名将トルシエ氏もYOSHIKI氏も“北海道産ワイン”に大注目 なぜ道内各地にワイナリーが急増?『ワイン産地の約55%が失われる』ヨーロッパ伝統の産地には深刻な未来予測が…

名将トルシエ氏もYOSHIKI氏も“北海道産ワイン”に大注目 なぜ道内各地にワイナリーが急増?『ワイン産地の約55%が失われる』ヨーロッパ伝統の産地には深刻な未来予測が…



シリーズ特集“食の未来を考える”。いま北海道各地で、ヨーロッパの名門ワイナリーも注目する、質の高いワインが、続々と作られています。大きく変わろうとする、産地の地。背景に何があるのでしょうか。

◆《北海道に注目…かつての名将トルシエ氏はワイン醸造家に―》
仁木町の丘に広がるNIKI Hills Winery(ニキ ヒルズ ワイナリー)のブドウ畑。そこに一人のフランス人の姿がありました。フィリップ・トルシエ。サッカー日本代表の元監督です。

サッカー日本代表元監督・フィリップ・トルシエ氏
「(ワイン造りで)私は3-4-3のシステムを取り入れています」

かつて日本代表を率いた名将は、いま、フランスのボルドーで、ワイン造りに情熱を注いでいます。

ワイン醸造家(サッカー日本代表元監督)フィリップ・トルシエ氏
「同じ品種のメルローでも、北海道のワインは、アルコール感や骨格が比較的穏やかでより軽やかに感じました」

世界的なワインの産地に通じる魅力が、北海道にはあるというのです。

◆《本場フランスの名門ワイナリーが北海道・函館へ進出》
すでに、函館に進出した名門ワイナリーもあります。フランス・ブルゴーニュで、300年の歴史を持つワイナリー「ド・モンティーユ」のブドウ畑が、函館の丘に広がっています。

ド・モンティーユ&北海道・矢野映ジェネラルマネジャー
「いろんな方向で風が抜けやすい。1日中、陽があたるという日照条件のよさもあります」

2019年から、ここでぶどうの植樹を始め、ワイン造りに取り組んでいます。

ド・モンティーユ&北海道・矢野映ジェネラルマネジャー
「同じ品種からどれだけ地域の特性を生かした味のものができるか」

◆《北海道各地にワイナリー続々…YOSHIKIさんも参戦》
2010年代以降、北海道各地でワイナリーの開業が相次いでいます。6年前は42か所だったワイナリーも、今年は76か所にまで拡大しました。いま、北海道産のワインの種類は、どんどん増え続けているのです。

世界的なミュージシャン、YOSHIKIさんも去年、小樽の隣にある余市町のブドウ畑を訪問。北海道産のワインへの強い思いを言葉にしました。

X JAPAN YOSHIKIさん
「北海道にいいワインがあるだけではなく、今後の輸出産業の一つになればと思っています」

YOSHIKIさんはいま、北海道産のワインを、世界に発信するプロジェクトを進めています。

◆《変わるワイン産地の世界地図…深刻な未来予測も》
一方、ヨーロッパの大学などで構成する研究チームが2023年、深刻な未来予測に関する論文を発表。そこにはこう記されていました。

『このまま温暖化が進めば、今世紀末までに、ヨーロッパの伝統的なワイン産地の約55%が失われる可能性がある―』

ポルトガル、イタリア、ギリシャなど、南ヨーロッパの伝統的な生産地が地図から消える可能性もあるというのです。そして、この論文を発表した研究チームによると、最も厳しい温暖化シナリオの場合、ワインの産地はこれまでより、北へ900㎞も移動すると予測しています。

北海道は、その900㎞北上した先と、ほぼ同じ緯度上にあります。実は以前とは大きく異なる変化が、北海道でも顕著になっています。

◆《かつて栽培が困難だったワイン用ブドウが北海道でも―》
農研機構 気候変動対応グループ 根本学グループ長
「北海道では近年のワイナリーの増え方が急激で、思った以上に北海道でワイン栽培をしようとする人が増えています」

北海道で育つワイン用のブドウの品種は、かつて限られていました。ところが気候の変化とともに、栽培できる品種の幅が広がってきていると専門家は話します。

農研機構 気候変動対応グループ 根本学グループ長
「北海道では夏が冷涼でブドウの品種であるピノ・ノワールなどは栽培できない状況でした。それが、いま夏の気温の上昇というのが結構顕著なので、ヨーロッパの有名なブドウがうまく醸造できるようになってきました」

◆《2050年には北海道ほぼ全域がワイン用ブドウの栽培適地》
かつて”寒すぎる”と言われた北海道で、以前なら難しかった世界の品種の栽培が可能になり始めています。2050年には北海道のほぼ全域が、ワイン用のブドウ栽培に向く気候になる…、そんな予測さえ示されています。

フランスの美術館に残る15世紀の写本には、農民たちがブドウを摘み取る様子が描かれています。当時、ブドウの収穫は9月下旬でした。しかし、ワインの一大産地として世界的に知られるブルゴーニュ地方では、同じ15世紀の教会の記録に、こんな一節が書き留められています。

◆《温暖化でワイン用ブドウの収穫期にも変化が…》
『1487年9月6日。収穫のため、農夫を雇う』(ブルゴーニュ地方の教会記録より)

ワイン用のブドウは、気温のちょっとした変化でも収穫時期に現れます。通常であれば、9月下旬だった収穫時期が、数週間も早まったことで15世紀の人たちは気候の異変だと感じ取り、書き残していたのです。同じように収穫時期の異変を、いま感じ取っている人が、北海道の岩見沢市栗山町にいます。

◆《北海道にも影響か…「2019年くらいから劇的に早まって」》
近藤良介さんは農耕馬を使って、ワイン用のブドウ畑を耕しています。

KONDOヴィンヤード 近藤良介さん
「馬耕は農業の原点みたいなもの」

ワイン造り20年目の近藤さんは、収穫時期の変化を強く感じていると話します。

KONDO ヴィンヤード 近藤良介さん
「2019年くらいから劇的に変わってきて、収穫時期は早まっています。最近になって、ここのブドウ畑の収穫は9月の終わりくらいから始めています。誰も経験していない、これからの温暖化の時代と向き合うことになります」

◆《北海道生まれのワインの未来は…温暖化でどうなる?》
ワインの産地として存在感を増す北海道ですが、土の微生物を研究する専門家は不安を隠しません。

北海道大学ワイン教育研究センター曾根輝雄センター長
「気象が変化すると今までなかった病気や虫がやって来ます。そういう環境下で、いいブドウを作るためにはどうしたらいいのか?そうしたことが、今後の研究テーマになってくると思います」

塗り替えられるワイン産地の地図。それは、北海道の希望の未来である一方で、忍び寄る気候変動の足音でもあります。

◆《世界のワイン産地の地図は塗り替わっていくのか?》
世永聖奈キャスター)
ヨーロッパの平均気温が2℃上昇すると、ワインの産地の半分が失われるという予測は、約260年前に始まった「産業革命」以前の平均気温に比べた場合です。ただすでに最近10年の平均気温は【2.2℃】も高い状態が続いています。

堀啓知キャスター)
北海道産のワインへの期待は高まる一方ですが、千年の歴史があるという、ヨーロッパのワイン事情を考えると、鶴岡さん、ちょっと心配になりますね。

HBC野球解説者・鶴岡慎也さん)
実は私の知り合いも1人じゃなくて、もう数人がワイナリーを始めたって人がいて、そういう事情があったんだなって、いま知りました。北海道が名産地になるのは、いいことだとは思うんですけれども、世界的に考えたら気候変動についても考えていかないと、本当、大変だなと思いますよね。

堀啓知キャスター)
温暖化の影響というと、どんどん産地が変わっていくことは、ワインに限らず、いろいろな農産品にも影響が出てきますよね?

旅行会社経営・寺井裕美子さん)
私も仕事上、視察の手配などをしますが、先日、千葉県から北海道の仁木町に、ミニトマトの視察をする団体がいらっしゃいました。道民としては、いろいろ農産品が増えていくことに嬉しさはありますが、一方で作れなくなっている産地もあると考えると、複雑な思いがあります。

堀啓知キャスター)
今までは本州でも育てられていた農産品も暑くなったので、どんどん北に向かって行く…、北海道もいまは、ワイン造りに適しているかもしれませんが、じゃあ10年先、20年先もこれ維持できるのかと考えると心配になります。

そうした先を見越して、苗木や土壌、微生物の研究も進められているということですよね。本当にいま、北海道の各地に個性的なワイナリーが着々と広がっていて、質の高いワイン造りが行われています。

それが未来の希望であり続けるためにも、なんとか温暖化は抑えないといけないと感じました。

《2026年5月25日(月)HBC『今日ドキッ!』内で放送》

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