#有島武郎#或る女
1911年1月『白樺』の創刊とともに「或る女のグリンプス」の題で連載を始める。後に後半を書き下ろして『或る女』と改題して出版された。
《ここまでのお話》
倉地との新生活をはじめた葉子は、倉地のすすめで妹たちをひきとることにしたが、倉地との関係は妹には明らかにせずにいた。一方木村との関係は絶たず、手紙のやりとりを続けていた。
0:00:00 或る女㈧
0:00:10 三十一
0:13:45 三十二
0:39:49 三十三
1:07:43 三十四
サムネイル画像
Young Woman in an Amchair
Gustav Klimt
有島 武郎
1878年(明治11年)3月4日 –
1923年(大正12年)6月9日
有島 竹夫ある 女 31寒い明治35年の正月が来て愛子たち の陶器休暇も終わりに近づい た洋子は妹たちを再び田島塾の方に返して やる気にはなれなかっ た田島という人に対して反感を抱いた ばかりでは ない妹たちを再び預かってもらうことに なれば洋子は当然挨拶に行ってくべき義務 を感じたけれどもどういうものかそれが 暴かられてできなかっ た横浜の天長の長いとかこの田島とか洋子 には自分ながらわの分からない苦手の人が あっ たその人たちが格別偉い人だとも恐ろしい 人だとも思うのではなかったけれどもどう いうものかその前に出ることに気が引け たよこはまた妹たちが言わず語らずのうち に生徒たちから受けねばならぬ迫害を思う と不便でもあったで毎日数学するには遠 すぎるという理由のもにそこをやめて いくらにある所がというのに通わせること にし た2人が学校に通い出すようになるとクチ は朝から洋子のところで対抗時間まで 過ごすようになっ たクチの副審の仲間たちもちょいちょい 出入りし たことに正という男はクチの影のように クチのいるところには必ずい た例の水先案内業者組合の設立につい が一番働いているらしかっ た正という男は一見飽満なように見えてい てかそのように目端の聞く人だっ たその人が玄関から入ったらその後に行っ てみると履き物は1つ残らず揃えてあって 傘は傘で一隅にちゃんと集めてあっ たよこも呼ばない素早さで花瓶のお花の しれかけたのやや歌詞の足りなくなったの を見てとって翌日は忘れずにそれを買い 整えてき た無のくせにどこかに愛嬌があるかと思う と馬笑をしている最中に不思議に陰間な 目つきをちらつかせたりし た洋子はその人を観察すればするほどその 正体が分からないように思ったそれは洋子 をもどかしくさせるほどだっ た時子はクラチがこの男と組み合い設立の 相談以外の秘密らしい話し合いをしている のに感づいたがそれはどうしても明確に 知ることができなかっ たクラチに聞いてみてもクラチは霊の呑気 な態度でこも投げに話題をそらしてしまっ
たよはしかしなんと言っても自分が望み うる幸福のに近いところにい たクチを喜ばせることが自分を喜ばせる ことであり自分を喜ばせることがクチを 喜ばせることであるそうした作意のない 調和は洋子の心をしとやかに快活にし た何にでも自分がしようとさえ思えば適用 しうる洋子にとっては抜け目のない世話 女房になるくらいのことは何でもなかっ た妹たちもこの姉を無理のものとして姉の してくれることは1も2もなく正しいもの と思うらしかっ た四十洋子からまま子扱いにされている 愛子さえ洋子の前にはただ従順なしとやか な少女だっ た愛子としても少なくとも1つはどうして もその姉に感謝しなければならないことが あったそれは年齢のおかげもある愛子は 今年で16になっていたしかし洋子がい なかったら愛子はこれほど美しくはなれ なかったに違い ない23週間のうちに愛子は山から 掘り出されたばかりのルビーと磨きを駆け あげたルビーとほどに変わってい た小で世は姉よりもはるかに低いが ピチピチとしまった肉月と抜けあがるほど 白い艶のある皮膚とはいい金星を保って 短くはあるが類のないほど日韓的な手足の 指の先細なところに利点を見せてい たむっくりと牛乳色の皮膚に包まれた地蔵 型の上に据えられたその顔はまた洋子の 苦心に12分に報いるものだっ た洋子が首を襲ってやるとそこに新しい美 が生まれてた髪を自分の衣装通りに束ねて やるとそこに新しいが湧き上がっ た洋子は愛子を美しくすることに成功した 作品に対する芸術家と同様の誇りと喜びと 感じ た暗いところにいて明るい方に振り向いた 時などの愛子の卵型の顔かたちは美神 ビーナスをさえ妬まますことができ たろう顔の輪郭とやや額庭を狭くするまで に熱く生た室の髪とは闇の中に溶け込む ようにぼかされて前からのみ来る光線の ために花筋はギリシャ人のそれに見るよう な規則正しく細長い全面の平面を際立たせ 潤いきった大きな2つの瞳としまって熱い 上下の唇とは皮膚を切りなって現れ出た2 の魂のように生々しい感じで見る人を打っ た愛子はそうした時に一番美しいように闇 の中に寂しく1人でいてその多根な目で じっと明るみを見つめているような少女 だっ た洋子はクチが洋子のためにして見せた 大きな団に報いるために貞子を自分のアブ
の胸から咲いて捨てようと思い極めながら もどうしてもそれができないでい たあれから1度も訪れこそしないが時折り 金を送ってやることとウバから安否を 知らさせることだけは続けてい たウバの手紙はいつでも恨みつらみで 満たされてい た日本に帰ってきてくださった甲がどこに ある親がなくて子が子らしく育つものか 育たぬものかちょっとでも考えてみて もらい たいUBもだんだん年を取っていくみ だ橋にかかって貞子は毎日毎日ママの名を 呼び続けているその声が洋子の耳に聞こえ ないのが不思議 だこんなことが消息の旅ごにたどたどしく 書き連ねてあっ た洋子はいても立ってもたまらないような ことがあったけれどもそんな時にはクラチ のことを思っ たちょっとクラチのことを思っただけで歯 を食いしりながらも太公園の表もからと家 を抜け出る誘惑に打ち勝っ たクラチの方から手紙を出すのを忘れたと 見えて岡はまだ訪れてはこなかっ た木村にあれほど切な心持ちを書き送った くらいだから洋子の住所さえ分かれば訪ね てこないはずはないのだがクラチには そんなことはもう念頭になくなってしまっ た らしい誰も来るなと願っていた洋子も この頃になってみるとふと丘のことなどを 思い出すことがあった横浜を立つ時に洋子 にかじりついて離れなかった青年を 思い出すことなどもあったしかしこういう ことがある旅ごとにクラチの心の動き方を もきっと推察したそうしてはいつでも癌を かけるようにそんなことは夢にも思い出す まいと心に誓っ たクラチが一向に無頓着なのでよこはは まだ席を移してはいなかっ た最もクラチの繊細が果たして席を抜いて いるかどうかも知らなかったそれを知ろう と求めるのは洋子の誇りが許さなかった 全てそういう習慣を天から考えの中に入れ ていないクチに対して今更そんな形式事を 迫るのは自分の度胸を見透かされるという 上からも辛かっ たその誇りという心持ちも度胸を見透かさ れるという恐れも本当言うと洋子がどこ までもクチに対して秘めになっているのを 語るにすぎないとは洋子自身存分に知り きっているくせにそれを勝手に踏みにって 自分の思う通りをクチにしてのけさす不敵 さを持つことはどうしてもできなかっ
たそれなのに洋子はややともするとクラチ の繊細のことが気になっ たクラチの下宿の方に遊びに行く時でも その近所で人妻らしい人の往来するのを 見かけると洋子の目は知らず知らず熟の ために輝い た1度も顔を合わせないがわずかな時間の 写真の記憶からきっとその人を見分けて 見せると洋子は自信してい た洋子はどこを歩いてもかつてそんな人を 見かけたことはなかったそれがまた妙に 裏切られているような感じを与えることも あった 公海の初期における視点の打ち所のない ような健康の意識はその後陽子にはもう 帰ってこなかっ た換気が募るにつれて下腹部がドツを 覚えるばかりでなく腰の後ろの方に冷たい 石でも吊り下げてあるような重苦しい気分 を感ずるようになっ た日本に帰ってから足の冷え出すのも知っ た 血管の中には血の代わりにとびでも流れて いるのではないかと思うくらい換気に対し て平気だった洋子が床の中でクチに足の ひどく冷えるのを注意されたりすると 不思議に思っ た肩の凝るのは幼少の時からの個室だった がそれが近頃になってことさら激しくなっ た洋子はちょいちょいあんまを呼んだりし た福部の痛みがと関係があるのを気づいて 洋子は婦人病であるにそういないとは思っ たしかしそうでもないと思うようなことが よこの胸の中にはあっ たもしや怪人ではよこは喜びに胸を踊らせ てそう思っても見 たメpresentのようにいく人もこう 産むのはとても耐えられないしかし1人は どうあっても産みたいものだと洋子は祈る ように願っていたのだ 貞子のことから考えると自分には案外幸運 があるのかもしれないとも思っ たしかし前の怪人の経験と今度の兆候とは 色々な点で全く違ったものだっ た1月の末になって木村からは果たして金 を送ってき た洋子はクチが宅に付け届けする金よりも この金を使うことにむしろ心安さを覚えた 洋子はすぐ思い切った散在をしてみたい 誘惑に駆り立てられ たある日当たりのいい日にクチと 差し向かいで酒を飲んでいると太光園の方 からヤイグスの泣く声が聞こえ た洋子は軽く酒ホテリのした顔をあげて クチを見やりながら耳ではウグイスの泣き
続けるのを注意した 春がきますわ早いもんだなどこか行き ましょうかまだ寒いよそうね組み合いの方 はうんあれが片づいたら出かけようわいい 加減くさくさしよっ たそう言ってクラチはさも面倒そうに逆月 の酒を人ありに煽り たよこはすぐその仕事がうまく運んでい ないのを感づい たそれにしてもあの毎月の多額な金はどこ から来るのだろうそうちらっと思いながら 素早く話を他にそらし た 32それは2月初旬のある日の昼頃だっ たからっと晴れた朝の天気に引き換えて 朝日がしばらく向きの窓に刺す間もなく空 は薄に曇って西風がゴゴと杉森にあたって ものすごい音を立て始め たどこにか春をほのめかすような日が来 たりした後なのでこさ世の中が安々と見え た雪でもましかけてきそうに底がするので よこは茶の間に置きごたつを持ち出して クチの着替えをそれにかけたりし た土曜だから妹たちは早だと知りつつも クラチは物ぐさそうに外出の支度にかから ないでドテラを引っかけたままヒバのそば にうまってい た洋子は食器を台所の方に運びながら来 たり行ったりするついでにくちと物を行っ た台所に行った洋子に茶の間から大きな声 でクラチが言いかけ たおいおよクラチはいつの間にかよくを こう呼ぶようになっていた 俺は今日は2人に対面してこれから勝手に 出入りのできるようにする ぞ洋子は付近を持って台所の方からいいと 茶の間に帰ってきたなんだってまた今日 そう言って突きをしながら茶台を拭っ たいつまでもこうしているが気詰まりで しよないからよそう ねよこはそのままそに座り込んでを茶台に 当てがったまま考え た本当はこれは当に洋子の方から言い出す べきことだったの だ妹たちのいない好きか寝てからの暇を 伺ってくちに会うのは初めのうちこそ相聞 のような興味を起こさせないでもないと 思ったのと洋子は自分の通ってきたような 道はどうしても妹たちには通らせたくない ところから自分の裏面を伺が狭いという 心持ちとで今までついずるずるに妹たちを クチに近づかせないでおいたのだったが クチの言葉を聞いてみるとそうしておくの が少し伸びすぎたと気がつい たまた新しい局面を2人の間に開いていく
にもこれは悪いことではない洋子は決心し たじゃあ今日にしましょうそれにしても 着物だけは着替えていてくださいましな よしきたとクチはニコニコしながらすぐ 立ち上がった洋子はクチの後ろから着物を 羽織っておいてはに抱きながら今更に クラチの頑丈な惜しい体格を自分の胸に 感じ つつそれは2人ともいい子よ買がってやっ てくださいましよけれどもね木村とのあの ことだけはまだ内緒よいい檻を見つけて私 から上手に行って聞かせるまでは知らん ふりをしてねよくてあなたはうっかりする と明けに物を行ったりなさるから今度だけ は用人してちょうだい 馬鹿だなどうせ知れることでもそれはい いけません 是非洋子は後ろから背伸びをしてそっと クラチの後ろ首を吸っ たそして2人は顔を見合わせて微笑み かわし たその瞬間に勢いよく玄関のがガラっと 開いておお寒いというさゆの声がかく 聞こえ た時間でもないのでよくは思わずぎょっと してクチから飛び離れたついで玄関口の 生子が開いたさは茶の間に駆け込んでくる らしかっ たお姉様雪が降ってきてよそう言って いきなりキャマの襖を開けたのはさゆだっ たおやそう寒かったでしょとでもって迎え てくれる姉を期待していたらしいさは ごたつに入ってあを描いている途方もなく 大きな男を姉の他に見つけたので驚いた ように大きな目を見張ったがそのまますぐ に玄関に取って返し たあねさんお客様よと声を潰すように言う のが聞こえ たクラチとよこは顔を見合わせてまた 微笑みかわし たここにおげたがあるじゃありませんか そう落ち着いて言う愛子の声が聞こえて やがて2人は静かに入ってきたそして愛子 はしとやかにさはべちゃんと座って声を 揃えてただいまと言いながら辞儀をし た愛子の年頃の時厳格な宗教学校でじに 男の子のような無趣味な服装をさせられた それに復讐するような気で洋子の予想はし た愛子のみはすぐ人の目を引い たお下げを辞めさせて即発にさせたうじと タのところにはその頃アメリカでの流行 そのままに蝶結びの大きな黒いリボンが 止められてい た古代紫のつ地の着物にカミの袴を裾身近 に吐いてその袴は以前洋子が発明した霊の
美上止めになっていた 佐代の神はまた思い切って短くおかっぱに 切り詰めて横の方にシンクのリボンが結ん であったそれがこのさ弾けた道場を膝まで くらいなわざと短く仕立てた袴とともに カレにもいたずらいたずららしく見せ た2人は寒さのために頬を真っ赤にして目 を少し涙がましていたそれがこさ2人に 別々な可憐な趣きを添えていた 洋子は少し改まって2人を火鉢の座から 見やりながらお帰りなさい今日はいつも より早かったのねお部屋に行ってお包を 置いて袴を取っていらっしゃいその上で ゆっくりお話することがある から2人の部屋からは佐代が1人ではじい でる声がしばらくしていたがやがて愛子は 広い帯を普段着と着換えた上に閉めて佐田 は袴を脱いだだけで帰ってき たさここにいらっしゃいそう言って洋子は 妹たちを自分の身近に座らせ たこのお方がいつか総角館で大わしたくち さんなのよ今までも時々いらしたんだ けれどもついにお目にかかる檻がなかった わねこれが愛子これが佐田ですそう言い ながら洋子はクチの方を向くともう くすぐったような顔付きをせずにはいられ なかっ たクチは渋い笑いを笑いながら案外真面目 におはにと言ってちょっと頭を下げ た2人とも美しい ねそう言って佐の顔をちょっと見てから じっと目を愛子に定め た愛子は格別はじる様子もなくその乳なタ な目を大きく見開いてまんじりとたを 見合ってい たそれは男女の区別を知らぬ無邪気な目と も見えた先天的に男というものを知りいて その心を試みようとするイプの目とも見 られないことはなかっ たそれほどその目は機械な無表情の表情を 持ってい た初めておにかかるが愛子さんおいく つクチはなお愛子を見やりながらこう尋ね た私初めてではございませんいやお目に かかりまし た愛子は静かに目を伏せてはっきりと無 表情な声でこう言っ た愛子があの年頃で男の前にはっきりああ 受け答えができるのは洋子にも意外だった 洋子はず愛子を見たはてどこで ねくちもいぶかしげにこう追い返した愛子 は下を向いたまま口をつんでしまっ たそこにはかかながら憎をの影がひらめい て過ぎたようだった洋子はそれを見逃さ なかっ
た寝顔を見せた時にやはりあれは目を 覚ましていたのだなそれを言うのかしらん とも思っ たクチの顔にも思いがけずちょっと どぎまぎたらしい表情が浮かんだのを洋子 は見た なに激しく洋子は自分で自分を打ち消し た佐田は無邪気にもこの熊のような大きな 男が親しみやすい遊び相手と見てとった らしい佐代がその日学校で見聞きしてきた ことなどを例の通り残らず姉に報告しよう と何でも構わず何でも隠さず行ってのける のにクラチが今日に行って相槌をのでここ に移ってきてから客の味を全く忘れていた さは嬉しがってクラチを相手にしようとし たクチは散々さと倒れて昼近く立っていっ た洋子は朝食が遅かったからと言って妹 たちだけが昼食の前につい たクチさんは今ある会社をお立てになるの で色々ご相談事があるのだけれども宿では 周りがて困るとおっしゃるからこれから いつでもここでご用なさるように言った からきっとこれからもちょくちょく いらっしゃるだろうがさちゃん今日のよう に遊びのお相手にばかりしていてはだめよ その代わり英語なんぞで分からないことが あったらなんでもお聞きするといい 姉ちゃんより色々のことをよく知って いらっしゃるからそれからあさんはこれ からクラチさんのお客様も見えるだろう からそんな時にはいちいちさんの指を待た ないでききお世話をあげるのよと洋子は あらかじめ2人に釘をさし た妹たちが食事を終わって2人で後始末を しているとまた玄関の行子が静かに開く音 がした里は洋子のところに飛んできた お姉様またお客様よ今日は随分たくさん いらっしゃるわね誰でしょうと物珍しそう に玄関の方に注意の耳をそだてた洋子も誰 だろうといかっ たややしばらくして静かに案内を求める男 の声がしたそれを聞くと佐代は姉から離れ て駆け出していった愛子がたきを外し ながら台所から出てきた自分には佐田は もう1枚の名刺を持って洋子のとろに取っ て返してい た金淵のついた高華らしい名刺の表には丘 はめと記してあった まあ 珍し洋子は思わず声を立てて佐代と共に 玄関に走り出 たそこには乙女のように美しく小柄な丘が 雪のかかった傘をつぼめて街灯の下りを紅 にをさしたようにあんだ指の先で弾き ながら女のようにはにかんで立ってい
たいいところでしょうおいでには少しお 寒かったかもしれないけれどもも今日は 本当にいい折りからでしたわ隣に見えるの が有名な太公園あそこの森の中が紅葉感 この杉の森が私大好きですの今日は雪が ツモってなおさら綺麗です わ洋子は丘を2階に案内してそこのガラス の越しにあちこちの雪景色を誇りがにしし て見せ た岡は言葉ずくなながら近と眩しい印象を 目に残して 振り下ろすする山内の子だちの姿を参照し たそれにしてもどうしてあなたはここを クチから手紙でも行きました か岡は神秘的に微笑んで洋子を帰り見 ながらいいえと言ったそりゃおかしいこと それではどうし て縁側から座敷へ戻りながらむにお知らせ がないもので上がってはきっといけないと 思いましたけれどもこんな雪の日ならお客 もなかろうからひょっとかすると会って くださるかとも思っ てそういう言い出しで岡が語るところに よれば岡のいこに当たる人が遊覧所学校に 通学していて正月の楽器からさきという 姉妹の美しい生徒が来てそれは芝3内の坂 に美人屋敷と言って界隈で有名家の3人 姉妹の中の2人であるということや1番の 姉に当たる人が法制神法で噂を立てられた 優れた美貌の持ち主だということやが早く も口下がない生徒感の評判になっているの を何かの折りに話したのですぐ思い当たっ たけれども1日1日と訪問を躊躇していた のだとのことだっ た洋子は今更に世間の案外に狭いのを思っ た愛子と言わず定の上にも自分の業績が どんな影響を与えるかも考えずにはいられ なかっ たそこに佐代が愛子が整えたチキを 危なっかしい手つきで目端部に持ってき た佐田はこの日寂しい家のうちにいく人も 客を迎える物珍しさに右頂点になっていた ようだっ た満面に偽りのない愛嬌を見せながら丁寧 にぺっちゃんとお辞儀をしたそして顔に 垂れかかる黒髪をフり青いで頭を振って 後ろにさきながら丘を無邪気に見合って姉 の方に寄り添うと大きな声でどなたと聞い た一緒にお引き合わせしますからねあさん にもおいでなさいと言っ てらっしゃい2人だけが座に落ち着くと岡 は涙ぐましいよな顔をしてじっと手ありの 中を見込んでい たの思いなしかその顔にも少しやれが 見えるようだっ
た普通の男ならば多分さほどにも思わない に違いない家の中のイ草などに繊細すぎる 神経を悩ましてそれにつけても洋子のイブ をこさに憧れていたらしい様子はそんな ことについては一言も言わないが丘の顔に ははっきりと描かれているようだっ たそんなにせいたっていやよさーちゃんは せっかちな人ねそう穏やかに嗜めるらしい あこの声がかかでし たでもそんなにおしゃれしなくたっていい わお姉様が早くっておっしゃってよ無遠慮 にこういうさだの声もはっきり聞こえた 洋子は微笑みながら岡を温かく見合った岡 もさすがに笑いを宿した顔をあげたがよこ と見すと急に頬をポっと赤くして目を生子 の方にそらしてしまっ た手ありの縁に置かれた手の先がかかに 振るうのを洋子は見逃さなかっ たやがて妹たち2人が洋子の後ろに現れた よこは座ったまま手を後ろに回してそんな 人のお尻のところに座ってもっとこっちに おいでなさいなこれが妹たちですのどうか お友達にしてくださいまし お船でご一緒だった岡はじめ様愛子さん あなたお尻申していないのあの失礼ですが 何とおっしゃいますのおい号さんのお名前 はと岡に尋ね た岡は言葉通りに神経を転倒させていた それはこの青年を非常に見にくくかつ 美しくしてみせた急いで座り直したいまを すぐ意味もなく崩してそれををまた非常に 後悔したらしい顔付きを見せたりした ああの私どもの噂をなさったそのお嬢様の お名前 はあのやはり岡と言いますおさんならお顔 は存じ上げておりますわ1つ上の急に いらっしゃい ます愛子は少しも騒がずにくちに対した時 と同じ調子でじっと丘を見やりながら即座 にこう答えた その目は相変わらず陰notと見えるほど 極端に純血だった純血と見えるほど極端に 引頭だった岡はおじながらもその目から 自分の目をそらすことができないように まともに愛子を見てみるみる耳たぶまで 真っ赤にしてい た洋子はそれをけると愛子に対して一段の 憎しみを感ぜずにはいられなかっ たクラッチさんは 岡は一路の逃げ道をようやく求め出した ように洋子に目を転じ たくちさんたった今お帰りになったばかり 美しいことしましてねでもあなたこれから はちょくちょくいらしてくださいますわね くちさんもすぐお近所にお住まいですから
いつかご一緒にご飯でもいただきましょう 私日本に帰ってからこの家にお客様をお あげするのは今日が初めてですのよねさー ちゃん 本当によく来てくださいましたこと私党 から来ていただきたくてしようがなかった んですけれどもクラチさんからなんとか 言ってあげてくださるだろうとそればかり を待っていたのですよ私からお手紙を あげるのはいけませんものそこでよくは 分かってくださるでしょうというような 優しい目つきを強い表情を添えておに送っ た木村からの手紙であなたのことは詳しく 伺いましたわ色々お苦しいことが終わりに なるんですって ね岡はその頃になってようやく自分を回復 したようだったシドもろになった考えや 言葉もやや整って見え た愛子は一度しげしげと丘を見てしまって からは決して2度とはその方を向かずに目 を畳の上に伏せてじっと千里も離れたこと でも考えている様子だった 私の育児のないのが何よりもいけないん です親類の者たちは何と言っても私を実業 の方面に入れて父の事業を継がせようと するんですそれは多分本当にいいことなん でしょうけれども私にはどうしてもそう いうことが分からないから困ります少しで も分かればどうせこんなに良心で何もでき ませんから母初めみんなの言うことを聞き たいんですけれども 私は時々乞食にでもなってしまいたいよう な気がし ますみんなの主人思いな目で見詰められて いると私はみんなに済まなくなってなぜ 自分みたいなクズな人間を惜しんでいて くれるのだろうとよくそう思いますこんな こと今まで誰にも言いはしませんけれども 突然日本に帰ってきたり謎してから私は 内々監視までされるようになりました私の よなうちに生まれると友達というものは 1人もできませんしみんなとは表面だけで 物を言っていなければならないんですから 心が寂しくて仕方がありませ んそう言って岡はすがるように洋子を 見合った丘が少し震えを帯びた汚れ気の 散りほどもない声の調子を落として しんみりと物を言う様子にはおからな 気高い寂しがあっ た時をきしませながら雪を吹きまく古の 荒々しい自然の姿に比べてはことさらそれ が目立っ た洋子には丘のような消極的な心持ちは 少しも分からなかっ たしかしあれで言ってアメリカ組んだり
から乗っていった船で帰ってくるところ なぞには粘り強い威力が潜んでいるように も思え た平凡な青年ならできてもできなくともの もにお立てあげられれば疑いもせずに父の 異業を継ぐ真似をして喜んでいるだろう それがどうしてもできないというところに もどこか違ったところがあるのではない か洋子はそう思うと何の理解もなくこの 青年を取り巻いてただわいわい騒ぎ立てて いる人たちがバカバカしくも見え たそれにしてもなぜもっとハキハキと そんなくだらない障害ぐらい打ち破って しまわないのだろう 自分ならその財産を使ってからこうすれば いいのかいとでも言って周りで世話を焼い た人間たちを胸のすき切るまで重い存分 笑ってやるのにそう思うと丘の煮えきら ないような態度がはくもあっ たしかしなんと言っても抱きしめたいほど 可憐なのは丘の千美な寂しそうな姿だっ た岡は上手に入れられた甘露をすすり 終わった茶碗を手の先に据えて綿密にその 作りを障がしてい た覚えになるようなものじゃございません こと よ岡は悪いことでもしたように顔を赤くし てそれを下に置いた彼はいい加減な世辞は 言えないらしかっ た岡は初めて来た家に長いするのは失礼だ と来た時から思っていて機械あるごとに座 を立とうとするらしかったが 洋子はそういう丘の遠慮に感づけば感づく ほど匠にも全ての機械を丘に与えなかっ たもう少しお待ちになると雪がこぶりに なりますわ今こないだインドから来た紅茶 を入れてみますから召し上がってみて ちょうだい普段いいものを召し上がりけて いらっしゃるんだから鑑定をしていただき ますわちょっとほんのちょっと待って いらしてちょうだいよそういう風に言って 丘を引き止めた 初めの間こそクラチに対してのようには 懐かなかったさだもだんだんと丘と口を 聞くようになってしまには岡の穏やかな問 に対して思いのままを可愛らしく語って 聞かせたり話題に休してオが黙ってしまう と佐代の方から無邪気なことを聞きたして 岡を微笑ましたりし たなんと言っても岡は美しい3人の姉妹が そのうち愛子だけはは他の2人とは全く 違った態度で心を込めて親しんでくるその 行為には適しかねて見えた盛に火を起こし た温かい部屋の中の空気にこもる若い女 たちの髪からとも懐からとも肌からとも
知れぬ柔軟な香りだけでも去りがたい思い をさせたに違いなかっ たいつの間にか岡はすっかり腰を落ち着け て言いよなく心よく胸の中のりを一掃した ように見え たそれからというもの岡は美人屋敷と噂さ れる洋子の隠れがにおりおり出入りする ようになっ たクチとも顔を合わせて互いに心よく船の 中での思い出しなどをし た丘の目の上には洋子の目が入れ目されて いたよのよしと見るものは岡もよしと見た よの憎むももはも無条件で憎くん だただ1つその例外となっているのは愛子 というものらしかっ たもちろんよことて性格的にはどうしても 愛子と入れ合わなかったが骨肉の情として やはり互いに言いよのない執着を感じ合っ ていたしかし王は愛子に対しては心からの 愛着を持ち出すようになっていることが 知れ たとにかく の加わったことが美人屋敷の彩りを多様に し た3人の姉妹は時折りクチ丘に伴われて 太公園の表もの方から三の通りなどに散歩 に出た人々はそのきらびやかな群れに 物好きな目を輝かし た 33丘に住所を知らせてからからすぐそれ が古藤に通じたと見えて2月に入ってから の木村の消息はクチの手を経ずに直接洋子 に当てて古藤から改装されるようになっ た古藤はしかし頑固にもその中に一言も 自分の消息を封じ込めでよすようなことは しなかっ た古藤を近づかせることは一面木村と子と の関係を断絶さす機会を早めるがないでも なかったがあの古藤の単純な心をうまく 操りさえすれば古藤を自分の方に名付けて しまい従って木村に不安を起こさせない 方便になると思っ た洋子は霊のいたずら心から古藤を 手なずける興味をそられないでもなかった しかしそれを実行に移すまでにその興味は 講じてはこなかったのでそのままにして おい た木村の仕事は思いの他都合よく運んで いくらしかっ た日本における未来のピボデという表題に 木村の肖像まで入れてハミルトン氏配下の 敏腕家の1人としてまた品性の高潔な高 強心の熱い高古の青年実業家としてやがて は日本においてアメリカにおけるピーボデ と同様の明星をかうべき約束にあるものと
賛したシカゴトリビューンの青年実業化 評判機の切り抜きなどを封入してき た思いの他巨額の為替をちょいちょい送っ てよこしてクラチ氏に支払うべき金額の 全体を知らせてくれたらどう面しても必ず 送付するから1日も早くクチ氏の保護から 独立して世評のごBを実効的に訂正し 合わせて自分に対する要子の心情を証明し てほしいなどと言ってよこした 洋子はクラチに溺れ切っている洋子は鼻の 先でせせら笑っ たそれに反してクチの仕事の方はいつまで も目鼻がつかないらしかっ たクラチの言うところによれば日本だけの 水先案内業者の組み合いと言っても東洋の 初行や西武アメリカの沿岸にあるそれらの 組み合いとも交渉をつけて連絡を取る必要 がのに日本の移民問題がアメリカの西部集 でやかましくなり日熱が角に扇動され出し たので何事もアメリカ人との交渉は思う ように行かずにその点で生き悩んでいると のことだっ たそういえばアメリカ人らしい外国人が しばしばクチの下宿に出入りするのを洋子 は気がついてい たある時はそれが師官の会員ででもあるか と思うような想をして見事な馬に紳士で あることもありある時はズボの折り目も つけないほどだらしのない風をした人の 良くない男でもあっ たとにかく2月に入ってからクラチの様子 が少しずつ凄んできたらしいのが目立つ ようになっ た酒の量も著しく増してきた魔が噛みつく ように怒鳴られていることもあったしかし よに対してはクラチは前にもまさって出合 のを加えあらゆる愛情の証拠を掴むまでは 必要に洋子を敷いたげるようになっ た洋子は目もくらむ日を煽りようにその したを喜んで迎え たある夜洋子は妹たちが就寝してからクチ の下宿を訪れ たクチはたった1人で寂しそうにソーダー ビスケットを魚にウイスキーを飲んでいた 茶台の周囲には書類や公案の地図やが乱暴 に散らてあって台の上の殻のコップから 察すると正か誰か今客が帰ったところ らしかっ た襖を開けてよこの入ってきたのを見ると クラチはいつもになくちょっと険しい 目つきをして書類に目をやったがそこに あるものをエビを伸ばして引き寄せて せわしく一まとめにしてとに移すと自分の 隣に布団を敷いてそれに座れと顎を 突き出して合図したそして激しく手を
鳴らしたコップと炭酸水を持って こい洋を聞きに来た女中にこう言いつけて おいて激しく洋子をまとに見 たよ ちゃんこれはその頃クラチが洋子を呼ぶ 名前だった妹たちの前でよこと呼び捨てに でもできないのでクラチはしばらくの間お よさんおよさんと呼んでいたがよこがサを さーちゃんと呼ぶのから思いついたと見え て3人をよちゃんあいちゃんさーちゃんと 呼ぶようになったそして差し向かいの時に も洋子をそう呼ぶのだっ たよ ちゃん木村に貢がれてるな白女し ちまえそれがどうし てよはのを茶台についてその指先で瓶の ほれをかき上げながら平気な顔で正面から クチを見返し たどうしてがあるか俺は赤の他人に俺の女 をやすほどふけではないん だまあ木の 小さい洋子はなおも同じなかったそこに女 が入ってきたので話の腰がおられた2人は しばらく黙っていた 俺はこれから竹芝行くなあ 行こうだって明朝困りますわ私が留守だと 妹たちが学校に行けないもの一筆書いて 学校なんざ休んでルスをしろと言って やれ洋子はもちろんちょっとそんなことを 言ってみただけだった妹たちの学校に行っ た後でも大公園のばあさんに言葉をかけて おいて家を開けることは常支だっ たことにその世は木村のことについて クラチに打点させておくのが必要だと思っ たので言い出された時から一緒する下心で はあったの だ洋子は底にあったペンを取り上げて 紙切れに走り書きをし たクチが急病になったので解放のために 今夜はここで止まる明日の朝学校の時刻 までに帰ってこなかったら戸締まりをして 出かけていいそういう意味を書い たその間にクチは手早く着替えをして書類 を大きな中場に突っ込んで上を下ろして から綿密に開くか開かないかを調べた そして考え込むように俯いて上目をし ながら両手を懐に差し込んで鍵を腹帯 らしいところにしまい込ん だ9時過ぎ10時近くなってから2人は 連れ立って宿を出た増々寺前に来てから車 を雇っ た満月に近い月がもうだいぶ寒空高く高校 とかかってい た2人を迎えた竹芝間の女中はクチをえて いてすぐ庭先に離れになっている二間
ばかりの一件に案内し た風はないけれども月の白さでひどく 冷え込んだような番だっ 洋子は足の先が氷で包まれたほど感覚を 失っているのを覚え たクラチの欲した後で厚めな潮にゆっくり つったのでようやく人心地がついて戻って きた時には素早い女中の働きで思考が整え られてい た洋子がクチと遠らしいことをしたのは これが初めてなので旅先にいるような気分 が2人を妙に親しみ合わせ たましてや座敷に続く芝生の外れの石垣に は海の波が来て静かに音を立ててい た空には月が冴えてい た妹たちに取り巻くれたり下宿人の目を 兼ねたりしていなければならなかった2人 はくつろいだ姿と心とで火鉢に寄り添っ た世の中は2人きりのようだっ たいつの間にかが夫とばかりクラチを考え 慣れてしまった洋子はここに再び常人を 見出したように思っ たそしてなんとはなくクラチを焦らして 焦らして焦らし抜いた挙げ句にその反動 から来る蜜のような看護を思いっきり 味わいたい衝動に狩られていたそしてそれ がまたクチの要求でもあることを本能的に 感じてい たいいはねなぜもっと早くこんなところに 来なかったでしょうすっかり苦労も何も 忘れてしまいました わ洋子はすべすべとほてって少しこるよう な方を撫でながらとろけるようにクチを見 たもうだいぶ酒の毛の回ったクチは女の 肉感をそり立てるような匂いを部屋中に 撒き散らす葉巻きをふかしながらよくを しりめにかけ た それは 結構なか俺にはさっきの話が喉に使えて 残っとるて胸くそが悪い ぞ洋子は呆れたようにクラチを見た木村の ことお前は俺の金を心ませに使う気には なれないん か足りませんもの足りなきゃなぜ言わん 言わなくったって木村がよすんだからいい じゃありませんか バカクチは右の肩を小山のように そびやかすて状態を車に構えながらよこを 睨みつけ た洋子はその目の前で海から出る夏の月の ように頬宴で見せ た木村はよちゃんに惚れとるんだ よそしてよちゃんは嫌ってるんですわ ね冗談は置いてくれ俺は真剣で言っとるん
だ俺たちは木村に用はないはずだ俺は用の ないものは片っ端から捨てるのが建前だ カカだろうが子だろうが見ろ俺をよく見ろ お前はまだこの俺を疑っとるんだな後釜に は木村をいつでも直せるように食いのしを しとるんだ なそんなことはありません わではなんで手紙の槍となどしるん だお金が欲しいからな の洋子は平気な顔をしてまた話を後に戻し たそして独SHOWで逆月を傾け たクラチは少しどるほど怒りが募ってい たそれが悪いと言っとるのが分からないか 俺のつに泥を塗りこくっとるこっちに 来いそう言いながらクチは洋子の手を取っ て自分の膝の上に洋子の状態を託しこん だいえ隠さずに今になって木村に未練が出 てきよったんだろうほというはそうした もんだ木村に行きたくば行け今行け俺の ようなヤザをかまっとると目は出やせん からお前にはふて腐れが一致よく似合っ とるよただし俺を騙しにかかると検討違だ ぞそう言いながらクチは洋子を突き放す ようにし た洋子はそれでも少しも平成を失っては いかなかったあやかに微笑みながらあなた もあんまりわからないと言いながら今度は 洋子の方からクチの膝に後ろ向きにもたれ かかっ たクラチはそれを避けようとはしなかっ た 何がわからんか いしばらくしてからクチは洋子の肩越しに 逆月を取り上げながらこう尋ねた洋子には 返事がなかっ たまたしばらくの沈黙の時間が過ぎ たクチがもう一度何か言おうとした時洋子 はいつの間にかシクシクと泣いてい たクラチはこの冬打ちに思わず発とした ようだった なぜ木村から送らせるのが悪いん です洋子は涙を気取らせまいとするように しかし打ち沈んだ調子でこう言い出し たあなたのご様子でお心持ちが読めない私 だと思いになっ て私上に会社をお引きになってからどれ ほど暮らし向きに苦しんでいらっしゃるか そのくらいは馬鹿でも私にはちゃんと響い てい ますそれでもしみったれたことをするのは あなたもお嫌い私も嫌い私は思うようにお 金を使ってはいましたいましたけれども心 では泣いてたん ですあなたのためならどんなことでも喜ん でしようそうこの頃思ったんですそれから
木村にとうと手紙を書きまし た私が木村を何と思ってるか今更そんな ことをお互いになるのあなたはそんな 水臭い回しをなさるからつい悔しくなっ ちまいますそんな私だか私ではない かそこで洋子はクラチから離れてきちんと 座り直して多元で顔を覆てしまっ た泥棒しろとおっしゃる方がまだましです あなたを1人でくよくよなさってお金の 出所を暮らし向きが張りすぎるなら張り すぎるとなぜ相談に乗らせてはくださら ないのやはりあなたは私を真味には思って いらっしゃらないの ねクチは一度は目を張って驚いたようだっ たがやがて子供投げに笑い出し たそんなことを思っとったのか馬鹿だな お前はご行為は感謝します全くしかし なんぼ痩せても枯れても俺は女の子の2人 や3人養うにことはかかんよ月に300や 400の金が手回んようなら首をくって 死んでみせるお前をまで相談に乗せるよう なことはいらんのだよそんな影に回った 心配事はせんことにしょうやこの呑気望の 俺までがいらん気も揉ませられる でそりゃ嘘 です洋子は顔を覆たままきっぱりとやぎに 言い放った クラチは黙ってしまっ た洋子もそのまましばらくは何とも言い 入れなかっ た小屋の方で12を打つ柱時計の声がかか に聞こえてき た寒さも津々と募っていたにはそうい なかっ たしかし洋子はそのいずれをも心の戸の中 までは感じなかっ ためはのたみから表現でもするような気で かかったのだったけれどもこうなると洋子 はいつの間にか自分で自分の上に溺れて しまってい た木村を犠牲にしてまでもクチに溺れこん でいく自分が哀れまれもしたクチが費用の 出所を追打ち明けて相談してくれないのが 恨みがわしくも思われ た知らず知らずのうちにどれほど洋子は クラチに食い込みクチに食い込まれていた かをしみじみと今更に思い知っ たどうなろうとどうあろうとクラチから 離れることはもうできないクチから離れる くらいなら自分はきっと死んで みせるクラチの胸に歯を立ててその心臓を 噛み合ってしまいたいような凶暴な執念が よくをそこしれぬ悲しみへいいこん だ 心の不思議な作用としてクラチも洋子の
心持ちは入れ済みをされるように自分の胸 に感じていくらしかっ たややほたってからクチは無感情のような 鈍い声で言い出し た全くは俺が悪かったのかもしれ ない一時は全く金には弱りこんだしかし俺 ははや世の中の底に潜り込んだ人間だと 思うと同居が座ってしまいおっ たども皿も食らってくれようそう思っ てクチは辺りをはかるようにさらに声を 落とし たやりだした仕事があの組み合いのこと よ水案内の奴らは詳しい改を自分で作って 持っ とるの様子も苦以上ださそれを集めに かかってみ た思うようにはいかんが食うだけの金は 余るほど 出る洋子は思わずぎょっととして息が 詰まった近頃怪しげな外国人がクラチの とろに出入りするのも心当たりになっ たクラチは洋子がクチの言葉を理解して 驚いた様子を見るとほとほと悪魔のような 顔をしてにやりと笑っ た捨てはちな不敵さと力とがみって見え た廃が尽きた か灰が尽き た洋子は自分自身に愛がつきようとしてい た洋子は自分の乗った船はいつでも愛着諸 とに転覆して沈んでそしれぬデドの中に ふぶかと潜り込んでいくことを知っ たバ黒土 国賊あるいはそういう名がクチの名に加え られるかもしれないと思っただけで洋子は おけを振ってクラチから飛びのこうとする 衝動を感じたぎょっとした瞬間にただ瞬間 だけ感じ た次にどうかしてそんな恐ろしい羽から クラチを救い出さなければならないという 主な心もなっ たしかし最後に落ち着いたのはその深みに クラチをこさ突き落としてみたい悪魔的な 誘惑だっっ たそれほどまでの洋子に対するクチの 心づくしを臆病な驚きと躊躇とで迎える ことによってクラチに自分の心持ちの不 徹底なのを見下げられはしないかという 器具よりもクチが自分のためにどれほどの 堕落でも辱でもじておかすかそれをさせて みて満足しても満足しても満足しきらない 自分の心の不足を満たしたかったそこまで クラチを突き落とすことはそれだけ2人の 執着を強めることだとも思っ た洋子は何事を犠牲に強しても灼熱した 2人の間の執着を続けるばかりでなく
さらに強める術を見出そうとし たクラチの告白を聞いて驚いた次の瞬間に は洋子は意識こそせねこれだけの心持ちに 働かれてい たそんなことで愛そが尽きてたまるものか と鼻であうような心持ちに素早くも自分を 落ち着けてしまっ た驚きの表情はすぐ洋子の顔から消えて 洋夫にのみ見る極端に肉的な怖の微傷が それに変わって浮かび出し たちょと驚かされはしました わいいわ私だって何でもします わクラチは洋子が言わず語らずのうちに 感激しているのを監督してい たよしそれで話は分かっ た 木村木村からも絞りあげろ構うものかい 人間並みに見られない俺たちが人間並に 振ってでたまるかいよ ちゃん 命 命命 命洋子は自分の激しい言葉に目もくるめく ような酔いを覚えながらあらん限りの力を 込めてクラチを引き寄せ た前の上のものが音を立てて覆えるのを 聞いたようだったがその後は色も音もない 炎の天地だっ た凄まじく焼けただれた肉の翌年が洋子の 心を全くくらましてしまっ た天国か地獄かそれは知ら ないしかも何もかも美人に突きたいて ビリビリと振動する延々たる炎に燃やし あげたこの右朝点の陥落の他に世に何者が あろう洋子はクチを引き寄せ クチにおいて今まで自分から離れていた 洋子自身を引き寄せたそして切るような 痛みと痛みからのみくる機械な快感と自分 自身に感じて当然と酔いしれながらクチの 二の腕に歯を立てて思いきり弾力性に飛ん だ熱したその肉を噛ん だその翌日11時過ぎに洋子は地の底から 掘り起こされたように地球の上に目を開い たクラチはまだ死んだもの同然にいたなく 眠ってい た戸の杉の赤みが鰹節の芯のように半透明 に真っ赤に光っているので日が高いのも 天気が美しく晴れているのもさせられ た甘酸っぱく立ちこめとタバコの欲の中に 突きまる光線が透明に輝くアメ色の板と なって縦に薄暗さの中を区切ってい たいつもならば真っ赤に住血して勢力に 満ち満ちて眠りながら働いてるように 見えるクチもその朝は目の周囲に試食を さえさしてい
たむき出しにした腕には青筋が病的に思わ れるほど高く飛び出て生っていた 泳ぎ回るものでもいるように頭の中が グラグラする洋子には殺人者が教皇から 目覚めていった時のようなそこの知れない 気味悪さが感ぜられ た洋子は密やかにその部屋を抜け出して 古いに出 た降るような真昼の光線に会うと両目は頭 の芯の方にシニに引き付けられてたまら ない痛さを感じた 乾いた空気は息を止めるほど喉をばし た洋子は思わずよけて入り口の下見に 寄りかかって打木を避けるように両手で顔 を隠して俯いてしまっ たやがて洋子は人を避けながら芝生の先の 海際に出てみ た満月に近い頃のこととて塩は遠く引いて いた 足の枯派が日を浴びて立つ素女地のような 兵が目の前に広がってい たしかし自然は少しも昔の姿を変えてはい なかっ た自然も人も昨日のままの営みをしてい た洋子は不思議なものを見せつけられた ように呆然として塩ひの泥を見鱗雲で飾ら れた青空を仰い だ夕べのことが真実ならこの景色は夢で あらねばなら ぬこの景色が真実なら夕べのことは夢で あらねばなら ぬ2つが両立しようはずは ない洋子は呆然としてなお目に入ってくる ものを眺め続け た麻痺しきったような洋子の感覚は だんだん回復してきた それととに目まいを感ずるほどの頭痛を まず覚えたついで紅葉部にどじな痛みが むくむくと頭をもたげるのを覚え た肩は石のように凝っていた足は氷のよう に冷えてい た夕べのことは夢ではなかったの だそして今見るこの景色も夢ではありえ ない それはあまりに残酷だ残酷 だなぜ夕べを境にして世の中はカルタを 裏返したように変わっていてはくれなかっ たの だこの景色のどこに自分は身を置くことが できよう洋子は痛切に自分が落ち込んで いった信淵の深を知ったそしてそこに しゃがんでしまって苦いを泣き始め た残気の門の固く閉ざされた暗い道がただ 一筋洋子の心の目には行手に見あられる ばかりだっ
た 34ともかくも一家のアジとなり妹たちを 呼び迎えてその教育に興味と責任と持ち 始めたようは自然自然に妻らしくまた母 らしい本能に立ち返ってクチに対する常念 にもどこか肉から精神に移ろうとする傾き ができてくるのを感じ たそれは楽しい無事とも考えれば考えられ ぬことはなかっ たしかし洋子は明らかにクチの心がそう いう状態の元には少しずつわっていき冷え ていくのを感ぜずにはいられなかったそれ が洋子には何よりも不満だっ たクラチを選んだ洋子であってみれば日が 立つに従って洋子にもクラチが感じ始めた と同様な物たらなさが感ぜられていっ た落ち着くのか冷えるのかとにかくクラチ の感情が白熱して働かないのを見せつけ られる瞬間は深い寂しを誘い起こし たこんなことで自分の前をを投げ入れた恋 の花を散ってしまわせてなるものか自分の 恋には絶頂があってはならない自分には まだどんな何のでも舞い狂いながら登って いく熱と力とがあるその熱と力とが続く 限りぼんやり腰を据えて周囲の平凡な景色 などを眺めて満足してはいられ ない自分の目には絶てのない絶てばかりが 見えてい たいそうした衝動はみなくよの胸にわ かまってい たエジ丸の選出でクラチが見せてくれた ような何もかも無視した神のように凶暴な 熱心それを繰り返していきたかっ た竹芝間の一夜はまさしくそれだっ たそのよ洋子は次の朝になって自分が死ん で見出されようとも満足だと思った しかし次の朝生きたままで目を開くとその 場で死ぬ心持ちにはもうなれなかっ たもっと講じた陥落を追い試みようという 翌年そしてそれができそうな期待がよこを 未練にし たそれからというもの洋子は某が混沌の 換気に浸るためには全てを犠牲としても 惜しまない心になってい たそしてクチと洋子は を楽しませそして引き寄せるためにあらん 限りの手段を試み た洋子は自分の不可本性女が男に対して 持つ1番強大な戸惑物の全てまで惜しみ なく投げ出して自分をクチの目に勝負以下 のものに見せるとも食いようとはしなく なっ た2人は脇目には賛否だとさえ思わせる ような欲の腐敗の末遠く互いに引落の身を 互互いから奪い合いながらずるずると崩れ
こんでいくのだっ たしかしクラチは知らず洋子にとっては このいわし腐敗の中にも一るの期待が潜ん でい た1度ぎゅっと掴み得たらもう動かない あるものがその中に横たわっているに違い ないそういう期をの隅から拭い去ることが できなかったのだっ たそれはクラチが洋子の怖に全く迷わされ てしまって再び自分を回復し得ない時期が あるだろうというそれだっ た恋を仕掛けたものの引け目として洋子は 今まで自分がクラチを愛するほどクチが 自分を愛してはいないとばかり思ったそれ がいつでもよこの心を不安にし自分という もののいりどこまでぐらつかせ たどうかしてクチを地方のようにして しまい たい洋子はそれがためにはある限りの手段 をとって食いなかったの だ祭祀を利益させても社会的にしして しまってもまだまだ物たらなかっ た竹芝間の夜に洋子はクラチを極印つきの 表情持ちにまでしたことを知った 外界から切り離されるだけそれだけクラチ が自分の手に落ちるように思っていた洋子 はそれを知って右朝点になったそしてクチ が忍ばねばならぬ屈辱を埋め合わせるため に洋子はクチが発すると思わし激しい強欲 を提供しようとしたの だそしてそうすることによってよこ自身が 結局事故をしてクラチの興味から離れ つつあることには気づかなかったの だ都にも各にも2人の関係は竹芝間の一夜 から面木を改め た洋子は再び妻から情熱の若し常人になっ て見え たそういう心の変化が洋子の肉体に及ぼす 変化は驚くばかりだっ た洋子は急に3つも4つも若いだ 26の春を迎えた洋子はその頃の女として はそろそろ追いの兆候をも見せるはずなの に洋子は1つだけ年を若く取ったようだっ たある天気のいい 午後それは梅のつぼみがもう少しずつ 膨らみかかった午後のことだったが洋子が 縁側にクチの肩に手をかけて立ち並び ながらうっとりと蒸気しての交わるのを見 ていた時玄関に訪れた人の気配がし た誰 でしょうクラチは物うさそうに王だろうと 言ったいいえきっと正さんよなに岡だじゃ かけよ洋子はまるで少女のように余ったれ た口調で行って玄関に出てみたクチが言っ たようにだっ
たは挨拶もろくろしないでいきなり岡の手 をしっかりと取ったそして小さな声でよく いらしてねその愛木のよくお似合いになる こと春らしいいい色字ですわ今クチと賭け をしていたところ早くお上がり遊ば せ洋子はクチにしていたように丘の朝方に 手を回して並びながら座敷に入ってき たやはりあなたの勝ちよ あなたは当事がお上手だからおさんを譲っ てあげたらうまく当たったわ今ご褒美 あげるからそこで見てらっしゃい よそうクチに言うかと思うといきなり丘を 抱きしめてその方に強い切粉を与え た岡は少女のようにはらってしいて洋子 から離れようともがい たクラチは霊の渋いように口元をねじって 微笑み ながらバカこの頃この女は少しどうかし とりますよ花さんあなた1つ背中でも どやしてやって くださいまだ勉強かと言いながら洋子に 天井をさしてみせた洋子は丘に背中を向け てさあどやしてちょうだいと言いながら 今度は天井を向いてあいさんさーちゃん おかさんがいらしてよお勉強が済んだら 早く降りておいでと住んだ美しい声で はすっぱに叫んだ そうという声がしてすぐ佐が飛んで降りて き たさーちゃんは今勉強が住んだのかとくち が聞くと佐田よは平気な顔でええ今住んで よと言ったそこにはすぐ華やかな笑いが 破裂し た愛子はなかなか下に降りてこようとはし なかっ たそれでも3人は親しく茶台を囲んで茶を 飲んだその日は特別に何か言い出したそう にしている様子だったが やがて今日は私少しお願いがあるんですが 皆様は聞いてくださるでしょう か重苦しく言い出したへえあなたの おっしゃることなら何でもねさーちゃんと ここまでは冗談らしく言ったが急に真面目 になって何でもおっしゃってくださいまし なそんな他人行儀をしてくださると変です わと洋子が たくちさんもいてくださるので帰っていい よいと思いますが古藤さんをここにお連れ しちゃいけないでしょうか木村さんから 古藤さんのことは前から伺っていたんです が私は初めてのお方にお会いするのがなん だかくな立ちなもので2つ前の日曜日まで とうとお手紙もあげないでいたらその日 突然古藤さんの方から尋ねてきてくださっ たんです古藤さんも1度お尋ねしなければ
いけないんだがと言っていなさいましたで 私今日は水曜日だから用弁外出の日だから これから迎えに行ってきたいと思うんです 行けないでしょう か洋子はクラチだけに顔が見えるように 向き直って自分に任せろという目つきをし ながらいいわねと念をしたクラチは秘密を 伝える人のように顔色だけでよしと答え た洋子はくるりとの方に向き直っ たようございますとも洋子はそのように アクセントをつけ たあなたにお迎えに行っていただいては 本当にすみませんけれどもそうして くださると本当に結構さーちゃんもいい でしょまたもう1人お友達が増えてしかも 珍しい兵隊さんのお 友達あ姉さんがおさんに連れてらっしゃ いってこないだそう言ったのよ と佐田は遠慮なく言っ たそうそうあこさんもそうおっしゃって でしたねと岡はどこまでも上品で丁寧な 言葉でこのついでのように言っ た岡が家を出るとしばらくしてくちもざっ たいいでしょうまくやってみせるわ帰って 出入りさせる方がいい わ玄関に送り出して宗洋子は言っ たどうかなあいつ古藤のやつは少し骨張り すぎてるが悪かったら元々だとにかく今日 俺のいない方が よかろうそう言ってクチは出ていっ た洋子は張り出しになっている6畳の部屋 を綺麗に片付けて火鉢の中に甲を炊き込み て心静かに目論みをめぐらしながら古藤の 来るのを待っ たしばらく会わないうちに古藤はだいぶ 手強くなっているようにも思えたそこを 自分の再力で丸めるのが時にとっての興味 のようにも思え たもし古藤を難化すれば木村との関係は今 よりもつなぎが良く なる30分ほど経った頃一次の平から古藤 は丘に伴われてやってき た洋子は6畳にいてサを取り次ぎに出した 佐田王さんだね大きくなった ねまるで前の古藤の声とは思われぬような 大人び黒ずんだ声がしてガチャガチャと 拝見を取るらしい音も聞こえ たやがて丘の先に立って格好の悪い汚い黒 の軍服を着た古藤がかるいの腐ったような 匂いをプンプンさせながら洋子のいる ところに入ってき た洋子は体なく行為を込めた目つきで少女 のように晴れやかに驚きながらことを見 たまあこれが古藤さんなんて怖い方になっ ておしまいなすたんでしょう元の古藤さん
はおでこのお白いところだけにしか残っ ちゃいませんわガガとしったりなすっちゃ 嫌ですことよ本当にしばらくもう混罪来て はくださらないものと諦めていましたのに よくよくいらしてくださいましたおさんの お手柄ですわありがとうございまし たと言って洋子はそこに並んで座った2人 の青年を片代わりに見やりながら軽く挨拶 し たさぞお辛いでしょうねお湯はお召になら ないちょうど湧いています わだだいぶ臭くてお気ですが一度2度湯に つったって治りはしませんからまあ入り ませ ん古藤は入ってきた時のしつらしい様子に 引き換えて顔色を柔らかせられてい た洋子は心の中で相変わらずの愚か者だと 思っ たそうね何時まで文言はえ6時それじゃあ もういくらもありませんわねじゃあお祝し ていただいてお話の方を担当しましょうね いかが軍隊生活はきに行っ て入らなかった前以上に嫌いになりまし たおさんはどうなさった の私まだ猶予中ですが検査を受けたって きっとダメです不合格のような健康を持つ と私軍隊生活のできるような人が羨ましく てなりません体でも強くなったらしもう 少し心も強くなるんでしょうけれど もそんなことはありません ね古藤は自分の経験から丘を説服するよう にそう言っ た僕もその1人だが鬼のような体格を持っ ていて女のような弱虫がタにいてみると たくさんいますよ僕はこんな心でこんな 体格を持ってるのが先天的の二重生活を 強いられるようで苦しいんですこれこれ からも僕はこの矛盾のためにきっと苦しむ に違い ないなんですねお2人とも妙なところで 謙遜のしこなさるのねおさんだってそうお 弱くないし江藤さんと来たらそれは意思 憲吾そうなら僕は今日もここなんかには キアしません木村君にも党に決心をさせ てるはずなん です洋子の言葉を中途から奪って古藤は したたか自分自身を鞭打つように激しく こう言った洋子は何もかも分かっている くせに白を切って不思議そうな顔つきをし てみせ たそうだ思い切って言うだけのことは言っ てしまいましょう岡君立たないでください 君がいてくださると帰っていいん ですそういってことは洋子をしばらく熟地 してから言い出すことをまとめようとする
ように下を向いた 岡もちょっとなりを改めて洋子の方を盗み みるようにし た洋子は眉1つ動かさなかったそしてそば にいる佐に耳打ちして愛子を手伝って5時 に夕食の食べられる用意をするように そして3円停から三更ほどの料理を 取り寄せるように言いつけて座を外さし た古藤は踊るようにして部屋を出ていくサ をと目の外れで見送っていたがやがてむに 顔をあげ た気に焼けた顔がさらに赤くなってい た僕はねそう言っておいて古藤はまた考え たあなたがそんなことはないとあなたは 言うでしょうがあなたがクチというその 事務長の人の奥さんになられるというの ならそれが悪いって思ってるわけじゃない んですそんなことがあるとすりゃそれは 仕方のないことなんだそしてですね僕にも それは分かるようですわかるっていうのの はあなたがそうなればなりそうなことだと それがわかるって言うんですしかしそれ ならそれでいいからそれを木村にはっきり と言ってやってくださいそこなんだ僕の言 とするの はあなたは怒るかもしれませんが僕は木村 にいく度もよこさんとはもう縁を切れて 勧告しましたこれまで僕があなたに黙って そんなことをしていたのは悪かったからお 断りをしますそう言ってことはちょっと 誠実に頭を下げた洋子も黙ったまま真面目 に頷いて見せ たけれども木村からの返事はそれに対する 返事はいつでも同一なん ですよこから早のことを申し出てくるかと いう人との結婚を申し出てくるまでは自分 は誰の言葉よりも洋子の言葉と心とに信用 を置く親友であってもこの問題については 君の勧告だけでは心は動かないこうなん です木村ってのはそんな男なんです よ古藤の言葉はちょっと曇ったがすぐ元の ようになっ たそれをあなたは黙っておくのは少し変だ と思い ますそれ でよこは少し座を乗り出してことを励ます ように言葉を続けさせ た木村からは前からあなたのとろに行って よく事情を見てやってくれ病気のことも 心配でならないからと言ってきてはいるん ですが僕は自分ながらどうしようもない妙 な潔癖があるもんだからつい伺い遅れて しまったのですなるほどあなたは線よりは 痩せましたねそして顔の色もよくありませ ん
ねそう言いながら古藤はじっと洋子の顔を 見合っ た洋子は姉のように1段の高みから古藤の 目を迎えて応用に微笑んでい た言うだけ言わせてみようそう思って今度 は岡の方に目をやっ たおかさんあなた今古藤さんのおっしゃる ことをすっかりお聞きになっていて くださいましたわねあなたはこの頃失礼 ながら家族の1人のようにこちらに遊びに おいでくださるんですが私をどうお思いに なっていらっしゃるかご遠慮なくこさにお 話しなせてくださいましな決してご遠慮 なく私どんなことを伺っても決して決して 何とも思いはいたしません から それを聞くと丘はひどく枠して顔を真っ赤 にして乙女のようにはにかん だ古藤のそばに丘を置いてみるのは聖堂の 花瓶のそばに先駆けの桜を置いてみるよう だったよこはふと心に浮かんだその大悲を 自分ながら面白いと思ったそんな余裕を よこは失わないでい た私こういう事柄には物を言う力はない ように思います からそう言わないで本当に思ったことを 言ってみてください僕は一徹ですから ひどい思い間違いをしていないとも限れ ませんからどうか聞かして くださいそういってことも片し越しに丘を 帰りみ た本当に何も言うことはないんですけれど も木村さんには私口に言えないほどご道場 しています木村さんのようないい方が今頃 どんなに1人で寂しく思っておられるかと 思い合っただけで私寂しくなってしまい ますけれども世の中には色々な運命がある のではないでしょうかそして明々は黙って それを耐えていくより仕方がないように私 思いますそこで無理をしようとすると全て のことが悪くなる ばかりそれは私だけの考えですけれども私 そう考えないと一刻も生きていられない ような気がしてなりませ んよこさんと木村さんと倉さんとの関係は 私少しは知ってるようにも思いますけれど もよく考えてみるとかえてちっとも知ら ないのかもしれませんね私は自分自身が 少しも分からないですからお3人のこと なども分からない自分の分からない想像 だけのことだと思いたいんです 古藤さんにはそこまではお話ししません でしたけれども私自分のうちの事情が大変 苦しいので心を打ち明けるような人を持っ ていませんでしたがことに母とか姉妹とか
いう女の人 によこさんにお目にかかったらなんでも なくそれができたんですそれで私は 嬉しかったん ですそしてよこさんが木村さんとどうして も気がお会いにならないそのことも失礼 ですけれども今のところでは私想像が違っ ていないようにも思いますけれどもその他 のことは私何とも自信を持って言うことが できませんそんなところまで他人が想像し たり口を出したりしていいものかどうかも 私分かりません大変独善的に聞こえるかも しれませんがそんな気はなく運命にできる だけ従順にしていたいと思うと私進んで物 を行ったりしたりするのがは恐ろしいと 思い ますなんだか少しも役に立たないことを 言ってしまいまして私やはり力がありませ んから何も言わなかった方が良かったん ですけれど もそう耐えいるように声を細めて丘は言葉 を結ばぬうちに口をつんでしまっ たその後には沈黙だけがふさわしいように 口をつんでしまっ た 実際その後には不思議なほどしめやかな 沈黙が続い た書き込めたこの匂いがかかに動くだけ だっ たあんなに謙遜なおか君も岡は慌ててその さじらしい古藤の言葉を打ち消そうとし そうにしたが古藤がどんどん言葉を続ける のでそのまま顔を赤くして黙ってしまっ たあんなに遜な君もあなたと木村とがどう しても折り合わないことだけは少なくとも 認めているんですそうでしょ洋子は美しい 沈黙を画さな手でかき乱された不会をかか にもたなく思うらしい表情をし てそれは要する前いつは横浜に一緒に行っ ていただいた時詳しくお話ししたじゃあり ませんかそれは私どなたにでも申し上げて いたことですわ そんならなぜその時は木村の他には保護者 はいなかったからあなたとしてはお妹さん たちを育てていく上にも自分を犠牲にして 木村に行く気でおいでだったかもしれませ んがなぜなぜ今になっても木村との関係を そのままにしておく必要があるん です岡は激しい言葉で自分が責められるか のようにハラハラしながら首を下げたりよ との顔と片代わりに見合ったりしていたが とうといたまれなくなったと見えて静かに ざたって人のいない2階の方に行って しまっ た洋子は丘の心持ちを思いやって引き止め
なかったしことはいてもらったところが何 の役にも立たないと思ったらしくこれも 引き止めはしなかっ たさす鼻もない空かの花瓶1つよくは心の 中で皮肉に微笑 それより先に浮かしてちょうだいなくち さんはどのくらいの程度で私たちを保護し ていらっしゃるかご 存知古藤はすぐぐっ詰まってしまった しかしすぐ盛り返してき た僕はおか君と違ってブルジョアの家に 生まれなかったものですからデリカシーと いうような美徳をあまりたくさん持ってい ないようだから失礼なことを言ったら許し て くださいクラチって人は祭祀まで利益した しかも非常に適切らしい奥さんまでリエし たと新聞に出ていまし たそうね新聞には出ていましたわねよ ございますわ仮にそうだとしたらそれが 何か私と関係のあることだとでも おっしゃる のそう言いながら洋子は少し気にさえた らしく積取りを引き寄せて に火を継ぎ足し た桜の火花が激しく飛んで2人の間に弾け たまあひどいこの炭は水をかけずに持って きたと見えるのね女ばかりの書体だと思っ て出入りの御用機器まで人を馬鹿にするん ですの よ洋子はそう言い舞を潜め た古藤は胸を疲れたようだっ た僕は乱暴なもんだから言い過ぎがあっ たら本当に許してください僕は実際いかに 親友だからと言って木村ばかりをいいよう にと思ってるわけじゃないんですけれども 全くあの境遇には同情してしまうもんだ から僕はあなたも自分の立場さえはっきり 言ってくださればあなたの立場も理解が できると思うんだけれどもな僕はあまり 直線的すぎるんでしょうか僕は世の中を サンクリアーに見たいと思いますよでき ないもんでしょう か洋子は撫でるような行為の微笑みを見せ たあなたが私本当に羨ましいござすわ平和 な家庭にお育ちになって素直に何でもご覧 になれるのはありがたいことなんですわ そんな方ばかり世の中にいらっしゃると 面倒がなくなってそれはいいんですけれど もおさんなんかはそれから見ると本当に 気の毒なんですの 私みたいなものをさして頼りにし てらっしゃるのを見るといじらしくって 今日はくちさんの見てる前でキスしてあげ ちまった
の人言じゃありませんわねよこの顔はすぐ 曇っ たあなたと同様ハキハキしたことの好きな 私がこんなに意地をこらしたり人の気を 兼ねたり好んで誤解を買って出たりする ようになってしまったそれを考えてご覧に なってちょうだい あなたには今はお分かりにならないかも しれませんけれど もそれにしてももう5時愛子に手料理を 作らせておきましたから久しぶりで妹たち にも会ってってくださいましねいい でしょうことは急に固くなった僕は帰り ます僕は木村にはっきりした報告もでき ないうちにこちらでご飯を頂いたりするの はなんだか気がとめますよこさん頼みます 木村を救ってくだくさいそしてあなた自身 を救って ください僕は本当言うと遠くに離れて あなたを見てるとどうしても嫌いになっ ちまうんですがこうやってお話ししてると 失礼なことを言ったり自分で怒ったりし ながらもあなたは自分でも欺けないような ものを持っておられるのを感じるように 思うんです境遇が悪いんだきっと僕は一生 が大事だと思いますよ来世があろうが過去 ががこの一生が大事だと思いますよ 生きがいがあったと思うように生きていき たいと思いますよ転んだって倒れたって そんなことを世間のようにかれこれ くよくよせずに転んだら立って倒れたら 起き上がっていきたいと思い ます僕は少し人波外れてバカのようだ けれども馬鹿者でさえがそうしていきたい と思ってるん です古藤は目に涙を溜めて痛ましげによく を見合っ たその時伝統が急に部屋を明るくし たあなたは本当にどこか悪いようですね 早く治ってくださいそれじゃ僕はこれで 今日はごめを被りますさようなら 目近のように敏感なお花さえが一向注意し ないよの健康状態をどじらしい古藤が いち早く見てとって暗示てくれるのを見る と洋子はこの素朴な青年に懐かしみを 感ずるのだっ た洋子は立っていく古藤の後ろからあ ちゃんさーちゃん古藤さんがお帰りになる といけないから早く来て乙女申しておくれ と叫ん だ玄関に出た古藤のとろに台所 broughtからサが飛んできた飛んで きはしたがクラチに対してのようにすぐに 踊りかかることは得しないで口も聞かずに 少し恥ずかしげにそこに立ちすくん
だその後ろから愛子が手ぬいを頭から取り ながら急ぎ足で現れ た玄関の投のところに照り返しをつけて 置いてあるランプの光をまともに受けた 愛子の顔を見ると古藤は見いられたように その火に打たれたらしくれもせずにその 立ち姿に眺め入っ た愛子はりと左の口にエの出る微少を見せ て右手の指先が廊下の板にやっと触るほど 膝を折って軽く頭を下げ た愛子の顔には周知らしいものは少しも 現れなかっ たいけません古藤さん妹たちが五音返しの つもりで一生懸命にしたんですから おいしくはありませんが是非ねさーちゃん お前さんその帽子とけんと思ってお逃げ 洋子に言われて佐田はすばしっこく帽子 だけ取り上げてしまったことはおおめおめ と居残ることになっ た洋子はクチをも呼び迎えさせ た12条の座敷にはこの家に珍しく賑やか な食卓がしつらえられた5人が各々座に ついて箸を取ろうとするところにクチが 入ってきたさあいらっしゃいまし今夜は 賑やかですのよここへどうぞそう言って 古藤の隣の座を目で示したクチさんこの方 がいつも大朝をする木村の親友の古藤ぎ さんです今日珍しくいらしてくださいまし たのこれが事務長していらしたクチ三吉 さん です紹介されたクチは心置きない態度で 古藤のそばに座りながら私は確か総館で ちょっとにかかったように思うがご挨拶も せず湿気しましたこちらには四重お世話に なっております以後よろしくと言っ た古藤は正面からクラチをじっと見やり ながらちょっと頭を下げたきり物も言わ なかっ たクラチは軽々しく出した自分の今の言葉 を不快に思ったらしく濁りきって顔を正面 に直したがしいて努力するように笑顔を 作ってもう一度古藤を帰りみた あの時からすると道あるように変わられ ましたな私も日進戦争の時は半分軍人の ような生活をしましたがなかなか面白かっ たですよしかし苦しいこともたまには 終わりだろう な古藤は食卓を見合ったままええとだけ 答え たクラチの我慢はそれまでだっ た一座はその気分を感じてなんとなく白け 渡っ た洋子の手慣れたタクトでもそれは なかなか一掃されなかっ た岡はその気まずさを強烈な電気のように
感じているらしかった1人さだよだけ はしゃぎ返っ たこのサラダはあ姉さんがオスとオリーブ 湯を間違って油をたくさんかけたから きっと油っこくて よ愛子は穏やかにさを睨むようにしてさー ちゃんはひどいと言ったサよは平気だった その代わり私がまたお酢を後から入れた から酸っぱすぎるところがあるかもしれ なくってよもう少しついでにおハを入れれ ばよかってねあね さんみんなは思わず笑ったことも笑うには 笑ったしかしその笑い声はすぐ静まって しまっ たやがて古藤が突然橋を置い た僕が悪いためにせっかくの食卓を大変不 愉快にしたようですすみませんでした僕は これで失礼し ますよこは慌ててまあそんなことはちっと もありませんことよ古藤さんそんなこと おっしゃらずにしままでいらして ちょうだいどうぞみんなで途中までお送り しますからと止めたがことはどうしても 聞かなかっ た人々は食事半間で立ち上がらねばならな 古藤は靴を履いてから帯皮を取り上げて剣 を釣ると洋服のシを伸ばしながらちらっと 愛子に鋭く目をやっ た初めからほとんど物を言わなかった愛子 はこの時も黙ったまま多な乳な目を大きく 見開いて中座をしていくことを美しく 嗜めるようにじっと見返してい たそれをよこの鋭い資格は見逃さなかった 古藤さんあなたこれからきっと度々いらし てくださいましよまだまだ申し上げること がたくさん残っていますし妹たちもも待ち 申していますからきっとですことよそう 言ってよこも親しみを込めた瞳を送っ た古藤はしこった軍隊式の立礼をして サクサクと砂利の上に靴の音を立てながら 夕闇の模様した杉森の下道の方へていっ た見送りに立たなかったクチが座敷の方で 独り言のように誰に向かってともなくバカ というのが聞こえ た
いつも楽しみに聴いています。ようこの声色が、どストライクです…賢いく妖艶なイメージにぴったりです。
時折、再度…真珠婦人とかも聴きいってます。
陰ながら応援してます。お邪魔しました。
今回もありがとうございました。いつもながら、美しい声、素敵な朗読で楽しませていただきました。次回、金曜日よろしくお願いいたします。
一気に拝聴しました😅
無駄のない文体 現代的 とにかく 素晴らしい 其処へ持ってきて シャボン様 贅沢な一日を過ごせました 春は 曙 立春ですね😊