を触れもしなかっ た風が林を吹き抜ける時木の峰や枝のを かめるようにただ彼女の表面をかめたに すぎ ないそうだ俺はおいというものを知ら ない4年も一緒に夫婦でいて俺はおいを 少しも知ってはいないの だ高尾はその日は遊を取らなかっ たある日かが大のと時に言っ た不思議でございますわね大さん少しも お母様のことをおっしゃいませんわお母様 はどこって聞きますと嫌な顔なさいますの そして他のことに話をそらしてしまうん です の親に早く別れる子は親を慕わないと申し ますけれどもしやお母様のご病気がお悪い のじゃございませんかしら 悪意のないことは言うまでもない結婚に 失敗しても指して気にしないサバサバと 割り切った性質なので感じたままを言った のではあろうが高鬼は胸を刺されるほど 痛い言葉だっ た彼は叫びたい衝動をかじて抑えそこを 立ちながら愛願するように言っ たどうか母親ののことは言わないで くださいできるなら母親を忘れるようにし てやって

くださいことによると死別してしまうかも しれないのですからどうかお願いし ます高尾はなるべく大輔を見ないようにし たおいが去った日から大輔はプツっと母の 名を口にしなくなっ たそれは知っていたけれどもまだガゼない 年のことでもあるし周りに人が多いので気 が紛れているのだろうと思っ た母を恋い慕われるよりいいので格別気に 止めてはいなかっ たそれだけ余計にかの言葉に参ったので ある母のことを聞かれると話をそらすとか 嫌な顔をすると いうそれは母の去った理由を感づいている のではない か両用に行ったのではなくもう帰ってこ ないということを本能的に気づいているの ではない か親に早く別れる子は親を慕わ ない彼も耳にした言葉ではあるが現実に 自分の子に当てて考えたことはなかっ たしかしかの目にはそれが分かったのだ 意識的であるか本能的であるかともかく 大輔がそんな幼い年で母のことに触れるの を避けようとするのはもう母には会えない と知っているために違い ないそう思うと高尾は大輔を見ることが できなかっ た大輔が1人で遊んでいる姿など目につく と胸がキリキリとなるようで思わず顔を 背けずにはいられなかっ たそしていつも活に向かっ て大輔を見てやってください他のことは何 も構わないでいいのです大輔の世話だけし てくれればいいのですからどうかなるべく あれのそばを離れないで ください少しくどいほどこう繰り返し頼ん だ本当はそんなに言う必要はなかったで あろう カエはいつも大輔に突き切りだったおいは しなかったが夜は大て寝るらしい大輔を背 に乗せて馬の真似をするとか庭で砂 いたずらとか鬼ごっこや隠れんぼするとか 自分が子供のように面白がって先立ちに なって 遊ぶしばしば芦屋川や亀岡山などへも連れ ていく様子 で大たんも大きくなったや泳げゆねなどと 高尾のところへ突然やってきていうことが あっ た彼が途上する時玄関へ送って出る とたたまごちびよよちゅと いう春の頃はごちびよよよよだっ たご守備 よろしこの家中の決まった挨拶であるが舌

が少しずつ回り始めたの だろうかと脇玄関で話すのを聞いてもあの ちばおばたんちばだねなどとかなり はっきり言うようになっ たあれ大たんのよ大たんのちばねぶのこぶ のよあらつばめが転ぶのさんうん呼ぶの 本当よこんで頭痛い痛いってここぶっつけ てある日こんな問答も聞こえ た大さんあれがつばめのお母様 よ不用意に行ったものだろうふっと声が 耐えたそれから大輔が怒ったように言っ たちばか ない よ秋にかかる自分高尾はしきりに家康の 言葉をそっとつぶやくことが多くなっ た人の一生は重荷を覆て遠道を行が ごとし急ぐべから ず少年時代に鵜呑みに覚えたのだが今口に してみると深いを感じることができ た森さんの助もおい も重い苦しい荷を背負って いる小さい大輔でさえすでに心の中で重荷 を負っているの だ急ぐべから ず彼は夜半の雨の音を聞きながらじっと目 をつってつぶやくのであった みんなが思いにを負って いる境遇や性格によって差あるが人間は皆 それぞれ 何かしら重荷を負って いる生きていくということはそういうもの なん だそして道は 遠い互いに助け 力を貸しあっていかなければならない互い の至りと女力で少しでも荷を軽くし合って 苦しみや悲しみを分け合っていかなければ なら ない自分の荷を軽くすることはそれだけ 他人の荷を重くすることになる だろう道は遠く生きることは 苦しい自分だけの苦しみや悲しみに溺れて いてはなら ない高尾はこう思うようになりお位置を 失った苦痛からごく徐々にではあるが少し ずつ立ち直っていけるように思え た9月になって間もなく吉永雪太郎から 夕食に招かれ たにわかにあめえた風の渡るよいで吉長の 庭はもう自慢の白はぎも盛りがすぎすすき のほが一斉に立ってい た高尾の他に宮田慎吾という愛客があり見 慣れない娘が吉長の西城と一緒に救助をし た宮田は吉永の役所の同僚だそうで見慣れ ない娘はその妹でありなお幸野年は二十歳

になると紹介され たこの娘を見せるために呼んだのだ な高尾はすぐにそう察し た雪野は御石2寸ほどあるゆったりした 体つきで立位の落ち着いた口の聞き方など ものんびりした娘であっ た吉長の西上に進められると素直にさきも 受け吉永や兄が話しかけるとはにかんだり しないでごく自然におっとりと受け答えを し たそろそろお手並を聞かしてもらおうじゃ ない か少し酒が回った時吉永がそう言い采女が 召使いのものとことを運んでき た幸野さんはことでは教授の腕があるんだ よ吉永が高尾にこう言ったすると雪野は ほのぼのとした笑い顔で教授にも色々 ございますわねと吉長の西城に向かって いっ た私のはこう引いてはいけませんという 教授父も兄も酒が覚めると申します わその通りなんですよ聞いてみればわかり ます宮慎吾が高尾にそう言ったうちでは 酔いざましと折り紙がついているん です高尾は黙って苦ししてい た彼にはまだ円THなどを受ける気は少し もなかっ たそれで娘の気持ちを傷つけないように 勤めてその座の空気から自分をそらすよう にしてい た雪の引いたのは松という顧で雅なもので あっ た 7彼女のことが終わるのとほとんど同時に 高尾の自宅から使いがあった急ぎの用事 らしいので中座の詫びをして帰ってみると 大輔が急病で医師が来てい た大輔は夕方から激しい発熱で引きつけた ようになりオと下痢が続 クブまで助からぬものと思って ください医師はそう言ってその世は朝まで ついていてくれ たある日になっても大輔は昏睡状態で吐く 者のなくなったオトの発さと水のような 下痢が止まらず高の目にも望みはないよう に見え た一睡もしなかったが役所に得ない仕事が あったので早く途上して午前中で帰って みると猿ヶから松助が戻っていた例月より 少し早いが用事があったので来たという ことであっ た彼は大輔が絶望だと知ったのだろう青い 顔で目を泣きはらしていたそして高尾の 昼食が住むと声を潜め て奥様を

ご感病に呼んであげてください ましこう言った高尾は驚いて彼を見た充血 した松助の目は思い詰めたような懸命な色 を称えてい た高尾は首を振っ た行けない2度と言うなそしてすぐに病魔 の方へ立っ た大輔はびっくりするほどにがこけ皮膚は 死んだような色になり薄を開けて小さくぎ ながら絶えず頭をグラグラと左右にゆって い たかも夕べから眠っていないので自分が 変わるからと言って根に行かせ彼は1人で 子供の枕元に座っ たちばを たたまちば目のおち よ大輔は咲夜からしきりに同じ上ことを 言っ た痛い痛いって大たんのちばめねえ声よん で痛いって本当よねえたあたまちばどこへ も行かないねちばめ行っちゃいや大たんの ちば行っちゃ嫌よいや よ高尾は歯を食いしっ た重を大手遠き道 を彼は目をつって大輔死ぬなと心の中で 叫んだ生きてくれ生きてくれ戦うんだ死ぬ な石にかじりついても生きるんだ苦しい だろうが 頑張れ愛願するようにこう呼びかけている と後ろで耐えかねたようにむせびあげる声 がし たお願いでございます旦那様じが一生のお 願いでござい ます松助の声であった高尾はそちらへ背を 向けたままでさくような声で言っ たおお前が聞いていたら分かる だろう大輔は上ごにも母の名を呼ば ないあれが出ていった日から1度も母の ことは口にしないの だ大輔はこの小さな幼い心で母を忘れよう としてきたの だこのままがいいここであれを呼ぶことは 大輔をも含めて 4人がもう一度苦しむことに なるそこを押してお願い申すのでござい ます一生のお願いでござい ます松助は後頭しながら言っ たそしてこれは奥様を呼び戻していただく ことはいつかは自からお願い申さなければ ならないことでござい ます 高尾は静かに振り返っ た松助の言う意味がちょっと分からなかっ たので あるあれを呼び戻す

て初めに音もせつかった時Gが何と 申し上げたかお忘れではございます まい召使いの身で不定の加担はできませぬ などと申しまし た何も知らず愚か者の一途な気持ちから ただもう前後もなく申し上げたのでござい ます何も知らないとはどういうこと だまるで違うのです奥様には不定などは ございませんGは204日もおつき申して いてこの目でずっと見てまりまし た様には決して不定などはないのでござい ます松助何を言い出すのだお聞きください まし旦那様私の申すことをどうぞお聞き ください まし松助は凸とした口ぶりで話しだし た片手で自分の膝をつかみ片手で涙を吹き ながら 高尾は聞きたくなかった叱りつけようと さえしたが松助がのっけに森さんの助が 渋滞であって嫁育爆もないと言い出すのを 聞くとつい知らず話に引き入れられ た森さの助は数年前から肺を病んでいた 自分でも気づかなかったがあの世高に闇討 を仕掛けてした時不に活血したという高が 去ってから市販時も動くことができずはう ようにして宿所へ帰っ た猿がへはお1に7日ほど遅れていったが 着くとすぐにまた活血しそのまま寝たきり になったそうで あるおいは三之助とはずっと離れた部屋で 寝起きをし たの部屋にいる時は必ず商事を開けておい た宿町にはもちろん偽名であるが兄弟と 書いてそれが宿のものに少しも疑われずに 来 た紀平とはっきり縁が切れるまではそれが 当然だろう松助はそう思っていたその前に もし二しみな様子でもあったら容赦なく面 してやるつもりでさ しかし2人の態度はいつまでも変わらず 松助の目にも清々しく見えるようになっ た彼らはほとんど話をしなかった同じ部屋 にいる時でもおいは縫い物をしたり薬を 煎じたりし三之助は黙ってしんと寝てい た時々短い話をかわすといつもお互いの 小さい頃の思い出であっ たそしてつい千夜のことですが森様は奥様 がお部屋へ去られてから私をお呼びになっ て泣きながらこのようにお話しなさいまし た松助はうめくような声で言っ た三之助は自分とおいとの関係を語ったの である それは高尾がおいから聞いたのと同じもの で彼は自分が諸子であることも打ち明け た江戸へ容姿に行くことに決まり行く前に

一目だけ会いたいと思い合うと1度では 済まず2度3度と重なるうちに今度は 離れることができなくなった生殺それも 隠さずに語っ た高尾の計いで猿に来ておいと2人になっ た時自分はすぐに気がつい た自分の気持ちは恋ではなかっ た母のように姉のように慕っていたので ある愛情というものを知らなかった自分に おいが初めてこの世でたった1人愛情を 示してくれた生まれて初めて愛情の甘やか さを知り ひろやかな心の喜びを知ったそうして いかなる犠牲を払ってもお一を奪い取り たいと思ったので あるだがいざ望み通り2人だけになった時 自分にはお1の手に触れることもでき なかっ た三之助はこう言ったということ だおい殿は自分には母親であり姉である おい殿の気持ちも恋ではない母がこう姉が 弟をわりかう愛情にすぎ ないここへ来てから200十日大一殿の 行き届いた解放を受けて自分は初めて人間 らしい安らかな温まる日を過ごした 初めて生まれてきた甲があったと思っ た森様はこう言ってお泣きなされました 医者も言う通り自分はせいぜい今年一杯の 寿命だろうお一度のは潔白だあの人は昔 から自分の哀れさに同情していた無法な 懇願をばむことができなかったほど深く 真味に同情していてくれたのだ不定な 気持ちなどは散りほどもなかったあの人の 潔白は神物を証しに立ててもよいあの人を 頼む自分が死んだら木へ戻れるようにして くれあの人を不幸にしないようにこの通り だ森様は 枕の上に顔を伏せて泣きながらこの字に頭 を下げてお頼みなされたのでござり ます高尾は素直に感動して聞い た三之助の執着は闇討ちをかけるほど 激しいものであったそれがいざ許されて みると恋ではなかったと いう彼の態度が異常と言ってもいいくらい だっただけにそれが恋でなくて母や姉に 対する愛情であったという告白は高を素直 に感動させいさの疑念もなく受け入れて いいと思っ たじは口が下手でござります思うようには 申し上げられませんけれども奥様のご気象 は旦那様がよくご存知でござい ましょうじもこの目で奥様のご潔白は拝見 してまりました旦那 様松助はぐしょぐしょに濡れた顔でこちら を見上げ

た某様に万一のことがあっては取り返しが つきません1日でも一世でもようござり ますどうぞ奥様をお呼び戻しくださりませ どうぞ奥様に看病させてあげてくださり ませ一生のお願いでござい ます高尾はしばらく黙っていたがやがて 低い声でしかしきっぱりと答え た俺たちは苦しんだ俺もおいも森 も互いに苦しんだその苦しみを無駄にし ないようにと思ってああいう方法を取って み たそれはまだ終わってはい ない2人の潔白は信じるがそのことに はっきり区切りがつくまではおいの戻る ことは許せ ないそしてさらに低くつぶやくように言っ た その時が来たら俺が迎えに 行こうもし助かったら大輔を連れて猿方に へ帰ってもこれの病気のことは決して言う な固く申しつけた ぞ死後にして吉長が来た果たして雪の もらわないかという話であったが高尾は はっきり断っ たその時は大輔も危うく峠を越してこれ なら命は取り止めるだろうと意も言い高尾 はようやく息をついたところだっ た坊やがそんな病気になるのも母親がい ないためだどうしたって頼んだものでは ダメなん だ吉永は体操を乗り気らしくこう言った 子供のためにももらうべきだよ宮では約束 だけでもいいと言ってるん だおいが戻るかもしれないん だ高尾はそう答え た当時は病気に良かったらしい詳しいこと はいずれ話すが多分戻ることになると思う そういうわけだ から吉長はむっと口をつみ睨むように こちらの顔を見てそしてその話にはもう 触れずに去っ たそれから78日経ったある 朝大輔が何かひどく難かっているので高尾 は途上の支度を手早くして行ってみ たかが懸命になめているが彼はベスを描い て足をバタバタさせて何かせがんでいた つばめを見るんだとおっしゃって聞かない んですのまだ起きたりなすってはいけませ んの によしよしそのくらいならいい だろう元気な暴れ用を見て高尾はそられる ような気持ちになりヤグを跳ねて大輔に手 を伸ばし た玄関くらいならねさ抱っこして おおこれは重くなった大3また重くなった

ぞ大たん重いは重たい ねカエが背中を薄やぎでくるん だ重たい重たいキキがよくなったから 重たい重たいさ行ってつばめにおはよう しようつばめもね大さんおはようて言うよ おはようっ てつばめはもういませんですよ後ろからか がそう言っ た23日前からいなくなりましたのもう南 へ帰ったのでございます わ高尾ははっとし たつばめは去ったという上ごにまで行って いた大輔のつばめ がどうたのたたまちばどった のうんつばめは ね枠しながら高尾は脇玄関へ出ていった 差し掛けの針に巣はあるがそこはひっそり として見ただけでも住むあのいなくなった ことが わかる大輔はベスを書いてつばめがいない と鳴き声をあげ父親の腕の中で見台をし たつばめはね大輔よくお聞きつばめは寒く なると温かい奥へ帰るんだよあっちの遠奥 にへ ね高尾はこの方へ頬を寄せながら行っ たそうして春になってこっちが温かくなる とまた大3のお家へ帰ってくる大3が4つ になるとつばめはちゃんと帰ってくるんだ よちば また食いのまた ああちゃんと帰ってくる よ高尾の胸に熱い湯のようなものが溢れて き た彼はほとんど涙組みながら大輔に向かっ て囁くように言っ た温かくなればねつばも帰ってくるし大3 の母さんも くるもう少しの我慢だよ冬を越して春に なれ ば大3が偉かったから ね

7 comments
  1. よしみさん大晦日も休まず頑張ってるですね、頑張ってるよしみさんのため私も真面目に拝聴します、ラッキーな年で龍のように天高く飛んで下さい、来年も配信待ってま😢ーす😉🐉(ちゅばめ子供のはちゅおん最高です)

  2. 今年最後です、一年間ありがとうございました。来年も変らずお願いします🙇本当にありがとうございました。良いお年をお迎え下さい❤

  3. 明けましておめでとうございます😀✨🐲🎍

    今年初めての拝聴させていただきました❣️
    新年は山本周五郎作品から聴かせて頂きました😊v
    今年もまた新たな気持ちで楽しくいつものあべさんカラーで朗読を聴かせて頂きますね。
    変わらず今年も宜しくお願いします🙇‍♀️✨
    ありがとうございました🤗🌟

  4. この話には、悪人がいない。善良な優しすぎる人々がほとんどだ。周五郎先生が
    望む人物達なのだろう。地獄の戦国の世を終わらせる努力を続けた家康さんは、江戸時代の
    平和な地獄を作ってしまった。その後また、明治、昭和の戦争の地獄が訪れた。世界でも、
    戦争の地獄は、絶え間がない。争い続けていく我々愚かな人々。我々、一人一人が自分自身を知り
    その愚かさを克服する以外には、この地獄を抜け出せないのだろう。我々は、奇跡的に極楽に
    産み落とされていることを知らないのかもしれない。日清、日露の戦争を生き延びた祖父は、辛い
    農作業の不平不満を漏らす母に、「今の世は、極楽じゃ!」と叱っていたそうです。

  5. 明けましておめでとうございます。今年も心楽しめる朗読をお聞かせください。我儘を言わせて貰えば、今年は藤沢周平『三屋清左衛門残実録』を聞かせていただければ大変に嬉しく存じます。

  6. 새해 복 많이 받으세요
    明けましておめでとうございます。

    世なじれば
    ほど北風に
    増しふかれ
    我省みる
    これぞ逆捩

    主人公の苦悩、忍耐、哀れみなど
    滲み出る作品を聞かせていただきました。ありがとうございます。
    つい先日、生まれて2度目の短歌に挑んでみました。

  7. 本年もよろしくお願い致します。年明けに周五郎を聴けるとは思いがけずラッキーです🎉ツバメの巣から、渡り鳥の時期に飛来する発想で、また同じ場所で仲良く暮らせるのを人間に重ねた筋書き流石です❤お疲れ様でした😊

コメントを残す