1911年1月『白樺』の創刊とともに「或る女のグリンプス」の題で連載を始める。後に後半を書き下ろして『或る女』と改題して出版された。
《ここまでのお話》
早月葉子はかつて気鋭の記者・木部と結婚して一女・定子をもうけていたが、定子を乳母の手に預けて米国に活路を求めて出航した。しかし婚約者・木村の待つ米国への船中で、船の事務長・倉地と恋に落ちた葉子は、病と偽って米国へは上陸せずにそのまま倉地とともに日本へ戻ろうと画策する。
0:00:00 或る女㈥
0:00:09 二十二
0:24:48 二十三
0:45:04 二十四
1:11:25 二十五
サムネイル画像
Portrait of a Lady with Cape and Hat
Gustav Klimt
有島 武郎
1878年(明治11年)3月4日 –
1923年(大正12年)6月9日
有島 竹夫ある 女 22どこかから木の匂いがかすかに通って きたように思って洋子は心よい眠りから目 を覚まし た自分のそばにはクチが頭からすっぽりと 布団をかぶっていびきも立てずに熟睡して い た料理屋を兼ねた旅館のに似合わしい派手 なちりmaisのヤグの上にはもうだいぶ 高くなったらしい秋の日の光が生子越しに 刺してい た洋子は往復1ヶ月のありを船に乗り続け ていたので船足のゆらめきの名残りが残っ ていて体がふらりふらりと揺れるような 感じを失はいなかったが広い畳の間に 大きな柔らかいヤグを述べて体を思うまま 伸ばして一晩ゆっくりと眠り通したその 心地よさは格別だっ た仰向けになって寒からぬ程度に温まった 空気の中に両手を二の腕までむき出しにし て柔らかい髪の毛に心よい触覚を感じ ながら何を思うともなく天井の木目合って いるのも珍しいことのように心よかっ たやや半時もそうしたままでいると丁場で ポンポン時計がくじを打っ た3階にいるのだけれどもその音は ほがらかに乾いた空気を伝わって洋子の 部屋まで響いてきたとクチがいきなりヤグ を跳ねのけて床の上に状態を立てて目を こすっ た9時だな今打ったのはとおで聞くと おかしいほど大きな塩がれ声で言っ たどれほど熟睡していても時間には英敏な 船員らしいクチの様子が何のことはなく 洋子を微笑まし たクラチが立つと洋子も床出 たそしてその辺を片付けたりタバコを吸っ たりしている間に洋子は船の中でタバコを 吸うことを覚えてしまったのだったクチは 手早く顔を洗って部屋に帰ってきたそして 制服に着換え始めた洋子はいいとそれを 手伝っ たくち特有な西洋風に余ったるいような 一種の匂いがその体にも服にもまわってい たそれが不思議にいつでも洋子の心を ときめかし た もう飯を食っとる暇はないまたしばらく せわしいでこっぱみじんだ今夜は遅いかも しれんよ俺たちには天長節も何もあった もんじゃ ないそう言われてみると洋子は今日が天長 節なのを思い出した洋子の心はなおなお
管轄になっ たクチが部屋を出ると洋子は縁側に出て 手すりから下をみた両側に桜なきのずっと 並んだもみ坂は急勾配をなして海岸の方に 固いているそこをクチのこら者の姿が勢い よく歩いていくのが見え た半分型散りした桜の葉はシクに紅葉して 軒並みに掲げられた日勝期が風のない空気 の中に鮮やかに並んでい たその間にイギリスの国旗が1本混じって 眺められるのも開場らしい不を添えてい た遠く海の方を見ると税関の桟橋にわれた 4層ほどの気仙の中に洋子が乗って帰った エジ丸も混じってい たまさに住み渡った海に対して今日の祭日 を祝賀するために柱から柱に渡された小端 がおもちゃのように眺められた 洋子は長い後悔の四重を一場の夢のように 思いやっ たその長旅の間に自分の一心に起こった 大きな変化も自分のことのようではなかっ たよこは何がなしに希望に燃えた生き生き した心で手すりを離れ た部屋にはこざっぱりと身をした女中が来 て寝床をあげていた 一見半の大男の間に飾られた大花池には菊 の花が一抱え分もいけられていて空気が 動く旅ごとに仙人じみた匂いを漂わし たその匂いを嗅ぐとともするとまだ外国に いるのではないかと思われるような旅心が 一気に砕けて自分はもう確かに日本の土の 上にいるのだということがしっかり思わさ れ た いいお日よりね今夜あたりは忙しいん でしょと洋子は朝見の前に向かいながら 女中に行ってみ たはい今夜はご遠会が2つばかりござい ましてねでも浜の方でも外務省の夜会に いらっしゃる方もございますからたんと 込み合いはいたしますまけれどもそう答え ながら女中は夕べ遅くついてきたちょっと えいのしれないこの美しい女のの崇を 探ろうとするように注意深い目をやった 洋子は洋子で浜という言葉などから横浜と いう土地を形にしてみるような気持ちがし た短くなってはいても何にもすることなし に1日を暮らすかと思えばその秋の1日の 長さが洋子にはひどく気になりだし た明後日東京に帰るまでの間に買い物でも 見て歩きたいのだけれども土産物は木村が 例の銀行切手を崩してあり余るほど買って もたしてよこしたし手元には哀れなほど より金は残っていなかっ たちょっとでもじっとしていられない洋子
は日本で着ようとは思わなかったので西洋 向きに注文した派手すぎるような綿入れに 手を通しながら凸置い考え たそうだ古藤に電話でもかけてみてやろう 洋子はこれはいい試案だと思っ た東京の方で親類たちがどんな心持ちで 自分を迎えようとしているか古藤のような 男に今度のことがどう響いているだろうか これは単に慰みばかりではない知っておか なければならない大事なことだったそう よくは思ったそして女中を呼んで東京に 電話をつぐように頼ん だ祭日であったせいか電話は思いの他早く 繋がった洋子は少しいたずららしい微傷を エクボの入るその美しい顔に軽く浮かべ ながら階段を足早に降りていっ た今頃になってようやく床を離れたらしい 男女の客がしどけな風をして廊下のここ かしこでよことすれ違っ た洋子はそれらの人々には目もくれずに場 に行って電話室にに飛び込むとびっしりと 通しめてしまったそして受話気を手に取る が早いか電話に口を寄せてあなたギチさん ははそうギチさんそれは固形なのよと独り でにスラスラと言ってしまって我れながら 洋子ははっと思っ たその時のウキウキした軽い心持ちから 言うと洋子にはそういうより以上に自然な 言葉はなかったのだけれどもそれでは あまりに自分というものを明白に さらけ出していたのに気がついたの だ古藤は案の定答えしぶっているらしかっ た富には返事もしないでちゃんと聞こえて いるらしいのにただなんですと聞き返して きたよこにはすぐ東京の様子を飲み込んだ ように思っ たそんなことどうでもようござすわあなた お丈夫でしたのと言って見るとええとだけ すげない返事が機械を通してであるだけに ことさらすげなく響いてきたそして今度は 古藤の方から木村木村君はどうしています あなたあったんですかとはっきり聞こえて き たよこはすかさずはあ会いましてよ相 変わらず丈夫でいます ありがとうけれども本当にかわいそうでし たのさん聞こえますか明後日私東京に帰り ますわもうおばのとこには行けませんから ねあそこには行きたくありませんからあの ねスア町のね総角館つのつるそうお分かり になって総角館に行きますからあなた来て くだされるでも是非聞いていただけなけれ ばならないことがあるんですからよくって そうぜ どうぞ幸ての朝ありがとうきっとお待ち
申していますから是非ですの よ洋子がそう言ってる間古藤の言葉はしま まで奥歯に物の挟まったように重かった そしてややともするとよことの会見を こもうとする様子が見え たもし洋子の銀のように住んだ涼しい声が 古藤を選んで愛そするらしく響かなかった 古藤はよこの言うことを聞いてはいなかっ たかもしれないと思われるほどだっ た朝から何事も忘れたように心よかった 洋子の気持ちはこの電話1つのために妙に こじれてしまっ た東京に帰れば今度こそはなかなか用意 ならざる反抗が待ち受けているとは12分 に覚悟してその備えをしておいたつもりで はいたけれども古藤の口裏から考えてみる と面とぶつかった実際は空想していたより も重大であるのを思わずにはいられなかっ た洋子は電話室を出ると今朝初めて顔を 合わした女に長場師の中から挨拶されて 部屋にも伺いに来ないで馴れ馴れしく言葉 をかけるその周知にまで不快を感じながら 早々3階に引き上げ たそれからは もう本当に何にもすることがなかったただ クラチの帰ってくるのばかりがイライラ するほどに町に待たれ た品川台場置きあたりで打ち出す宿方が かかに腹に応えるように響いて子供らは 往来でその頃仕切りに流行った南京花火を パチパチと鳴らしてい た天気がいいので女中たちははしゃぎ切っ た冗談などを言いあらゆる部屋をけ放して 産らしく畑や放棄の音を立てたそしてただ 1人この旅館では居残っているらしいよこ の部屋を掃除せずにいきなり縁側に雑巾を かけたりしたそれが出ていけがしの仕打ち のようによこには思えば思われ たどこか掃除の住んだ部屋があるん でしょうしばらくそこ貸してくださいな そしてここも綺麗にしてちょうだい部屋の もしないで雑巾がけなぞしたって何もなり はしないわと少し剣を持たせて言ってやる と今朝来たのとは違う横浜生まれらしい われのした中年の女中は初めて縁側から 立ち上がってコメドそうに洋子をた廊下1 つを隔てた隣の部屋に案内し た今朝まで客がいたらしく掃除は住んでい たけれども火鉢だの住だの古い新聞だのが 部屋の隅にはまだ置いたままになってい た開け放した生子から乾いた温かい光線が 畳の表3分ほどまで差し込んでいるそこに 膝を横に座りながら洋子は目を細めて 眩しい光線を避けつつ自分の部屋を片付け ている女中の気配に用人の気を配っ
たどんなとろにいても大事な金目なものを くだらないものと一緒に放り出しておくの が洋子の癖だった洋子はそこにいかにも 伊達で感覚な心を見せているようだったが 同時にくだらない女中連れが出来心でも 起こしはしないかと思うと最新に監視する のも忘れはしなかっ たこうして隣の部屋に気を配っていながら も洋子は部屋の隅に帳面に折りたたんで ある新聞を見ると日本に帰ってからまだ 新聞というものに目を通さなのを思い出し て手に取り上げてみ たテレビユのような匂いがプンプンするの でそれが今日の新聞であることがすぐ察せ られ た果たして第1面には聖獣万歳と肉太に 書かれた見出しの下に危険の肖像が掲げ られてあっ た洋子は1ヶ月の世も遠いていた新聞紙を 物珍しいものに思ってざっ目を通し始めた 一面にはその年の6月に伊藤内閣を鉄して できた桂内閣に対して色々な注文を提出し た論文が掲げられて海外通信にはシナ領土 内における日ロの経済的関係を解いた地国 白の演説の公害などが見えてい た2面には口という文学博士が最近におけ るいわゆる夫人の覚醒という続き物の論文 を載せていた福田という女の社会主義者の ことや家人として知られた与野明子女子の ことなどの名が現れているのを洋子は注意 したしかし今の洋子にはそれが不思議に 自分とは駆け離れたことのように見え た3面に来ると4号勝で書かれた鬼故郷と いう字が目についたので思わずそこを読ん でみる洋子ははっと驚かされてしまっ た某大気戦会社船中の大開示事務長と婦人 選挙との道ならぬ恋選挙は鬼古郷の 繊細こういう大業な兄弟がまず洋子の目を 小いたくいつけ た本法にて最も重要なる位置にある某会社 の所有まるまるまの事務長は先頃米国航路 に勤務中かつて鬼古郷に貸してほもなく姿 をくらましたる暴れ女何がしが一等選挙と して乗り込み至るをそそのかしその女を 米国に上陸せしめず密かに連れ帰りたる怪 事実 ありしかも某女と言えるは米国に先行せる 婚約の夫まである身分のものなり 先客に対して最も重き責任を担うべき事務 長にかかるフラチの挙動あ氏は事務長1個 の失態のみならず某気仙会社の対面にも 影響する由々式大事 なりことの主体はもれなく本師の探知しる ところなれども海春の余地を与えんため しばらく発表を見合わせおく
べしもしある期間を過ぎても両人の行を 改まる模様なき時は本は容赦なく詳細の 記事を掲げて築道に陥りたる2人を長介し 合わせて気仙会社の責任を問うこととすし 読者こう刮目してその時を 待て洋子は下唇を噛みしめながらこの記事 を読ん だ一体何新聞だろうとその時まで気にも 止めないでいた第1面をてると霊と法制 神法と記してあったそれを知ると洋子の 全身は怒りのために爪の先まで青白くなっ て抑えつけても押さえつけてもブルブルと 震え出し た法制神法といえば田川法学博士の機関 新聞だその新聞にこんな記事が現れるのは 意外でもあり当然でもあっ た田川夫人という女はどこまでくやしい女 なのだろう田川夫人からの通信に違いない のだ法制神法はこの通信を受けると報道の 選べをつけておくためと読者の好奇心を 煽るためとにいち早くあれだけの記事を 乗せて田川夫人からさらに詳しい消息の 来るのを待っているの だろう洋子は鋭くも香水し たもしこれが他の新聞であったらクの一心 上の危機でもあるのだから洋子はどんな 秘密な運動をしてもこの上の記事の発表は もみ消さなければならないと胸を定めたに そういなかったけれども田川夫人が悪意を 込めてさせている仕事だとしてみると どの道書かずにはおまいと思われ た優先会社の方で高圧的な交渉でもすれば とにかくその他には道がないくれぐれも 憎い女は田川夫人だこうずに思い巡らと 洋子は船の中での屈辱を今更にまざまざと 心に浮かべ たお掃除ができましたそう襖越しに言い ながらさっきの女中は顔も見せずに さっさと下に降りて行ってしまっ た洋子は結くそれを着やすいことにして その新聞を持ったまま自分の部屋に帰っ たどこを掃除したのだと思われるような 掃除の仕方で畑までが違い棚の下に置き わられてい た花瓶に貴重面できれ好きな洋子はもう たまらなかった自分でテキパキと底を 片付けておいてパラソルと手下を 取り上げるがいやその宿を出 た往来に出るとその旅館の女中が45人 早じまいをして昼間の中を野山の大神宮の 方にでも散歩に行くらしい後ろ姿を見た 足さと朝の掃除を急いだ女中たちの心も 洋子には読めた洋子はその女たちを見送る となんということなしに寂しく思っ た帯の間に挟んだままにしておいた新聞の
切り抜きが胸を焼くようだった洋子は歩き 歩きそれを引き出して手下にしまいかえ た旅館は出たがどこに行こうという当ても なかった洋子は俯いてもみ坂を下りながら 差しもしないパラソルの石づきで下になっ た土を一足一足突き刺して歩いていっ たいつの間にかじめじめした薄汚い狭通り に来たと思うと端なくもいつか古藤と一緒 に上がった相模の前を通っているのだっ たさやと古めかしい事態で描いた沖 アンドンの神までがその時のままでけてい た洋子は見覚えられているのを恐れるよう に足早にその前を通り抜け た停車場前はすぐそこだっ たもう12時近い秋の日は華やかに照りて 思ったより数多い群衆が運河に駆け渡した いくつかの橋を賑やかに往来してい たよこは自分1人がみなから振り向いてみ ように思い出し たそれが当たり前の時ならばどれほど多く の人にじろじろと見られようともどを失う ような洋子ではなかったけれどもたった今 忌々しい新聞の記事を見た洋子ではあり いかにも専用じみたやぼ臭い渡れを着て いる洋子であっ た服装にちりほどでも秘の打ち所があると 気が引けてならないよことしては旅館を出 てきたのが悲しいほど後悔された 洋子はとうとう税関鳩羽の入り口まで来て しまっ たその入り口の小さなレガ作りの事務所に は年の若い監視保たちが二重金ボタンの背 に海軍棒をかぶって事務を取っていたが そこに近づく洋子の様子を見ると昨日上陸 した時から洋子を見知っているかのように その飛び散れて派手りな姿に目を定める らしかった 物好きなその人たちは早くも新聞の記事を 見て問題となっている女が自分に違いない と目星をつけているのではあるまいかと よこは何事につけても愚痴っぽく引け目に なる自分を見出し たよこはしかしそうした風に見つめられ ながらもそこを立ち去ることができなかっ たもしやクチが昼飯でも食べにあの大きな 体を重し動かしながら船の方から出てきは しないかと心待ちがされたから だ洋子はそろそろと海岸通りをグランド ホテルの方に歩いてみ たクチが出てくればクラチの方でも自分を 見つけるだろうし自分の方でも後ろに目は 泣いながら出てきたのを感づいて見せると いう自信を持ちながら後ろも振り向かずに だんだん波止場から遠ざかった 海沿いに立てねた石がいをつなぐ頑丈な
テサには西洋人の子供たちが小牛ほどな 要件や天に突きそばれてこ投げに遊びたれ ていたそして洋子を見ると心やすてに 無邪気に微笑んで見せたりし た小さな可愛い子供を見るとどんな時 どんな場合でも洋子は貞子を思い出して胸 が締めつけられるようにになってすぐ 涙ぐむのだっ たこの場合はことさらそうだっ た見ていられないほどそれらの子供たちは 悲しい姿に洋子の目に移っ た洋子はそこから避けるように足を返して また税関の方にあみ近づい た監視科の事務所の前を来たり行ったり する人数は落Defとして耐えなかったが その中にらしい姿はさらに見えなかっ た洋子はエジ丸まで行ってみる勇気もなく そこをいく度もあちこちして監守たちの目 にかかるのもうるさかったのですごすごと 税関の表門を県長の方に引き返し た 23その夕方クチが誇りにまれ汗にまれて もみ坂をスタスタと帰ってくるまでも洋子 は旅館の仕をまたがずに桜の並木の下など を徘徊して待ってい たさすがに11月となると夕暮れを模した 空はみるみる薄くなって風さえ吹き出して いる1日の後楽に遊び着れたらしい人の 群れに混じって不機嫌そうに顔をしかめた クチは真光に坂の頂上を見つめながら 近づいてきた それを見ると洋子は一時に力を回復した ようになってすぐ踊り出してくる いたずら心のままに1本の桜の木を立てに クラチをやり過ごしておいて後ろから静か に近づいて手と手とが触れ合んばかりに 押しなん だクラチはさすがにふを食らってまじまじ と寒さのために少し涙ぐんで見える大きな 涼しい洋の目を見やりながらどこかから 湧いて出たんだと言わんばかりの顔つきを し た1つ船の中に朝となく夜となく一緒に なって寝起きしていたものを今日初めて 半日の世も顔を見合わせずに過ごしてきた のが思った以上に物寂しく同時にこんな ところで思いもかけず出会ったが予想の他 に満足であったらしいクチの顔付きを見て とるとよは何もかもてただ嬉しかっ たその真っ黒に汚れた手をいきなりひかん で熱い唇で噛みしめていわってやりたい ほどだったしかし思いのままに寄り添う ことすらできない大道であるのをどう しよう洋子はその切ない心を拗ねて見せる よりほなかっ
た私もうあの宿屋には止まりませんわ人を バカにしているんですもの あなたお帰りになるなら勝手に1人で いらっしゃいどうしてと言いながらクチは 遠したように往来に立ち止まってしげしげ と洋子を見直すようにし たこれじゃあと言って誇りにまみれた両手 を広げ襟首を抜き出すように伸ばして見せ て渋い顔をしながらどこにも行けやせんわ なだからあなたはお帰りなさいましと言っ てるじゃありませんか そう前置きをして洋子はクチと押し並んで そろそろ歩きながら女の仕打ちから女中の 藤だまでをおひれをつけて言いつけて早く 総閣下に移っていきたいとせがみにせがん だクラチは何か試案するらしく速歩ミミ耳 を傾けていたがやがて旅館に近くなった頃 もう一度立ち止まって今日あそこから電話 で部屋のの都合を知らしてよこすことに なっていたがお前聞いた かよこはそう言いつけられながら今まで すっかり忘れていたのを思い出して少しく 照れたように首を振ったええわじゃあ電波 打ってから先に行くがいいわしは荷物をし て今夜後から行く でそう言われてみると洋子はまた1人だけ 先に行くのが嫌でもあったと言って荷物の 始末には2人のうどちらか1人残らねば なら ないどうせ2人一緒に記者に乗るわけにも 行く まクチがこう言いたした時よこは危うくで は今日の法制神法を見たかと言おうとする ところだったがはっと思い返して喉の ところで抑えてしまっ たなん だクチは見かけのりに恐ろしいほど便に 働くで顔にも表さない洋子の躊躇を見て とったらしくこうなじるように尋ねたが 洋子が何でもないと答えると少しも行せず にそれ以上問い詰めようとはしなかっ たどうしても旅館に帰るのが嫌だったので 非常な物たらなさを感じながらよこはその ままそこからクラチに別れることにし たクラチは力のこもった目で洋子をじっと 見てちょっと頷くと後ろも見ないで どんどんと旅館の方にかぽしていっ た洋子は残り惜しくその後ろ姿を見送って いたがそれに何ということもない軽い誇り を感じてかかに微笑みながらクチが登って きた坂道を1人で降りていっ た停車場に着いた頃にはもうガスの明りが そこらにとってい た洋子は知った人に会うのを極端に恐れ 裂けながら
記者の出るすぐ前まで停車場前の茶店の 人間に隠れていて一等室に飛び乗っ ただだっ広いその客車には外務省の夜会に 行くらしい3人の外国人が命名デコルテを 着飾った夫人を解放して乗っているだけ だっ たいつもの通りその人たちは不思議に人を 引きつける洋子の姿に目をそだてたけれど も洋子はもう左手の小指を器用に折り曲げ て左の瓶のホゲを美しくかき上げるあの品 をしてみせる気はなくなってい た部屋の隅に腰かけて手下とパラソルとを 膝に引きつけながらたった1人その部屋の 中にいるもののように応用に構えてい た偶然顔を見合わせてもよくは張のある その目を無邪気に本当にそれは罪を知ら ない16シの乙女のの目のように無邪気 だった大きく見開いて相手の視線を はにかみもせず迎えるばかりだっ た先方の人たちの年齢がどのくらいで要望 がどんな風だなどということも洋子は少し も注意してはいなかっ たその心の中にはただクラチの姿ばかりが 色々に描かれたり消されたりしてい た列車が新橋に着くとはやかに車を出たが ちょうどそこに登山に角帯を閉めた箱屋と でも言えば言えそうな気の聞いた若いもの が前方を片手に持って目ざとく洋子に 近づいたそれが総角館からの出迎えだっ た横浜にも増して見るもにつけて連想の村 がり起こる光景それから来る強い 刺激洋子は宿から回された人力者の上から 銀座通りの夜の有様を見やりながら危うく いく度も泣き出そうとし た貞子の住む同じ土地に帰ってきたと思う だけでももう胸はワクワクし た愛子もさだもどんな恐ろしい期待に震え ながら自分の帰るのを待ちわびている だろうあの叔父おばがどんな激しい言葉で 自分をこの2人の妹に描いて見せているか 構うもかなんとでも言うがいい自分はどう あっても2人を自分の手に取り戻して 見せるこうと思い定めた上は指も刺させは しないから見ているが いいふと人力者が終わり町の角を左に 曲がると暗い細い通りになった洋子は 目指す旅館が近づいたのを知っ たその旅館というのはクチが沙汰でなく ひきにしていた芸者がある財産家に引かさ れて開いた店だというのでクチから あらかじめ掛け合っておいたのだった人力 者がその店に近づくに従って洋子はその 女将というのに太した懸念を持ち始め た未知の女同士が出会う前に感ずる一種の 軽い敵い心が洋光の心をしばらくは他の
事柄から切り離し た洋子は車の中で門を気にしたり即発の形 を直したりし た昔のレガ建てをそのまま改造したと思わ れるしっくい塗りの頑丈な角地面の人構に 来て高校と明るい入り口の前にシャフが カボを下ろすとそこにはもう23人の女の 人たちが走り出て待ち構えてい た洋子は裾を庇いながら車から降りてそこ に立ち並んだ人たちの中からすぐ女将を 見分けることができ た背が思い切って低く顔形も整ってはい ないが30女らしく分別の備わった機関期 らしい赤のけのした人がそれに違いないと 思っ た洋子は思い儲けた以上の行為をすぐその 人に対して持つことができたのでこさ心 よい親しみを持ち前の愛嬌に添えながら 挨拶をしようとするとその人は子供投げに それを遮切っていずれご挨拶は後ほどさぞ おさございましてでしょうおえどうぞと 言って自分から先に立っ た言わせた女中たちは目端を聞かして色々 と世話に立っ た入り口の突き当たりの壁には大きな ポンポン時計が1つかかっているだけで 何にもなかっ たその右手の頑丈な踏みこのいいはしご団 を登り詰めると他の部屋から廊下で 切り離されて16畳と8畳と6畳との部屋 が鍵形に続いてい た散り1つ吸えずにきちんと掃除が届いて いて3箇所に置かれた鉄瓶から立つ湯で 部屋の中は柔らかく温まってい たお座敷えと申すところですがご作に こちらでおくつろぎくださいまし見もとっ てはございます が言いながら女は長日の置いてある6畳の 前と案内し たそこに座って一通りの挨拶を言葉ずくな に済ますと女将はよこの心を知りいている ように女中を連れて下に降りて行って しまっ た洋子は本当にしばらくなりとも1人に なってみたかったのだっ た軽い温かさを感ずるままに重い面の 羽織りを脱ぎ捨てての懐中物を帯の間から 取り出してみると凝りがちな肩も苦しく 感じた胸も清々しくなってかなり強い疲れ を一時に感じながら猫板の上に肘を持たせ ていまいを崩してもたれかかっ た古びを帯びた足から成を立てて白く湯気 の立つのも綺麗にかきならされた肺の中に 硬そうな桜の火が白い担の下でと明らんで いるのも成功な溶断スのはめ込まれた一軒
の壁に続いた器用な山弱どに白菊をさした 空焼きの釣り池があるのもかかに書き込め られた人口の匂いも目の積んだ杉まの天井 板もほっそりと磨きのかかった川つきの柱 も洋子にとっては重い怖い硬い選出から ようやく解放されてきた洋子にとっては 懐かしくばかり眺められ たこここそは屈強の避難所だというように 洋子はつづく辺りを見回したそして部屋の 隅にある木々を塗ったクの広蓋を引き寄せ てそれに手下や懐中物を入れ終わると開く こともなくその淵から底にかけての丸みを 持った微妙な手触りを目でくしん だ所柄と そこここからこの界隈に特有な楽器の声が 聞こえてき た天長節であるだけに今日はことさらそれ が賑やかなのかもしれ ない小貝にはポクやあまたの音が少しさえ て退してい た着飾った芸者たちが磨き上げた顔を ピリピリするようなよさにおしげもなく方 にさらしてさすがに気に足を早めながられ たとこに繰り出していくその様子が まざまざと履き物の音を聞いたばかりで 洋子の想像には描かれるのだっ たあいのりらしい人力者の私立の音も異性 よく響いてきた洋子はもう一度これは屈強 な避難所に来たものだと思ったこの界隈で はよこはまじりを返して人から見られる ことはある まい 珍しくあっさりした魚の新しい夕食を 済ますと洋子は風呂を使って重い存分髪を 洗っ た足しない船の中の炭水では洗っても洗っ てもネチネチと赤の取りきれなかったもの が触れば手が切れるほどさわさわと油が 抜けてよこは頭の中まで軽くなるように 思っ たそこに女将も食事を終えて話し相手に なりに来た 大変大そうございますこと今夜のうちにお 帰りになるでしょうかそう女将は洋子の 思っていることを先駆けに行ったさあと 洋子もはっきりしない返事をしたが小く なってきたので浴衣を着替えようとすると そこに袖畳みにしてある自分の着物に つくづく愛そが尽きてしまったこの辺の 女中に対してもそんなしっこい けばけばしい柄の着物は2度と着る気には なれなかったそうなると洋子は社にそれが たまらなくなってくるのだよこはうんざり した様子をして自分の着物から女に目を やりながら見てくださいこれをこの冬には
アメリカにいるのだとばかり決めていたの であんなものを作ってみたんですけれども 我慢にももう来ていられなくなりましたわ ごしあなたのとろに何か普段着の空いたの でもないでしょうか どうしてあなた私はこれでござすものと 女将は表記にも気軽くちゃんと立ち上がっ て自分の背丈の低さを見せたそして立った ままでしばらく考えていたが踊りで仕込み 抜いたような手つきで旗と膝の上を叩いて ようございます私1つくちさんをびっくら さしてあげますわ私の妹分に当たるのに柄 といい都市格好といい失礼ながらあ様と そっくりなのがいますからそれのを 取り寄せてみましょうあなた様は洗い髪で いらっしゃるなりいかが私がすっかり 仕立てて差し上げます わこの思いつきはよこには強い誘惑だった 洋子は1も2もなくいみたって承知し たその晩11時を過ぎた頃にまとめた荷物 を人力者4台に積みのせてクチが総角館に ついてき た洋子は女将の入れでわざと玄関には 出迎えなかった洋子はいたずらもらしく 1人笑いをしながら立膝をしてみたがそれ には自分ながら気が引けたので右足を左の 腿の上に積みのせるようにしてその足先を トビにして座ってみ たちょうどそこにかなり酔ったらしい様子 でクチが女の案内も待たずにずしずしんと いう足取りで入ってきたよこと顔を 見合わせた瞬間には部屋を間違えたと思っ たらしく少し慌てて身を引こうとしたが すぐ串まきにして黒襟をかけたその女が 洋子だったのに気がつくといつもの渋い ように顔を崩して笑いながらなんだバカ 惜しくってとほざくように言って長日の 向い座にどっかとあを描いたついてきた女 は立ったまましばらく2人を見比べていた がようよう変テコなお大りビナ様と陽気に 掛け声をして笑いこけるようにぺちゃんと そこに座り込んだ3人は声を立てて笑っ たと女将は急に真面目に帰ってクラチに 向かいこちらは今日の法制神法をと 言いかけるのをよこは素早く目で遮った女 は危い土場でとまったクラチは水眼を女に 向けながら何と知りあがりに問い返す たそう早耳を走らすとつぼと間違えられ ますとさと女将はこも投げに受け流した3 人はまた声を立てて笑っ たクチと女将との間に一別以来の噂話が しばらくの間取り交わされてから今度は クチが真面目になったそして洋子に向かっ てぶら坊にお前もう寝ろと言っ た洋子はクチと女とを並べて一目見た
ばかりで2人の間の潔白なのを見てとって いたし自分が寝て後の相談というても今度 の事件を上手にまとめようというについて の相談だということが飲み込めていたので 素直に立って座を外し た中の10畳を隔てた16畳に2人の寝床 は取ってあったが2人の会話は俺より かなりはっきり漏れてきた洋子は別に疑い をかけるというのではなかったがやはり じっと耳を傾けないではいられなかっ た何かの話のついでに医用なことが起こっ たのだろうクチは仕切りに身の回りを探っ て何かを取り出そうとしている様子だった があいつの手下に入れたかしらんという声 がしたのでよははっと思ったあれには法制 神法の切り抜きが入れてあるのだもう 飛び出していっても遅いと思って洋子は 断念していたやがて果たして2人は 切り抜きを見つけ出した様子だっ たなんだあいつも知っとったのか思わず 少し高くなったクラチの声がこう聞こえ た通りでさっき私がこのことを言いかける との方が目で止めたんですよやはりあちら でもあなたに知らせまいとしていじらしい じゃありませんかそういう女の声もした そして2人はしばらく黙ってい た洋子は寝床を出てその場に行こうかとも 思ったしかし今夜は2人に任せておく方が いいと思い返して布団を耳までかぶっ たそしてだいぶ世が吹けてからクチが寝に 来るまで心よい安眠に前後を忘れてい た 24その次の朝女将と話をしたりご服屋を 呼んだりしたので日がかなり高くなるまで 宿にいた洋子はいやいやながら霊の けばけばしい渡れを着て羽織りだけは女神 が借りてくれた妹分という人の上黒の面の 門にして旅館を出 たクチは夕べの夜更かしにも関わらずその 朝早く横浜の方に出かけた後だっ た今日も空はきよりとでも言美しい晴れ方 をしてい た洋子はわざと宿で車を頼んでもらわずに レガ通りに出てから綺麗そうな辻待ちを 雇ってそれに乗ったそして池の端の方に車 を急がせた 貞子を目の前に置いてその小さな手を撫で たり絹のような髪の毛を持てあぶこと思う と洋子の胸は我にもなくただワクワクと 咳き込んでき た眼鏡橋を渡ってから突き当たりの大時計 は見えながらなかなかそこまで車が行か ないのをもどかしく思っ た膝の上に乗せた土産のおもちゃや小さな 帽子などをやきもきしながらひねり戻し
たり膝かけの熱い地をぎゅっと握りしめ たりして流行る心を沈めようとしてみる けれどもそれをどうすることもできなかっ た車がようやく池の旗に出ると洋子は右左 と細い道筋の角で差しずしたそして岩崎の 屋敷裏にあたる小さな横丁の曲がり角で車 を乗り捨て た1ヶ月の間来ないだけなのだけどけれど もよにはそれが1年にも2年にも思われた のでその界隈が少しも変化しないで元の 通りなのがかって不思議なようだっ たじめじめした小溝にそうて根際のくれた 黒いダの立ってる小さな寺の兄弟を 突っ切って裏に回ると寺の貸地面に ぽっかり立った一戸建ての小がUBの住む ところ だ茂道に頭を切り取られた公が2本元の姿 で台所前に立っているその2本に星座を 渡して小さな地盤や丸洗いにした道着が 温かい日の光を受けてぶら下がっているの を見ると洋子はもうたまらなくなった涙が ポロポロと多いもなく流れ落ち た家の中では貞子の声がしなかった洋子は 気を落ち着けるために案内を求めずに入口 に立ったままそっとかから庭を覗いてみる と日当たりのいい縁側に貞子がたった1人 洋子にはしきを長く結んだ後姿を見せて 一心フラにせっせと少しばかりの壊れ おもちゃをいじくり回してい た何事にまれ真剣な様子を見せつけられる と脇目も降らず畑を耕す農婦踏切りに立っ て子供を背負ったまま旗をかざす房汗を人 に垂らしながら坂道に荷車を押す友稼ぎの 夫婦わけもなく涙にすまされる洋子は貞子 のそうした姿を一目見たばかりで人間力で はどうすることもできない悲しい出来事に でも出会ったようにしみじみと寂しい 心持ちになってしまっ たさあ ちゃん涙を声にしたようによは思わず呼ん だ貞子がびっくりして後ろを振り向いた時 には洋子は戸を開けて入り口を駆け上がっ て貞子のそばにすり寄ってい た父に似たのだろう痛々しいほどキシ作り な貞子はどこにどうしてしまったのか声も 姿も聞い果てた自分の母が突然そば近くに 現れたのに気を奪われた様子で富には声も 出さずに驚いてよを見守っ たさーちゃんママだよよく丈夫でしたね そしてよく1人で大人にし てもう声が続かなかっ たママちゃんそう突然大きな声で言って 貞子は立ち上がりざ台所の方にかけていっ たまあやあママちゃんが来たのよという声 がしたえと驚くらしバの声が裏庭から
聞こえたと慌てたように台所を上がって 貞子を横抱きにしたバヤがかぶっていた 手ぬいをつりから外しながら転げこむよう にして座敷に入ってき た2人は向き合って座ると両方とも涙ぐみ ながら無言で頭を下げ たちょっとさちゃんをこっちに おかししばらくしてからよは貞子をの膝 から受け取って自分の懐に抱きしめ たお嬢様私にはもう何がなんだかちっとも 分かりませんが私はただもう悔しござい ますどうしてこう早くお帰りになったんで ございますか皆様のおっしゃることを伺っ ているとあんまり合原でございますから もう私は耳を塞いでおりますあなたから 伺ったところがどうせこう年を取りますと 腑に落ちる気遣いはございませんでもまあ お体がどうかと思ってお暗示干しており ましたがご丈夫でなりよりでございました 何しろ貞子様がおかわいそう でよこに溺れきったバーヤの口からさも 悔しそうにこうした言葉がつぶやかれるの をよこは寂しい心持ちで聞かねばなら なかっ た猛したと自分では言いながら若い時に 亭主に死にわかれて立派にごけを通して 後ろ指1本刺されなかった昔かぎの しっかり者だけに親類たちの陰口や噂で 聞いた洋子の乱形には呆れ果てていながら この世でのただ1人の秘蔵物として洋子の 頭から足の先までも自分の誇りにしている バーヤの切ない心持ちはひしと洋子にも 通じるのだっ たバーヤと貞子 こんな純粋な愛情の中に取り囲まれて 落ち着いたしとやかなそして安穏な一生を 過ごすのもよくは望ましいと思わないでは なかっ たことにバーヤと貞子とを目の前に置いて 慎ましやかな過不足のない生活を眺めると よこの心は知らず知らず馴染んでいくのを 覚え たしかし同時にクラチのことをちょっとで も思うと洋子の血は一時に沸き立っ た平穏なその代わり死んだも同然な一生が なんだ純粋なその代わり冷えもせず熱しも しない愛情がなんだ生きる以上は生きてる らしく生きないでどうしよう愛する以上は 命と取りかこするくらいに愛せずにはい られ ないそうした衝動が自分でもどうすること もできない強い感情になってよこの心を 本能的に仰ぎ立てるのだっ たこの機械な2つの矛盾が洋子の心の中に は平気で両立しようとしてい
た洋子は完全の教会でその2つの矛盾を 割り合いに困難もなく使い分ける不思議な 心の広さを持ってい たある時には極端に涙もある時には極端に 残虐だったまるで2人の人が1つの肉体に 宿っているかと自分ながら疑うようなこと もあったそれが時には忌ましかった時には 誇らしくもあっ たさあちゃまようございましたねママ ちゃんが早くお帰りになっ てお立ちになってからでもお聞き分けよく ママの真字もおっしゃらなかったんです けれどもどうかするとこうぼんやり考えて でもいらっしゃるようなのがおかわいそう で一時はお体でも悪くなりはしないかと 思うほどでしたこんなでもなかなか心は 働いていらっしゃるんですからねとバヤは よの膝の上に救うように抱かれて黙った まま住んだ瞳で母の顔を下から覗くように している貞子と洋子とを見比べながら10 回目たことを言っ た洋子は自分の方を温かい桃の肌のように 産毛の生えた貞子の方にすりつけながら それを聞い たお前のその気象で分からないとお言い ならくどくど言ったところが無駄かもしれ ないから今度のことについては私何にも 話す前がうちの親類たちの言うことなんぞ はきっと気にしないで遅れよ今度の船には とんでもない1人の奥さんが乗り合わせて いてねその人がちょっとした気まぐれから あることないこと取り混ぜてこっちに行っ てよしたので断れかしと待ち構えていた人 たちの耳に入ったんだからこれから先だっ てどんなひどいこと言われるか知れたもん じゃないんだよお前も知っての通り私は 生まれ落ちるとからつむじ曲がりじゃあっ たけれどもあんなに周りから小回りさえし なければこんなになりはしなかったのだよ それは誰よりもお前が知ってて遅れだわね これからだって私は私なりに押し通すよ誰 が何と言ったって構うもんですかその つもりでお前も私を見ていておくれ広い 世の中に私がどんなじりしでかしても心 から思い合ってくれるのは本当にお前だけ だ わ今度からは私もちょいちょい来るだろう けれどもこの上ともこの子を頼みます よねえさーちゃんよくバーヤの言うことを 聞いていい子になってちょうだいよママ ちゃんはここにいる時でもいない時でも いつでももあなたを大事に大事に思ってる んだからねさもうこんな難しいお話はよし てお昼のお支度でもしましょうね今日は ママちゃんが美味しいご馳走をごえて
あげるからさーちゃんもお手伝いして ちょうだい ねそう言って洋子は気軽そうに立ち上がっ て台所の方に貞子と連れ立っ たバヤも立ち上がりはしたがその顔は妙に 冴えなかった そして台所で働きながらややともすると 内緒で花をすすってい たそこには早山できめ古郷と同棲していた 時に使った強度が未だに古びを帯びて保存 されたりしてい た貞子をそばに置いてそんなものを見るに つけ少し干渉的になった洋子の心は涙に 動こうとし たけれどもその日はなんと言っても近頃 覚えないほどしみじみとした楽しさだっ た何事にでも器用な洋子は不足がちな大所 道具をたみに利用して西洋風な料理と歌詞 と見しなほど作った貞子はすっかり喜んで しまって小さな手足をままし働かしながら はいはいと言って包丁をあっちに運んだり 皿をこっちに運んだりし た3人は楽しく昼飯のテーブルに着いた そして夕方まで水いらずにゆっくり暮らし たその夜は妹たちが学校から来るはずに なっていたので洋子はバーヤの進める晩飯 も断って夕方そのうちを出 た入り口のとろにつねとたってバヤに両肩 を支えられながら姿の消えるまで洋子を 見送った貞子の姿がいつまでもいつまでも 洋子の心から離れなかっ た夕闇に紛れたホロの中で洋子は幾度か繁 価値を目に当て た宿に着く頃には洋子の心持ちは変わって い た玄関に入ってみると女学校でなければ 計れないような安の汚くなったのがお客や 女中たちの気取った履き物の中に混じって であるのを見てもう妹たちが来て待って いるのを知った早速に出迎えに出たおに 今夜はクラチが帰ってきたらよその部屋で 寝るように用意をしておいてもらいたいと 頼んでしずしずと2階へ上がっていっ た襖を開けてみると2人の姉妹はぴったり とくっつき合って泣いてい た人の足音を姉のそれだとは十分に知り ながら愛子の方は泣き顔を見せるのが 決まりが悪い風で振り向きもせずにひしを 唸られてしまったが佐代の方は洋子の姿を 一目見るなり跳ねるように立ち上がって 激しく泣きながら洋子の懐に飛び込んでき た洋子も思わず飛び立つように佐田を迎え て長日のそばの自分の座に座ると佐田は その膝に突っ伏してすりあげすりあげ火憐 な背中に波を打たした
これほどまでに自分の帰りを待ちあびても いい喜んでもくれるのかと思うとコニの 愛着からも妹だけは少なくとも自分の凶悪 の中にあるとの満足からも洋子はこの上 なく嬉しかっ たしかし日からはか離れた向こう側に うやうやしくいまいをたして愛子が ひそひそと泣きながら貴則正しく辞儀を するのを見ると洋子はすぐ尺に触った どうして自分はこの妹に対して優しくする ことができないのだろうとは思いつつも 洋子は愛子の所作を見るといちいち気に 触らないではいられないの だよこの目は意地悪く剣を持って冷やかに 小柄で肩な愛子を激しく見据え た会いたてからつけつけ言うのもなんだ けれどもなんですねその辞儀の仕方は他人 行儀らしも打ち解けてくれたっていいじゃ ないのと言うと愛子は東したように黙った まま目をあげて洋子を見 たその目はしかし恐れても恨んでもいる らしくはなかっ た小羊のようなまつ毛の長い形のいい 大きな目が涙に美しく濡れて夕月のように ぽっかりと並んでい た悲しい目つきのようだけれども悲しいと いうのでも ないな目だ多生な目でさえあるかもしれ ないそう皮肉な秘評化らしく洋子は愛子の 目を見て不快に思っ た大多数の男はあんな目で見られるとこの 上なく私的な霊的な意別を受け取ったよう にも思うのだろうそんなことさえ素早く 考えの中に付け加え た佐代が広い帯をしてきているのに愛子が 少し古びた袴を履いているのさえ下げれ そんなことはどうでもようござんすわさあ お夕飯にしましょう ね洋子はやがて自分の概念を書き払うよう にこう言って女中を呼ん だ佐田はペットらしくすっかりはしゃぎ 切っていた2人が古藤に連れられて初めて 田島の塾に行った時の様子から田島先生が 非常に2人を可いがってくれることから 部屋のこと食事のことさすがに女の子 らしく細かいことまで自分1人の今にじて 語り続けた愛子も言葉ずくに容量を得た口 を聞い た古藤さんが時々来てくださるのと聞いて みるとサは不平らしくいいえちっともでは お手紙は来てよねえあね様2人のとろに 同じくらいずつ来ます わと子は控えめらしく微笑みながら上目 越しにさを見てさーちゃんの方に余計くる くせにと何でもないことで争ったりし
た愛子は姉に向かって塾に入れてくださる と古藤さんが私たちにもうこれ以上私のし てあげることはないと思うから用がなけれ ば来ませんその代わり用があったらいつで もそう言っておよしなさいとおっしゃった きりいらっしゃいませんのよそしてこちら でも藤さんにお願いするようなよは何にも ないんですものと言った洋子はそれを聞い て微笑みながら古藤が2人を塾に連れて 行った時の様子を想像してみ た例のようにどこの玄関版かと思われる風 をして髪を狩る時の他すらない顎髭を12 部ほども伸ばして頑丈な要望や体格に不合 なはにかんだ口付きで田島という男のよう な女学者と話をして様が見えるようだっ たしばらくそんな表面的な噂話などに時を 過ごしていたがいつまでもそうはしてい られないことを洋子は知ってい たこの年の違った2人の妹にどっちにも 単年の行くように今の自分の立場を話して 聞かせて悪い結果をその幼い心に残さない ようにしけるのはさすがに容易なことでは なかったよはさっきからりにそれを暗示て いたの だこれでも 召し上がれ食事が住んでから洋子は アメリカから持ってきたキャンディーを 2人の前に置いて自分はタバコを吸った 佐田は目を丸くして姉のすることを見合っ ていた姉様そんなもの吸っていいのと釈 なく尋ねた愛子も不思議そうな顔をしてい た えこ悪い癖がついてしまったのけれども 姉ちゃんにはあなた方の考えても見られ ないような心配なことや困ることがある ものだからついうしにこんなことも覚えて しまったの今夜はあなた方に分かるように 姉ちゃんが話してあげてみるからよく聞い てちょうだい よクチの胸に抱かれながら酔いしれたよう にその頑丈な日に焼けた男性的な顔を見 ある洋子の乙女とというよりももっと子供 らしい様子は2人の妹を前に置いて きちんといまいをたした洋子のどこにも 見出されなかっ たその姿は30前後の十分分別のある しっかりした1人の女性を思わせ た佐代もそういう時の姉に対する手心を 心得ていて洋子から離れて真面目に 座り直したこんな時うっかりその異言を 犯すようなことでもすると佐田よにでも誰 にでも洋子は少しの容赦もしなかった しかし見たところはいかにも陰金に口を 開い た私が木村さんのとにお嫁に行くように
なったのはよく知ってますねアメリカに 出かけるようになったのもそのためだった のだけれどもね元々木村さんは私のように 1度先にお嫁入りした人をもらうような方 ではなかったんだしするから本当は私どう しても心は進まなかったんですよでも約束 だからちゃんと守って行くには行ったの けれどもね向こうについてみると私の体の 具合がどうも良くなくて上陸はとてもでき なかったから仕方なしにまた同じ船で帰る ようになったの木村さんはどこまでも私を お嫁にしてくださるつもりだから私もその 気ではいるのだけれども病気では仕方が ないでしょそれに恥ずかしいことを 打ち明けるようだけれども木村さんにも私 にもあり余るようなお金がないものだから 息も帰りもその船の事務長という大切な 役目の方にお世話にならなければなら なかったの よその方がご親切にも私をここまで連れて 帰ってくださったばかりでもう一度 あなた方にも会うことができたんだから私 はその倉地という方クはお倉の倉で地は 地球の地と書くの3吉というお名前はさー ちゃんにも分かるでしょそのくちさんには 本当にお礼の申しもないくらいなんですよ あさんなんかはその方のことでおばさん なんぞから色々なことを聞かされて 姉ちゃんを疑っていやしないかと思う けれどもそれにはまたそれで面倒なわけの あることなのだから夢にも人の言うこと なんぞそのまま受け取ってもらっちゃ困り ますよさんを信じておくれねよざんすか私 はお嫁なんぞに行かないでもいいあなた方 とこうしているほど嬉しいことはないと 思いますよ木村さんの方にお金でもできて 私の病気が治りさえすれば結婚するように なるかもしれないけれどもそれはいつの ことともわからないしそれまでは私はこう したままであなた方と一緒にどこかにお家 を持って楽しく暮らしましょうねいい だろうさーちゃんもう寄宿なぞに行か なくってもようござんす よ お姉様私寄宿では夜になると本当は泣いて ばかりいたのよ姉さんはよくお休みになっ ても私は小さいから悲しかったんです ものそう佐田は白場するように言っ たさっきまではいかにも楽しそうに行って いたその可憐な同じ唇からこんな哀れな 告白を聞くとはひしをしんみりした心持ち になっ た私だってもよさーちゃんは酔いの口だけ クスクス泣いても後はよく寝ていたわ姉様 私は今までさーちゃんにも言わないでい
ましたけれどもみんなが聞こえよがしに姉 様のことをかれこれ言いますのにたまに 悪いと思ってさーちゃんとおばさんのとこ に行ったりなんぞするとそれは本当に ひどいひどいことおっしゃるのでどっちに 行っても悔しいございましたわ古藤さん だってこの頃はお手紙さえくださらないし 田島先生だけは私たち2人をかわいそがっ てくださいましたけれど も洋子の思いは胸の中で逃げ帰るようだっ たもういい堪忍してくださいよ姉ちゃんが やはり至らなかったんだからお父さんが いらっしゃればお互いにこんな嫌な目に 合わないだろうけれども こういう場合洋子は奥にも母の名は出さ なかっ た親のない私たちは片身が狭いわねまあ あなた方はそんなにないちゃだめあさん なんですねあなたから先に立って姉ちゃん が帰った以上は姉ちゃんに何でも任して 安心して勉強してくださいよそうして世間 の人を見返してお やりよは自分の心持ちを激しく言いいるの に気がついたいつの間にか自分までが 激しく興奮してい た火鉢の日はいつか灰になってよさが 細やかに3人の姉妹に背負ってい たもう少し眠気を催してきた佐は泣いた後 の渋い目を手の甲でこすりながら不思議 そうに興奮した青白い姉の顔を見合ってい た愛子はガスの日にに顔を背けながらしし と泣き始め た洋子はもうそれを止めようとはしなかっ た自分ですら声を出して泣いてみたいよう な衝動を突き返し突き返し水落ちのとろに 感じながら火鉢の中を見たまま細かく震え てい た生まれ変わらなければ回復しよのない ような自分のこか行末が絶望的にはっきり とよの心を寒く引き締めてい たそれでも3人が16畳に渡航しいて寝て だいぶ立ってから横浜から帰ってきたクチ が廊下を隔てた隣の部屋に行くのを聞き しると洋子はすぐ置きかってしばらく妹 たちの寝を伺っていたが2人がいかにも 無心に赤赤とした頬をしてよく寝入って いるのを見極めるとそっとドテを引っかけ ながら その部屋を抜け出した 25それから1日おいて次の日に古藤から 9時頃に来るがいいかと電話がかかってき た洋子は10時過ぎにしてくれと返事をさ せ た古藤に会うにはクチが横浜に行った後が いいと思ったから
だ東京に帰ってからばと磯川女子のとろへ は帰ったことだけを知らせておいたが どっちからも訪問は元ゆりのこと一言 ハンクの挨拶もなかっ たせめて来るなり慰めてくるなりなんとか しそうなものだあまりと言えば人を 踏みつけにした仕業だとは思ったけれども よとしては結くそれが面倒がなくっていい とも思ったそんな人たちにあってイく口を 聞くよりも古藤と話さえすればその口裏 から東京の人たちの心持ちも大体は分かる 積極的な自分の態度はその上で決めても 遅くはないと試案し た総角感の女将は本当に目から鼻に抜ける ように落ち度なく洋子の影身になって洋子 のために尽くしてくれ たその後ろにはクラチがいてあのいかにも 素らしく見えながら人の気もつかないよう な綿密なところにまで気を配って采配を 振っているのは分かっていた 新聞記者などがどこをどうして探り出した か初めのうちは押し強く洋子に面会を求め てきたのを女将が手際よく追い払ったので 近づきこそはしなかったが遠巻きにして 洋子の挙動に注意していることなどを女将 は眉を潜めながら話して聞かせたりし たキの恋人であったということがひどく 記者たちの興味を引いたように見え た子は新聞記者と聞くと震え上がるほど嫌 な感じを受けた小さい自分に女記者に なろうなどと人にも公害した覚えがある くせに田房などに来る人たちのことを 考えると1番卑しい種類の人間のように 思わないではいられなかっ た仙台で新聞社の社長と小さとよことの間 に起こったこととして不倫な捏造記事よは その記事のうち母に関してはどの辺までが 捏造であるか知らなかった少なくとも洋子 に関しては捏造だったが掲載されたばかり でなく母のいわゆる冤罪は堂々と新聞市場 で防がれたが自分のはとうとうそのままに なってしまったあの苦い経験などが ますます洋子の考えを固くなにした洋子が 法制神法の記事を見た時もそれほど田川 夫人が自分を迫害しようとするならこちら もどこかの新聞を手に入れて田川夫人に 知名称を与えてやろうかという道徳を米の 飯しと同様に見て生きているような田川 夫人にその点に傷を与えて顔出しができ ないようにするのは容易なことだと洋子は 思ったたみを自分1人で考えた時でもあの 記者というものを手なずけるまでに自分を 堕落させたくないばかりにその目論みを 思いとまったほどだっ たその朝もクラチとよことはおを話し相手
に朝飯を食いながら新聞に出たあの機械な 記事の話をして洋子が塔にそれをちゃんと 知っていたことなどを語り合いながら笑っ たりし た忙しいにかまけてあれはあのままにして おったが1つはあまり平級にこっちから 出しゃばると足元を見やがるであれはなん とかせんと面倒だでとくちはガラっと箸を 然に捨てながらよこから女将に目をやっ たそうですともさくだらないあなたあれで あなたのご食症にでもケチがついたら本当 にバカバカしござすわ法制進歩者になら私 ご抗議の方も2人や3人はいらっしゃる からなんなら私からそれとなくお話しして みてもようございますわ私はまたお2人 とも今まであんまり平気でいらっしゃるん でもうなんとかお話がついたのだとばかり 思ってましたのとと女将は咲かしそうな目 に真味な色を見せてこう言ったクラチは無 頓着にそうさなと言った霧だったが洋子は 2人の意見がほぼ一致したらしいのを見る といくら女が巧に立ち回ってもそれを 揉み消すことはできないと言い出したなぜ と言えばそれは田川夫人が何か洋子を深く 一種に思ってさせたことで法制神法にそれ が現れたわけはそのが田川博士の関新聞だ からだと説明したクチは田川と新聞との 関係を初めて知ったらしい様子で意外な 顔付きをし たこれはまた後ろのやつあいつはベラベラ したやで右左のはっきりしない油断のなら ぬ男だからあいつの仕事かとも思ってみた がなるほどそれにしては記事の出方が少し 早すぎる てそう言ってや立ち上がりな 次の間にえに行っ た女中が全部を片付け終わらぬうちに古藤 が来たという案内があっ た洋子はちょっと遠した集えておいた衣類 がまだできないのと気具合が良くってクチ からもしっくり似合うと褒められるので その朝も芸者のちょいちょい儀らしい黒 ジスの襟のついた連邦な棒頭の身幅の狭い 着物に黒と水色ひっの中夜帯を閉めてドテ を引っかけていたばかりでなく髪まで やはり串まきにしていたのだったええいい 構うものかどうせ花を明かさせるなら のっけから明かさせてやろうそう思って 洋子はそのままの姿で古藤を待ち構え た昔のままの姿で古藤は旅館というよりも 料理屋といった風の様子に少し花見ながら 入ってきたしして飛び離れて風の変わった 洋子を見るとなおさら勝手が違ってこれが あの洋子なのかというように驚きの色を 隠し立てもせずに顔に表しながらじっと
その姿を見 たまあギチさんしばらくお寒いのねどうぞ 火鉢に寄ってくださいましなちょっと ごめんくださいよそう言って洋子はあやか に状態だけを後ろにひって広蓋からもつの 羽織りを引き出して座ったままと寺を 着直し た生めかしい匂いがその動作につれて 細やかに部屋の中に動い た洋子は自分の服装がどう古藤に印象し てるかなど考えても見ないようだった10 年も着慣れた普段着で昨日もあったばかり の弟のように近しい人に向かうような 取りなしをし た古藤は富には口も聞けないように思い まっているらしかった 多少赤になったさがの着物を着て完よりの 羽織り紐にもきちんと履いた袴にもその人 の気質が明らかに書き記してあるようだっ たこんなで大変変なところですけれども どうか気楽になさってくださいましそれで ないとなんだか改まってしまってお話がし にくくていけません から心をきいそして藤を信頼してるをたに もそれとなく気取らせるような洋子の態度 はだんだん古藤の心を沈めていくらしかっ た古藤は自分の長所も短所も無近角でいる ようなそのくどこかに鋭い光のある目を あげてまじまじとよを見つめ た何より先にお礼ありがとうございました 妹たちを昨日2人でここに来て大変喜んで いました わ何にも視野しないただ塾に連れてって あげただけですご丈夫です か古藤はありのままをありのままに行った そんな女客的な会話を少し続けてから洋子 はむに探りしっておかなければならない ような事柄に話題を向けていっ た今度こんなひょんなことで私アメリカに 上陸もせずに帰ってくることになったん ですが本当おっしゃってくださいよ あなたは一体私をどうお思いになっ て洋子は火鉢の淵に両肘をついて両手の 指先を鼻の先に集めて組んだりほいたりし ながら古藤の顔に浮かび出る全ての意味を 読もうとした ええ本当を言い ましょうそう決心するもののようにことは 行ってから人膝乗り出し たこの12月に兵にかなければならない ものだからそれまでに研究室の仕事を 片付くものだけは片付けておこうと思った ので何もかも打ち捨てていましたから この間横浜からあなたの電話を受けるまで はあなたの帰って来られたのを知らないで
いたんです最も帰って来られるような話は どこかで聞いたようでしたがそして何か それには重大なわけがある違いないとは 思っていましたがところがあなたの電話を 切るとまもなく木村君の手紙が届いてきた んですそれは多分江島丸より1日か2日 早く大北気仙会社の船がついたはずだから それが持ってきたんでしょうここに持って きましたがそれを見て僕は驚いてしまった んです随分長い手紙だから後でご覧になる なら置いていきましょう簡単に言う とそう言ってことはその手紙の必要な要点 を心の中で頓するらし しばらく黙っていた が木村君はあなたが帰るようになったのを 非常に悲しんでいるようですそしてあなた ほど不幸な運命に持てそばれる人はない またあなたほど誤解を受ける人はない誰も あなたの複雑な性格を見極めてその底に ある尊い点を拾い上げる人がないから色々 な風にあなたは誤解されているあなたが 帰るについては日本でも手様々な風雪が 起こることだろうけれども君だけはそれを 信じてくれちゃ困るそれからあなたは今で も僕の妻だ病気に苦しめられながら世の中 の迫害を存分に受けなければならない 哀れむべき女だ他人が何と言おうとも君 だけは僕を信じてもしあなたを信ずること ができなければ僕を信じてあなたを妹だと 思ってあなたのために戦ってくれ 本当はもっと最大級の言葉が使ってあるの だけれども大体そんなことが書いてあった んですそれ でそれ でよくは目の前でこんがらがった糸が静か にほれていくのを見つめるように不思議な 興味を感じながら顔だけは打ち沈んでこう 促し たそれでですね僕はその手紙に書いてある こととあなたの電話の国慶だったという 言葉とどう結びつけてみたらいいか分から なくなってしまったん です木村の手紙を見ない前でもあなたの あの電話の口調には電話だったせいか まるで呑気な冗談口のようにしか聞こえ なかったものだから本当言うとかなり不快 を感じていたところだったのです思った 通りを言いますから怒らないで聞いて ください何を怒りましょうようこそ はっきりおっしゃってくださるわねあれは 私も後で本当に済まなかったと思いました のよ木村が思うように私は他人の誤解なん ぞそんなに気にしてはいないの小さい時 から慣れっこになってるんですものだから 皆さんが勝手な温りなどしてるのが少しは
尺に触ったけれども国憲に見えて仕方が なかったんですのよそこに持ってきて電話 であなたのお声が聞こえたもんだから 飛び立つように嬉しくって思わず知らず 軽みなことを言ってしまいましたの木村 から頼まれて私の世話を見てくださった クチという事務長の方もそれは策な親切な 人じゃありますけれども船で初めて 知り合いになった方だからお心すてなんぞ はできないでしょあなたのお声がした時に は本当に敵の中から救い出されたように 思ったんですものましかしそんなことは 弁解するにも及びませんわそれからどう なさって 古藤は霊の熱い理想の担ぎの下から深く 隠された感情が時々キラキラとひらめく ような目を少し物に大きく見開いて洋子の 顔をつれづれと見合っ た初対面の時には人波外れて遠慮がちだっ たくせに少し慣れてくると人を見通そと するように凝視するその目はいつでも洋子 に一種の不安を与えた 古藤の業師には図々しいというところは 少しもなかったまた恋にそうするらしい 様子も見えなかった少しどんと思われる ほど世持に疎く物事の本当の姿を見てとる 方法にくいながら真正直に悪意なくそれを 成し遂げようとするらしい目つきだっ たことをなぞに自分の秘密がなんで暴かれ てたまるものかと他をくりつつもその物 柔らかながらどんどん人の心の中に 入り込もうとするような目つきに合うと いつか秘密のどん底を誤ずつまれそうな気 がしてならなかっ たそうなるにしてもしかしそれまでには ことは長い間忍耐して待たなければなら ないだろうそう思ってよこは一面小気味 よくも思っ たこんな目で古藤は明らかな疑いを示し つつよを見ながら さらに語り続けたところによれば古藤は 木村の手紙を呼んでから試案に余ってその 足ですぐまだ釘だの家の留守番をしていた 洋子の尾のとろを尋ねてその考えを尋ねて みようとしたところがおは古藤の立場が どちらに道場を持っているか知れないので うっかりしたことは言われないと思ったか 何事も打ち明けずに磯川女子に訪ねて もらいたいと逃げを張ったらしい 古藤はやなくまた磯川女子を訪問した女子 とは築地のある教会道の執事の部屋であっ た女子の言うところによると10日ほど前 に田川夫人のところから船中における洋子 のフラチを詳細に知らしてよこした手紙が 来て自分としては洋子の1人旅を保護し
監督することはとても力に及ばないから船 から上陸する時も何の挨拶もせずに別れて しまった何でも噂に聞くと病気だと言って まだ船に残っているそうだが満一そのまま 帰国するようにでもなったら洋子と事務長 との関係は自分たちが想像する以上に深く なっていると断定しても差してえない せっかく依頼を受けてその攻めを果たさ なかったのは誠にすまないが自分たちの力 では手に余るのだから退助していただき たいと書いてあったで磯川女子は田川夫人 がいい加減な捏造などする人でないのを よく知っているからその手紙を重った親類 たちに示して相談した結果もし洋子がエジ 丸で帰ってきたら回復のできない罪を犯し たものとして木村に手紙をやって破を断行 させ一面には洋子に対して親類一同は絶縁 する申し合わせをしたということを聞かさ れたそうことをは語っ た僕はこんなことを聞かされて途方にくれ てしまいましたあなたはさっきからクラチ というその事務長のことを平気で口にして いるがこっちではその人が問題になって いるんです今日でも僕はあなたにお会い するのがいいのか悪いのか散々迷いました しかし約束ではあるしあなたから聞いたら もっと事柄もはっきりするかと思って 思い切って伺うことにしたんですあっちに たった1人言て磯川さんから恐ろしい手紙 を受け取らなければならない木村君を僕は 心から気の毒に思うんですもしあなたが 誤解の中にいるんなら聞かせてください僕 はこんな重大なことを一口で判断したく ありませんからと話を結んで古藤は悲しい ような表情をして洋子を見つめ た釈なことを言うもんだとよは心の中で 思ったけれども指先で遊びながら少し ふりあいだ顔はそのままに哀れむような からかうような色をかかに浮かべてえそれ はお聞きくださればどんなにでもお話はし ましょうともけれども天から私を信じて くださらないんならどれほど口をすっぱく してお話をしたって無駄 ねお話を伺ってから信じられるものなら 信じようとしているのです僕 はそれはあなた方のなさる学問ならそそれ でようござしょうよけれども人情ずくの ことはそんなものじゃありませんわ木村に 対してやしいことはいたしませんと言っ たってあなたが私を信じていてくださら なければそれまでのものですしくちさんと はお友達というだけですと誓ったところが あなたが疑っていらっしゃれば何の役にも 立ちはしませんからねそうしたもんじゃ なくっ
てそれじゃあ磯川さんの言葉だけで僕に あなたを判断しろとおっしゃるんですか そうねそれでもようございましょうよ とにかくそれは私がご相談を受ける事柄 じゃありません わそう言ってる洋子の顔は言葉に似合わず どこまでも優しく親しげだっ た古藤はさすがに寂しくこうもれてきた 言葉をどこまでも王とせずに黙ってしまっ たそして何事もあらさにしてしまう方が 本当はいいのだがなと言いたげな目つきで 格別敷いたあげようとするでもなく洋子が 鼻の先で組んだりほいたりする手先を 見入ったそうしたままでややしばらくの時 が過ぎ た11時近いこの辺りの街並は一番静か だっ た洋子はふと雨どいを伝う雨だれの音を 聞い た日本に帰ってから初めて空はしれていた のだ部屋の中は盛んな鉄瓶の湯気でそう 寒くはないけれども小貝は薄ら寒い日和り になっているらしかっ た洋子はぎこちな2人の間の沈黙を破り たいばかりにひょっとと首をもたげて腰窓 の方を見やりながらほやいつの間にか雨に なりましたのねと言ってみ た古藤はそれには答えもせずにゴブがりの 地蔵頭をうれてふぶかとため息をし た僕はあなたを信じきることができれば どれほど幸いだか知れないと思うんです 磯川さんなぞより僕はあなたと話している 方がずっと気持ちがいいんですそれは あなたが同じ年頃で大変美しいというため ばかりじゃないとその時古藤はおぼらしく 顔をわかめていた思っています磯川さん なぞは何でも物を日で見るから僕は嫌なん ですけれどもあなたはどうしてあなたは そんな気象でいながらもっと大胆に物を 打ち明けてくださらないんです僕は何と 言ってもあなたを信ずることができません こんな冷たなことを言うのを許して くださいしかしこれはあなたにも責めが あると僕は思いますよ仕方がな僕は木村君 に今日あなたとあったこのままを言って あります僕にはどう判断の仕様もありませ んものしかしお願いしますがね木村君が あなたから離れなければならないものなら 一刻でも早くそれを知るようにしてやって ください僕は木村君の心持ちを思うと 苦しくなり ますでも木村はあなたに来たお手紙による と私を信じ切ってくれているのではないん です かそうよこに言われてことはまた返す言葉
もなく黙ってしまった洋子はみるみる非常 に興奮してきたようだった抑え抑えている 洋子の気持ちが抑えきれなくなって激しく 働き出してくるとそれはいつでも即すとし て人に迫り人を足した顔色1つ変えないで 元のままに親しみを込めて相手を見やり ながら胸の奥底の心持ちを伝えてくるその 声は不思議な力を電気のように感じて震え ていた それで結構磯川のおばさんは初めから嫌だ 嫌だという私を無理に木村に沿わせようと しておきながら今になって私の口から一言 の弁解も聞かずに木村に利益を進めようと いう人なんですからそりゃ私恨みもします 腹も立てますええ私はそんなことをされて 黙って引っ込んでるような女じゃない つもりですわけれどもあなたは初手から私 に疑いお持ちになって木村にも色々ご忠告 なさった方ですもの木村にどんなことを 言っておやりになろうとも私には根から 不服はありませんことよけれどもねあなた が木村の一番大切な親友でいらっしゃると 思えばこそ私は人1倍あなたを頼りにして 今日もわざわざこんなところまでご迷惑を 願ったりしてでもおかしいものね木村は あなたも信じ私も信じ私は木村も信じあも 信じあなたは木村は信ずるけれども私を 疑ってそうま待って疑ってはいらっしゃり ませんそうですけれども信ずることができ ないでいらっしゃるんですわ ねこうなると私はくちさんにでもおすりし て相談相手になっていただく他仕様があり ませんいくら私娘の時から周りから攻め られ同士に攻められていても未だに女で1 つで2人の妹まで背負って立つことはでき ませんから ね古藤は二重に折っていたような腰を立て て少し咳き込んでそれはあなたに不合な 言葉だと僕は思いますよもしクラチという 人のためにあなたが誤解を受けているの ならそう言ってまだ言葉を切らないうちに もう当に横浜に行ったと思われていた クラチが和服のままで突然6畳の間に入っ てきたこれは洋子にも意外だったので洋子 は鋭くクラチに目くばせをしたがクチは無 頓着だったそして古藤のいるのなどは度し した暴into無人さで火鉢の向こ座に どっかとあを描い た古藤はクラチを一目見るとすぐクラチと 悟ったらしかったいつもの癖で古藤はすぐ 極度に固くなった中断された話の続きをし もしないで黙ったまま少し節目になって 控えてい たクラチは古藤から顔の見えないのをいい ことに早くことを返してしまえというよう
な顔つきを洋子にしてみせた洋子はわけは 分からないままにその注意に従おうとした で古藤の黙ってしまったのいいことにクチ と古藤とを引き合わせることもせずに自分 も黙ったまま静かに鉄瓶の湯を土にに移し て茶を2人に進めて自分も悠々と飲んだり してい た突然ことはいまいを直してもう僕は帰り ますお話は中途ですけれどもなんだか僕は 今日はこれでおいがしたくなりましたあと は必要があったら手紙を書き ますそういって洋子にだけ挨拶して座を 立った洋子は霊の者のような姿のままでを 玄関まで送り出し た失礼しましてね本当に今日はもう1度で ようございますから是非お会いになって くださいましな一生のお願いですからねと 耳打ちするように支え合いたがことは何と も答えず雨の振り出したのに傘も借りずに 出ていっ たあたったらまずいじゃありませんかなん だってあんな幕に顔を出しなさのこう なじるように行って洋子が座につくと クラチは飲み終わった茶碗を猫板の上に とんと音を立てて伏せながらあの男はお前 バカにしてかかっているが話を聞いてると 妙に粘り強いところがあるぞバカもあの ぐらいまっすぐにバカだと油断のできない ものだもう少し話を続けていてみろお前の やりくりでは間に合わなくなるから一体 なんでお前はあんな男を構える必要がある んか分からないじゃないか木村にでも未練 があれば知らない ことこう言って不敵に笑いながら 押し付けるように洋子を見 た洋子はぎくりと釘を打たれたように思っ たクラチをしっかり握るまでは木村を離し てはいけないと思っている無さ用をクラチ に偶然に言い当てられたように思ったから だしかしクチが本当に洋子を安心させる ためにははしなければならない大事なこと が少なくとも1つ残っているそれはクラチ がよこと表向き結婚のできるだけの始末を してみせることだ手っ取り早く言えばその 妻を利益することだそれまではどうしても 木村を逃してはならないそればかりでは ないもし新聞の記事などが問題になって クラチが事務長の位置を失うようなことに でもなれば少し気のくだけれども木村を 自分の鎖から解き放たずに置くのが何かに つけて便宜でも ある洋子はしかし前の理由は奥にも出さず に後の理由をたみにクラチに告げようと 思っ た今日は雨になったで出かけるのが大義だ
昼には湯豆腐でもやって寝てくれようか そう言って早くもクチが底に横になろうと するのを洋子はしいて置き換えらした H
今回もありがとうございました。ますます次回が楽しみです。金曜日、お待ちしてますね。
贅沢に1日で1〜6までシャボン朗読横丁様に浸かりました。
以前は、毎週、続きを楽しみにしていた時もございましたが、
今日は、一日中YouTube dayで楽しませて頂きました😊😊😊
葉子さん、穏やかな生活を送れるのでしょうか?
シャボン朗読横丁様、いつもいつも、大切なお時間を
有難う御座います🎉🎉🎉