【ふるえ外来】ただの老化ではない“手のふるえ” 食事や趣味を奪う病気に立ち向かう 治療に麻酔いらず…0.1ミリの最新脳治療

【ふるえ外来】ただの老化ではない“手のふるえ” 食事や趣味を奪う病気に立ち向かう 治療に麻酔いらず…0.1ミリの最新脳治療



「あれ、手が震えている」と感じることはありませんか。高齢者に多い、手の「ふるえ」の悩み。実はそれ、病気かもしれません。札幌市内にある「ふるえ外来」と、その最新治療です。

【写真を見る】“手のふるえ”麻酔いらずの手術に密着、症状が消えペンで直線もしっかりと…患者の記録

■“手のふるえ”実は病気かも 食事よりショック…80代男性

ディレクター「こんにちは。杉本さんでいらっしゃいますか」
杉本道雄さん「そうです」

札幌市東区に住む杉本道雄さん85歳です。長年の趣味はこのジオラマ制作。

杉本さん
「部品と言ったら、まずレールですよね。それから電車」

60年続けてきた趣味です。そんな杉本さんはある日、手の震えに気がつきました。

杉本道雄さん(85)
「手が先に来た。両手です。徐々に自然にだんだんひどくなった」

ふるえがひどくなり、やがて食事もままならなくなりました。

杉本道雄さん
「(そのぐらい震える?)うん、震える」

ディレクター
「もうじゃご飯食べられないですね、普通に」
杉本さん
「だから置いて、しっかり置いて少しずつ(食べる)」

ふるえがひどくなった時の杉本さんの記録映像です。ある体勢をとると、激しく手が震えるため、ジオラマの制作はできなくなりました。

杉本道雄さん
「僕は食事よりジオラマ制作をストップされたことが…あの模型作りをやめさせられたことがショックでショックでね」

■全国でも少ない“ふるえ外来”先端治療「0.1ミリの精度」

「ふるえ」の悩みを抱えている人のために、札幌市豊平区にある「脳神経内科かしわば病院」には、全国でも数少ない「ふるえ外来」があります。

患者は高齢者が多いですが、若い人でも外来を訪れることがあるといいます。

患者の男性(72)
「3年ぐらい前からふるえは感じていたんですが、妻からこういう『ふるえ外来』があるの一度受けてみたらっていうことを言われたんです」

脳神経外科の成田拓人さんです。「ふるえ」の専門医でもあります。

脳神経外科医 成田拓人医師(58)
「大体の場合は、本態性振戦だとかパーキンソン病に診断が落ち着くことが多いんですけど、それに合った薬を処方してその薬が効くかどうかをしばらく追跡します」

薬などが効かない場合に行われるのが、機器を使って行われる外科手術、FUS(エフ・ユー・エス)、集束超音波治療です。

およそ1000本の超音波を、虫眼鏡で光を集めるようにして「ふるえ」の原因となっている部位にあてて治療します。

全国で、集束超音波治療装置を導入しているのは21施設。治療機として稼働しているのは18施設です。

手術する女性患者の脳の状態を画像などを撮って調べ、事前に「ふるえ」の原因となっている脳の部分を特定します。

脳の中央に位置する「視床」の画像で、色がついているところに超音波をあてて治療をしていきます。

脳神経外科医 成田拓人医師
「赤と青がやっつけたいやつです。震えの原因になっている場所です。だけど黄色と緑はすぐ近くにありますけど、黄色をもし超音波でね、熱で焼いてしまうと麻痺が出ます。だからそのギリギリのところにいるんですよ。0.1ミリの精度で決めていくという作業ですね」

女性患者に対する集束超音波による手術が始まりました。

■“手のふるえ”治療に麻酔いらず 症状消え…直線もしっかりと

この日、集束超音波治療の手術を受ける女性患者です。長く「ふるえ」に悩んでいました。

手術が行われるのはMRI室。患者には全身麻酔はかけず、意識のある状態で手術をします。

手術時間はおよそ3時間。超音波を何回かに分けて照射します。患者によっては頭痛を感じる人もいるということです。

脳神経外科医 成田拓人医師
「今のどうだった?大丈夫?」

麻酔をかけていないので、患者とコミュニケーションを取り、ふるえの状況を確認しながらの手術です。

脳神経外科医 成田拓人医師
「次、超音波発射するんだけどこれひとつ、節目になります。ちょっと頭痛いと思います。時間も長いので30秒くらいになると思います、これが1つ勝負どころ」

(マイクで患者に呼びかける)「29秒頑張ってください」

成田拓人医師
「がんばれ、がんばれ、がんばれ、よしよしよしよし…よくがんばった」

「どう辛かったっしょ。山越えたよ、1つ」
「終わったよ。痛かったでしょ、よくがんばりました。このまんま。このまんま目をつぶって…」

明らかに女性患者の手の震えはおさまっていました。

成田拓人医師
「患者本人も良くなったと言っているので、目的としては、ちょっと時間がかかったけどできたと思いますね」

手術室から女性患者が出てきました。

手術後にペンで渦巻を書いてみるとこの通り。直線もしっかりと。手術前の渦巻と比べると、直線も手術後はまったく波を打っていません。

患者の女性
「これだけ良くなったっことは、感謝してます」

成田拓人医師
「僕たちはもちろんそれを目的に治療してるけど、患者さん自身がすごくびっくりしちゃっていることが結構あって」

■「違う世界にいるみたい」手のふるえがおさまった85歳男性

ジオラマが趣味の杉本道雄さんもこの手術を受け、手のふるえはおさまりました。

杉本道雄さん(85)
「全部手術したあとですよ、こんなに動けるの」
「ふるえがぴたっと止まってるんですよ。なんか違う世界にいるみたい。60年の夢をね、もう1度」

成田拓人医師
「病気だと思われてなくて、皆さんひたすら我慢されている。病院に来ていただければ何かしらの治療を提供できると信じてます。ぜひ病院に来てもらいたい」

■“手のふるえ”手術は片方しか保険適用されず…

世永聖奈キャスター
ふるえの原因となる病気で代表的なものが本態性振戦とパーキンソン病です。集束超音波治療は頭の骨の厚さや密度によっては手術ができない場合もあります。

堀啓知キャスター
若者もこの病気になるということですが、こうした治療ができるのは知りませんでしたね

世永キャスター
いちどの手術は片手しかできないのですが、9か月すぎればもう片方の手の手術も可能です。ただ、保険治療は片手しか適用されず両手が震える人が多いのですが、保険での手術はどちらか選ばなければなりません。