5月18日、沖縄地方などが梅雨入りしたとみられると発表され、これから本格的な雨の季節を迎えます。
その水害への備えとなるのがハザードマップですが、目に障がいがある人にとっては通常のハザードマップでは内容がわからず、いざという時に使えないのが現状です。
「災害弱者」を取り残さないために、国も対応に乗り出しています。
二本松市で2年前に開業した「はり」や「きゅう」などの治療院。
院長の渡邊健さんです。
■渡邊健さん
「見えなくても(施術が)出来る工夫がしてあるんですよ、例えばこういう風にぽちっと点字がついてますよね。いまどの位置にあるか分かるようになっています。」
渡邊さんは30歳のとき、目の違和感を強く感じ医師から網膜色素変性症という国指定の難病であると診断されました。
徐々に視力が失われていき、いま、渡邊さんの目はほとんど見えていません。
目が見えなくても1人で患者と向き合えるように、治療に必要な設備には、さまざまな工夫が施されています。
そして、もう1つ、意識していることがあります。
■渡邊健さん
「自分で場所を決めて、これは水道管を切ったものですけど、こういうものを立てておくと、自分がどこに何の針を立てたか分かるんですね。基本的に自分1人で出来るようにしておくことが一番重要ですね。これは防災もそうだと思うんですけど。」
相次ぐ地震に加え、これからは水害への備えが必要です。
ただ、渡邊さんのように視覚に障がいがある人にとって、災害に備えることは簡単なことではありません。
■渡邊健さん
「僕にとってハザードマップがどうかというと、一市民として目を通すということはできないので、家族が代わりに見てくれたりしている。」
その理由の1つが、自治体が整備するハザードマップを目で見て確認することが出来ないからです。
渡邊さんの住む二本松市でも、ハザードマップにはきめ細かくさまざまな防災情報が記されていますが、あくまでこれは「地図情報」。
浸水箇所の色分けや、危険個所を示した情報は、視覚に障がいがある人にとっては理解することができません。
■渡邊健さん
「僕のように中途失明の場合、点字を容易に読めるようになるには非常にハードルが高くて、であれば何かというと音声なんですよね。」
こうした状況を踏まえ、国も改善に乗り出しました。
国交省が改良を検討しているのは、ウェブサイトで公開している「重ねるハザードマップ」です。
視覚障がい者がわかって、伝わるように従来の地図情報に加えて、災害の危険性を簡単な文章で表示し、音声による読み上げソフトなどに対応できるよう、改良を進める計画です。
■鎌田有真記者リポート
「国交省の改良イメージをもとに、どのような音声が読み上げられるのか。読み上げ機能が付いたソフトで、確認します。」
音声による読み上げソフト
「この場所では、最悪の場合洪水による浸水が発生して、その深さが50センチから3メートルになることが想定されています。これは床上浸水に相当する深さです。」
■鎌田記者
「場所、想定される被害の状況などがシンプルで分かりやすく読み上げられている印象です。」
障がいがある人にも優しい防災へ。渡邊さんも社会の変化に期待を寄せています。
■渡邊健さん
「ノーマライゼーションとかダイバーシティとか、そういった言葉はよく出てくるけど、まずは自分で歩いて移動できる、見えないものは音声化できるというものが、自立して初めて、人と人という状態になってくると思うので…」
国交省によりますと、障がいの特性に応じたハザードマップの整備に取り組んでいる自治体は、全国でもごくわずかで8割以上の自治体が「作成の予定なし」としています。
災害時に弱者をどう守るかという点では、東日本大震災の後は法律も変わり、自治体は、障がい者や高齢者など自力で避難できない人を握することが求められています。
福島県のまとめによると、2019年の東日本台風の際、そういった方への避難の呼びかけ、避難支援は35%などとなっていて低調です。
今回は視覚障がい者に注目して取材をしましたが、いざというときに助けを求められるよう、いまいる場所の危険性を事前に把握できる環境は誰に対しても必要です。
京都府・福知山市は、ハザードマップを音声にしたものをウェブサイト上で公開しています。北海道石狩市でも、音声CDを用意しているほか、聴覚障がい者向けに
手話を使ったハザードマップも用意しているということです。
ハザードマップではありませんが、福島県内では郡山市が、危険個所に住んでいる視覚障がい者に対し、事前に登録をすれば避難情報が発令された場合に、電話連絡するシステムを運用しています。
ただ最後は避難をする際に、周囲のサポートが必要ですね。
取材した渡邊さんは特にコミュニティの存在の意義は大きいと話しています。
■渡邊健さん
「やっぱり一番重要なのはコミュニティに所属しているかとかということだと思うんですね。家族は一番身近なコミュニティですけど、それでもまずは所属しているかということが重要であって…。コミュニティを作ってと同時に、特に中途視覚障がい者の方への心のサポートというか、そういうのは同時進行で必要なのかなと。」
災害弱者と呼ばれる人が取り残されないために、普段から弱者にやさしい社会をめざしていくことが大切と感じました。
<記事はこちら>
https://www.fct.co.jp/news/area_news_1888